じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



01月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
 青蔵鉄道(青海チベット鉄道)の車内。写真上から、硬座車(普通車)、食堂車、硬臥車(普通寝台車)。↓の記事参照。



1月5日(土)

【思ったこと】
_80105(土)[旅行]冬のチベット(2)青海チベット鉄道

 今回のツアーでは、

●北京→(空路)→蘭州→(バス)→西寧→(バス)→ゴルムド→(青海チベット鉄道)→ラサ

というルートでラサに向かった。但し、蘭州〜西寧間の陸路は、本来であれば北京→西寧の直行便を利用する予定であったところ、航空機のスケジュールの都合で直前に変更されたものであった。

 年末年始に西寧からラサに向かうツアーは、複数の旅行会社から募集されていたが、たいがいは西寧からの夜行寝台を利用するコースになっていた。その場合、西寧〜ゴルムド間は夜間となるため、外の景色を眺めることができない。私自身は、青海湖、チャカ塩湖、ツァイダム盆地を一度は見たいと思っていたこともあって、この区間をバスで移動するS社のツアーに参加した。

 青海チベット鉄道(青蔵鉄道)の客車には、硬座車(JRで言えば普通車)、軟座車(JRで言えばグリーン車)、硬臥車(JRで言えばB寝台)、軟座車(JRで言えばA寝台)の4つのタイプがあり、旅行社の当初の日程では、このうちの硬座車【写真のいちばん上】に乗ることになっていた。この座席は関口知宏さんの中国鉄道大紀行でもしばしば利用されており、一般庶民との交流を深めるには絶好の場でもあった。

 さてゴルムド〜ラサ間の15時間余りをこの硬座車で旅をすること自体には不満は無かったのだが、乗車してしばらく経ってから重要な困難に遭遇した。それは、トイレがいつも使用中、もしくは閉鎖中で、満足に利用できないという点であった。

 硬座車には、1車両に1つのトイレしか設置されていないのだが、乗車直後からチベット人の巡礼者たちなどが常にトイレの列を作っていて、長時間待たないと利用できないという状況がずっと続いた。しかも、それぞれの人たちの1回の利用時間が5分以上にも及ぶなど、異様に長い。あとで気づいたことであるが、どうやら一部の人たちは、タバコを吸うためにトイレに入っている模様であった。全車両禁煙になっているため、それに我慢できない人がこっそり吸っていたのであろう。

 その後、数時間経つと、今度は、乗務員自身の手で一部のトイレが施錠されてしまった。理由を尋ねると、タンクが満杯で使えなくなったからだという。となると、乗客たちは、施錠されていない別の車両のトイレに集中するため、ますます行列が長くなる。ちなみに、乗務員たちは各自、鍵を持っていて、特定のトイレを自分たち専用に使っていた。




 そのうちに昼食の時間となる。昼食は、写真の中段にある食堂車を利用した。ここは広々としている上に、隣の寝台車両のトイレも利用できたため、まことに快適であった。食堂車の利用者が少なかったこともあり、午前11時半からゆっくりと昼食をとり、そのあと1杯20元(約350円)のコーヒーを注文したりして14時の閉店ギリギリまでここで粘った。

 その後、硬臥車にかなりの空席があることが分かったため、追加料金でそちらに移動できないかどうか、添乗員さんを通じて交渉してもらった。結果的に、途中の「安多」という駅からラサまでの切符(108元、約1900円)を買い直すことで硬座車から硬臥車に移動することができ、残り区間は、6人用コンパートメント(3段ベッドが2つ。写真の一番下参照)を2人ずつで利用するという、まことにゆったりとした快適な旅に様変わりした。

 もっとも、硬臥車のほうは外国人と漢民族のみが乗車しており、チベット巡礼者たちとは完全に遮断されていた。トイレの問題さえ解決すれば、旅好きの人たちには硬座車のほうが遙かに旅情があってよろしいのだが、現状ではハッキリ言って硬座車はオススメできない。


 なお、私たちが乗った列車(蘭州発ラサ行き)より30分ほど前に、上海発ラサ行きの列車が遅れてゴルムド駅構内に入線していたが、そちらのほうには軟座車がついていてかなりの空席があるように見えた。日本国内からの事前予約はおそらく困難かと思われるが、その場の空席状況を見た上で臨機応変に対処できれば、昼間の利用は軟座車が最も快適であるように思われる。追加料金もゴルムド〜ラサ間でたぶん4000〜5000円の負担で済むはずだ。




 ウィキペディアの当該項目(2008年1月6日朝現在の記載)では、客車については
  1. 空気の希薄な地域を走行するため、航空機メーカーでもあるボンバルディアの技術を導入した、与圧設備を持つ25T型客車が投入されている。
  2. 寝台車(軟臥、硬臥)には酸素吸引設備が用意され、吸入チューブが無料で配布される。軟臥には個人用液晶モニターが設置されている。
  3. 紫外線カット機能を持つ窓ガラスや、避雷器も装備される。
  4. 車内のトイレは身体障害者用も設置され、排水は与圧構造と環境保護の面から、垂れ流し式ではなく、タンク貯蔵式としている。
というように紹介されている。

 このうち1.の「与圧設備」だが、高度計を持参した人の計測によれば、客室内の気圧は、車外より若干高めになっているものの、航空機に比べればかなり薄めになっている。例えば標高4800mを通過時、客室内の高度計の目盛は硬座車でも硬臥車でも4600m程度であることが確認できており、つまり、実際の標高より200mほど低い高さに居るという程度の与圧しかなされていないことが分かった。そのわりに高山病の症状が出てこないのは、酸素が多目に供給されているためではないかと思う。

 また上記4.の「タンク貯蔵式」については記載の通りであり、垂れ流し式でない点は環境保護の点から多いに評価できるが、タンクが満杯になってトイレが閉鎖されたのではたまったものではない。旅客定員の数から考えれば、硬座車一車両で4つくらいのトイレを設置するように設計しておくべきだと思う。また喫煙者のために特別の喫煙室を設け、トイレ内での違法喫煙を止めさせる必要がある。


 ということで、青蔵鉄道硬座車の問題点をいろいろと書いてみたが、車窓からは、冬のチベットの雄大な景色を満喫することができた。近々、アルバムサイトを開設する予定。

 次回に続く。