じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 下弦の月(2月29日朝撮影)。この時期の下弦の月は南の空低い位置にある(赤緯最南となるのは3月1日の17時0分)。また、最も遠い位置にある(最遠は2月28日10時)。



2月28日(木)

【思ったこと】
_80228(木)[教育]大学教育改革プログラム合同フォーラム(14)大学院教育改革支援プログラム(2)科学者実践家モデルに基づく臨床心理学教育(2)

 昨日に続いて、

 フォーラム2日目の午後には、

●分科会「大学院教育改革支援プログラム」

の感想。昨日も述べた通り、この分科会では、人社系、理工農系、医療系それぞれにおける今年度選定校から、選定取組の計画概要や実施状況等について報告があった。このうち人社系の報告は

●科学者実践家モデルに基づく臨床心理学教育

という取り組みであった。

 この事例がきわめて優れたプログラムであることには全く異論は無いのだが、この事例が人社系の模範事例、あるいは典型事例になりうるのかについては少々疑問があった。

 確かに「臨床心理学」というのは一般には人社系の学問領域に含まれているが、ここで取り組もうとしているのは「医師、看護士【師】、保健福祉士等と共同で行う発達支援、遠隔地臨床心理学的援助」などであり、実質的には医療系の人材養成モデルに準じた内容となっている。また当該大学のホームページを拝見したところ、建学の理念には

「知育・徳育・体育」の三位一体による医療人としての全人格の完成

と記されており、薬学部、歯学部、看護福祉学部、心理科学部らなる医療人養成を目的とした大学であることが分かった。くれぐれも念を押しておくが、採択された教育プログラム自体が人社系として不適合であると言っているのではない。私が言いたいのは、この種の人材養成モデルが果たして、哲学、芸術、文学、歴史学などの分野の模範事例あるいは典型事例になりうるかということであった。また、心理学においても、医療心理師、臨床心理士、精神保健福祉士、発達障害支援、高齢者福祉.....というように、特定の職種にターゲットを絞って人材を育成するということであるなら上記のようなプログラムは大いに参考になるが、大学院の課程教育をそれだけに限定してしまってよいのかという別の問題が出てくる。少数のスタッフのもとで、こちらの学会リストが研究対象にしているようなきわめて広範な心理学諸領域に関心を向けさせ、多種多様な専門家や研究者を育てるということになると、ターゲットを絞った人材養成プログラムはかえって、そういう多種多様な教育を妨げる恐れがあるように思う。




 人社系の学問には、自然科学的な実証手段になじまない領域も多い。何かを確かめるというよりも、新しい価値を創造することが中心となる分野もある。またそういう価値は、短期的にヒットする商品ではなく、何百年にもわたる長期的なスパンで評価されていくものであって、これをすべてPDCAサイクルにぶち込むこんで一律に改善をめざすということには無理があるかもしれない。

 次回に続く。