じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 水を張られたばかりの水田に周辺の建物等が逆さに映る現象を「パラレルワールド」と称して、毎年この時期に写真を掲載している(昨年は、2007年6月9日)。

 この逆さ風景がくっきりと見える条件としては
  • 水を張られた直後であること(日数がたつと、水面に藻が繁殖したりしてうまく映らない。また、田植え後は、稲の苗のために反射しにくくなる)。
  • 東の空から強い日の光が射し込んでいること。
 しかし今年の場合は、学会出張の時期に重なっていたことと、曇りがちで日の光が射し込む機会が無かったことから、昨年ほどには鮮明な現象は現れないままに田植えが終わってしまった。


6月11日(水)

【思ったこと】
_80611(水)[心理]人間・植物関係学会2008年大会(5)園芸療法とQOL

 今回より、口頭発表についての感想を述べさせていただくこととしたい。なお、このWeb日記の最近の方針として、著名人の講演の場合は実名で御紹介させていただくいっぽう、学会発表については、個人情報に配慮し、発表者のお名前は省略、もしくはイニシアル程度で引用させていただくことを原則としている。

 さて、今回の大会では、園芸療法の効果測定に関連した口頭発表がいくつかあった。このうち、長期的な効果に関しては、ICF(国先生活機能分類)、ADL尺度、QOL-D、などを用いて、園芸療法(あるいは園芸活動)の実施前と実施後のスコアの差をもって比較するという方法が用いられる。いずれも、対象者自身が答える場合のほか、支援者・介助者が評価するという場合がある。

 単に「イキイキとしてきたように見えます」、「笑顔が増えてきました」といった、実施推進者の主観的な印象を述べるだけの場合に比べて、こうした客観的な効果測定は実証的であり、第三者に効果をアピールするさいのエビデンスになるほか、更なる改善のための具体的な方策を探る力にもなり、意義のあることと言えよう。

 もっとも、このやり方で園芸療法の効果がどこまで検証できるのかは、少々疑問がある。というのは、園芸活動というのはそれぞれの人々の日常生活の中のごく一部にすぎない。生活全般の質を測るような尺度で、園芸活動だけの効果を独立的に取り出して検証することができるかどうかは心もとない。

 第二に、ひとくちに園芸療法といっても、土いじり、種まき、移植、共同作業、デジカメでの記録など、さまざまなコンポーネントから構成されており、ある条件のもとで効果が検証されたとしても、それをそっくりそのまま別のケースにあてはめて同じ効果を期待できるかどうかは定かではない。しかしだからといって、それらコンポーネントのうちの1つだけを取り出して、実験群と対照群に分けて検証しても意味があるとは言い難い。例えば、園芸用土を鉢に移すという作業は、園芸活動全体の中では1つのコンポーネントとして意味を持つのであって、その作業だけを断片的に取り出して検証しても、効果が確認できるとは限らない。いや、仮に効果が確認されたとしても、それを、一連の作業のコンポーネントに組み戻した時に、その効果が加算的に働くという保証はない。それぞれのコンポーネントが相互にどのように影響し、相互強化、時には競合、葛藤をもたらしているかもしれない点を把握する必要がある。

 第三に、何らかのスコアについて集団の平均値を比較したとしても、個人単位での有効性を保証できるとは限らないという問題がある。このことについては、今回、フロアからも同じような指摘があった。

 高齢者施設のように、日常生活空間が比較的閉じられていて、行動リパートリーの種類が限られているような環境では、園芸活動を実施するかどうかというのは大きなイベントであり、それだけ総合的な効果が検証されやすくなる可能性は期待できる。そのいっぽう、一般社会人が自宅の庭やベランダで毎日30分程度の園芸作業をするというような場合は、仮に尺度のスコアが上昇したからといって、それが園芸作業の効果であると断定することはきわめて難しい。そういうケースではむしろ、園芸関連活動が、他の日常生活諸行動とどのように連関し、前向きな生活を推進する力としてどのように働いているのかを、別の形で把握していく必要があるだろう。

 次回に続く。