じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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§§ 2008年版・岡山大学構内の紅葉(26)朽ち木その後

 2006年12月27日の楽天版に記したように、座主川沿いには、すでに生命活動を停止した老木があり、毎年いろいろなキノコを宿してきた。しかし、今年の5〜6月頃にとうとう朽ち果ててしまい、そのままひっそりと地面に埋もれようとしている。写真は、2007年11月27日と、2008年11月28日の比較。



12月09日(火)

【思ったこと】
_81209(火)[心理]日本心理学会第72回大会(61)因果帰納推論と随伴性学習(5)

 シンポジウム2番目は、嶋崎氏による

ヒトの因果推論における可能化条件の無視

という話題提供であった。こちらの教員紹介にもあるように、嶋崎氏は「因果帰納」や「随伴性学習」のご研究の第一人者であり、今回、最先端の話題を拝聴できるものと期待していたのだが、なにぶん、時間のほうが13時57分頃から14時17分頃までの20分間に限られており、その中で20枚近い盛りだくさんのスライドを使ってご説明されたこともあって、内容を消化するのはなかなか困難であった。

 嶋崎氏によれば、PCMには5つのタイプがあるという。Eventはまず、「Causality irrelevant factor」、「Effect(outcome)」、「Enabling condition」、「Cause」に分けられ、「Cause」はさらに、見せかけの原因とホンモノの原因に分かれ、全部で5タイプを構成する。今回の話題提供は、このうちの「Enabling condition」に関わるものであり、HCMにおける因果推論への影響についての予測が、連合主義モデルと、PCM(Probabilistic contrast model)などの別の立場の非連合主義モデルで逆方向になされるということに注目したものであると理解した。これを検討するために、新種の微生物を繁殖させるというようなビデオゲーム実験が行われた。結論的には、連合主義モデルでは説明できない結果があり、PCMのような非連合主義モデルの予測が適合しているということであったと思う。話題提供では、アルファベットの略称がいろいろ使われており、何の略だったか忘れてしまった部分もあり、私のような門外漢には、全体のロジックを理解するのは困難であった。





 3番目は服部氏による、

Looking for a needle in a haystack? A heuristic for discriminating probale causes.

という話題提供であった。

 話題提供ではまず、ワイングラスを落として割れるかどうかという事例と、アスベストによる肺癌発生の事例を取り上げて、「“Natural”causality」と「“Learned”causality」の違い、さらに、CorrelationとCausationは必ずしもイコールでないという導入があった。ワイングラスの事例は、「ワイングラスは落としたら割れるから、手で握っていなければならないというのは、因果推論に基づく行動であるとは必ずしも言えない」という事例であると思ったが、スライドでは、グラスを握っていて壊れたという事例(グラスは強く握れば割れるということだったか?)が1つあって、One-trial学習であると記されていた。このあたりが何を意味するのかは忘れてしまったが、とにかく、「○○という行動をすると、××が生じる」というのは、1回限りの体験で習得することがあり、必ずしも、2×2のすべての条件の生起頻度の相関係数をもとに判断しているのではないことは理解できた。次に、アスベストの事例だが、(医学的な実証研究は別として)われわれ素人が直感的にアスベストは危険だと判断するのは、アスベストに晒されて肺癌で亡くなった人(スライドでは10万人のうち58人)が、アスベストに晒されないで肺癌で亡くなった人(スライドでは10万人のうち11人)より圧倒的に多いというデータに影響されることが多い。しかし統計的には、アスベストに晒されても健康を保てた人(残りの99942人)と晒されないで健康を保てた人(残りの99981人)のほうがサンプル数が圧倒的に多く、通常の連関係数ではそれほど大きな値をとらない。つまりCorrelationとCausationは必ずしもイコールでないという意味であったと理解した。

 次に「“Natural”causality」と「“Learned”causality」の違いだが、前者はグラスが割れたという1回の事例で判断されるもので生得的なプロセスという可能性もある。いぽう後者は、二段階から構成され、その1つは今回取り上げるヒューリスティックな段階、もう1つは分析的な段階であり、これはアスベストの事例にあるように、見かけとホンモノの見極めを意味している。なおここでアスベストの事例が、見かけ上の相関という意味で使われたのか、稀に起こる現象についての別の相関分析をすれば因果関係が分かるという意味で使われたのかは、忘れてしまった。

次回に続く。