じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§ 12月13日の北西の空に沈む満月(写真上)と、南東の空からの日の出(写真下)。下の記事参照。



12月12日(金)

【ちょっと思ったこと】

右から左に動く満月

 12月12日付けの楽天版にも書いたように、今回の満月は、
  • 満月:12月13日(土)午前01時37分。
  • 月の赤緯最北:同日午前03時37分
  • 月が最近(35万6567km):同日午前07時。
というように、同じ日に満月と最北と最近が重なる、非常に珍しい満月にあたっている。これだけ月が北に偏ると、右から左に移動しているように見えてくる。

 なお、毎年12月は、冬至に近いこともあって北に偏った満月を眺めることができるが、赤緯最北となる日と満月となる日は年によっていろいろにずれる。昨年の場合は、12月24日の10時16分が満月、その前日の12月23日の23時26分が赤緯最北。また来年は、12月2日が満月、12月3日が赤緯最北、12月4日が最近。

【思ったこと】
_81212(木)[心理]日本心理学会第72回大会(64)因果帰納推論と随伴性学習(8)

 昨日の続き。

 昨日も述べたように、心理学の実験場面では確かに、被験者に対して「○○が起こりました。××はその原因だと思いますか? YES or NO」、あるいは、「××はどの程度、○○の原因になっていると思いますか?」というような質問を浴びせることはできるし、被験者も大して戸惑うことなく、それらに回答することができる。しかし、日常生活行動において、確率的な変動を伴う選択が因果推論に基づいて行われているという保証はどこにもない。また、仮に日常場面にマッチしていたとしても、もう少し別の捉え方もできるはずである。

 昨日はそのうちの1つとして、Rachlin (1992)による行動主義的な見方に言及したが、Rachlin (1992)はもともと、アリストテレスの四原因説を議論の発端に持ち出し、目的論的行動主義の新たな考え方を提唱しているのであった。目的論についてはいろいろな考え方があろうが、とにかく何事においても、物事を生み出したり変化させたりする原因というのは無限に近い要因が絡み合い、直接的、間接的に作用していると考えるのが妥当であろう。人間が考える因果帰納推論というのは、そうした複雑な現象のうちの一局面を自身のニーズにおいて切り出し、その先の予想をしたり、有利な方向に加工したり、対処したりする行動にすぎない。また、そのニーズには短期的な視点もあれば長期的な視点もある。微視的な視点もあれば巨視的な視点もある。因果の入れ子構造にも留意しなければならない。

 よく挙げられる例として「腕時計のガラス面をハンマーで叩いたら壊れた。その原因は何か?」というクイズがある。通常は、「ハンマーで叩いたこと」が「ガラスが壊れた」原因であると受け止められるが、かりにそれが、耐衝撃構造の腕時計の検査場面であったとすると、壊れた原因は、製造工程の欠陥というように違った形で処理されることになるだろう。

 我々が因果推論しているのは、無限に近い十分原因うち、当人にとって操作可能、あるいは暗黙の前提として排除できないようないくつかの必要原因をピックアップしているだけのことに過ぎないのである。ということで、この種のテーマは、現実のリスク判断や「直観」理解の誤謬などと絡めて検討を進めていく必要があると考える。




 日本心理学会第72回大会では、これまで取り上げた6つのシンポ、ワークショップ、講演などの他にもいくつかの発表を拝聴したが、すでに大会開催日から3カ月近くが経過して記憶もあやふやになっており、今回をもって、連載を終了とさせていただく。なお、以上の連載は、近日中に、こちらのサイトに1つのファイルとしてまとめる予定。