じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 朝日を浴びるイチョウ並木(5月15日05時25分頃撮影)。

 5月中旬となり、北東方向から昇ってくる太陽がイチョウ並木の北面を照らすようになった。


5月14日(木)

【思ったこと】
_80514(木)[心理]犬と飼い主は似るか?(2)「犬の種類と飼い主とのお似合い度」ステレオタイプが影響する可能性

 昨日の日記は時間の関係で書き足りないところがあったので、今回はその補足。なお、昨日このWeb日記を更新(エントリー)した後、なっなんと、中島先生ご自身からメイルと資料を送っていただいた。このような、白色矮星のようなWeb日記に反応していただき、たいへん恐縮しております。

 さて、昨日の日記の最後の部分で、
今回の実験は、とにかく、愛犬団体の集いに参加した方のお写真を基にしている点が若干気になるところである。こういう人たちは、かなり裕福であり、ファッションにも気を遣い、犬を飼い始める際にも、犬の種類についてかなり極端な好み(例えば、「トイプードルは好きだが雑種の柴犬はイヤだ」など)を持っているものと推測される。となると、犬の選び方はある種のファッションのようなものである。飼い主と犬の組み合わせを当てっこするというのは、ある意味では、飼い主とその好む服との組み合わせを当てるようなものではないか。であるとすると、そのタイプにはその時代の流行があり、当てっこする側にも共通の判断基準がうまれる。このことが正答率や、見かけの類似度を高めている可能性はないだろうか。
と記したが、これは、要するに、「犬の種類と飼い主とのお似合い度ステレオタイプ」が正答率に影響するのではないかという仮説である。

 愛犬団体の集いに参加するような人たちともなると、捨て犬を拾ってきたり、ご近所で産まれた雑種犬を飼うということはまず考えにくい。かなりのお金をかけて、血統書つきの名犬を購入することになるものと推測される。

 どういう種類の犬(トイプードル、チワワ、ブルドッグ、シェパード、土佐犬、...)を選ぶかということはもちろん購入者(飼い主)の自由である。購入者たちは、ご自身の「好み」に基づいて、「自由意志」で選んだと思っておられるだろう。

 しかし、「どういう犬を選ぶか」という好み自体、社会的文脈の中で形成され、相互に強化され、ステレオタイプ化していく可能性がある。まして犬の場合、散歩の時は一緒に歩くことになるし、愛犬団体の集いではお互いに犬を紹介して褒め合ったりするので、「犬の種類と飼い主とのお似合い度」は、その時代の流行や文化や偏見の中で、強化されたり弱化される可能性が高い。例えば、若い女性は、大型のブルドッグや土佐犬ではなくトイプードルやチワワを選ぶであろう。いっぽう、私のような中高年のおじさんがトイプードルを溺愛していたら変な目で見られるかもしれない。それがいいとか悪いとかではなくて、現実にそういうステレオタイプが存在するであろうと言っているのである。

 いっぽう、どの犬がどの飼い主かという当てっこをする側にも、トイプードルは若い女性向きであろうというような同一のステレオタイプが存在すれば、それを基準に飼い主を当てようとする。結果的に正答率はアップするのではないか、というのが私の仮説である。

 もっとも、以上述べた仮説は、犬と飼い主の類似性を比較する実験には直ちにはあてはまらない。しかし、どうだろうか。しょせんイヌはイヌ、ヒトはヒトであって、顔の類似度といっても限界がある。回答者は、「お似合いである」というステレオタイプに基づいて「類似度」を判断していたのではないだろうか。




 以上は昨日の追記である。その後、中島先生からいただいた資料によれば、やはり、モデルとなった犬には、室内犬タイプから猟犬タイプまでさまざまな種類が含まれていることが分かった。飼い主のほうも、若い女性から中年男性までさまざまなタイプが含まれていたようである。となると、「お似合い度のステレオタイプ」が影響した可能性は、いちがいには否定できないように思われる。

 あくまで思いつきであるが、例えば、チベットやモンゴルの人たちに評定者(回答者)をお願いするという追試を行えば、この疑問はある程度解決すると思われる。これらの人々であれば、現代日本社会の流行や文化の影響は排除できる。にも関わらず同じような結果が得られたとすれば、「純粋な類似性」の効果が検証できるであろう。「若い女性は小さくて可愛らしい犬がお似合い、中年の男性には大型の猟犬がお似合い」という、人類共通?のステレオタイプがあったとすれば、話は別であるが。