じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _90829(土)日本心理学会第73回大会(4)心理学における性格概念の用法(3) 渡邊芳之氏の ●心理学における性格概念の用法 という小講演についてのメモと感想の連載の最終回。 講演の後半では、もともとの性格概念には「過ぎ去った時間や状況、目に見えない状況や文脈を包含したメタファー」としての日常的用法があり、「本人と認知者を含む社会的文脈の継続的な相互作用の全体」を暗示するものであると論じられた。これは二人称的視点であるとともに、ある集団の中での一個人に対する評価にも当てはまると思われる。性格概念を「本人と認知者の関係性によって変化する」ととらえることは、社会構成主義的な見方といってもよいし、また、全く別の観点から、行動分析的に扱うことも可能であると思う。 講演の最後のところでは「性格心理学のいまとこれから」が語られた。渡邊氏は、性格心理学を以下の2つのアプローチ、つまり
今回取り上げた部分について若干の感想を述べさせていただくと、まず、行動遺伝学や進化心理学的なアプローチに関しては、学術研究としての可能性は大いに期待されると思うが、そこで導出された結論だけが一人歩きすると、日常社会での差別・偏見を助長するのではないかということが危惧される。また、行動現象を予測できるほどの成果が得られるかどうかは心もとない。なお、行動遺伝学に関しては、5年ほど前に第三世代の行動遺伝学という講演について感想を記したことがあった。 あと、こちらの論考でも引用したが、行動分析学の視点からは、 Vyse, S. (2004). Stability over time: Is behavior analysis a trait psychology? The Behavior Analyst, 27, 43-53. といった論考もあり大いに参考になると思う。 渡邊氏の講演は、性格概念についての歴史、論点、今後の展望をコンパクトに示されており、日本心理学会第73回大会で私が拝聴した講演・小講演・各種話題提供の中では、この講演が最大の収穫であったと言ってもよいかと思う。さすが、日本の心理学界きっての論客である渡邊氏の講演だけのことはあった。 次回に続く。 |