じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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京都市バス車内の路線図の一部。京都のバス停は大部分、南北と東西の通り名をつなげて表示されている。この場合、南北と東西のどちらの通り名が上に来るのかには、かなり一貫した力関係がある。例えば、四条通はたいがい「四条○○」というように先に呼ばれるが、西大路と交差した地点は「西大路四条」となる。また、堀川通りは、「堀川今出川」、「堀川丸太町」というようにたいがいは先に呼ばれるが、四条通と交差したところは「四条堀川」となる。

 千本通りは、たいがい「千本○○」というように千本が先に来るが、「五条千本」というところもある。堀川通りは「四条堀川」に対して、「堀川五条」というように逆転する。

 西大路通りは、私の知る限りではすべて「西大路○○」というように先に呼ばれているようだ。東大路も同様だが、この場合は「東山○○」というように呼ばれる。


8月29日(土)

【思ったこと】
_90829(土)日本心理学会第73回大会(4)心理学における性格概念の用法(3)

 渡邊芳之氏の

●心理学における性格概念の用法

という小講演についてのメモと感想の連載の最終回。

 講演の後半では、もともとの性格概念には「過ぎ去った時間や状況、目に見えない状況や文脈を包含したメタファー」としての日常的用法があり、「本人と認知者を含む社会的文脈の継続的な相互作用の全体」を暗示するものであると論じられた。これは二人称的視点であるとともに、ある集団の中での一個人に対する評価にも当てはまると思われる。性格概念を「本人と認知者の関係性によって変化する」ととらえることは、社会構成主義的な見方といってもよいし、また、全く別の観点から、行動分析的に扱うことも可能であると思う。




 講演の最後のところでは「性格心理学のいまとこれから」が語られた。渡邊氏は、性格心理学を以下の2つのアプローチ、つまり
  1. 客観的・科学性を重視したアプローチ
  2. 性格概念の本質によりそったアプローチ
に分けた上で展望を示しておられた。このうち1.では、行動遺伝学や進化心理学的なアプローチと、最近のMischelに代表される「文脈や状況を客観的にとらえて取り組むモデル」という2つが有望であるという。また2.は、一人称的視点や二人称的視点によるものであり、性格概念を「個人的・関係的な存在で位置づけ直す」アプローチである。2.では質的研究が重要な役割を果たす。さらに、心理学的測定技術の進歩のなかでいったん衰退した類型論を「個性記述を分類する有効な方法」として再評価し、類型化と類型の間主観化のノウハウが必要であるとも説いておられた。講演の最後は、Alport(1937、詫摩ほか訳1982)の「パーソナリティは、個人の内部で、環境への彼特有な適応を決定するような、精神物理学的体系の力動的機構である。」という適応的視点が強調された。




 今回取り上げた部分について若干の感想を述べさせていただくと、まず、行動遺伝学や進化心理学的なアプローチに関しては、学術研究としての可能性は大いに期待されると思うが、そこで導出された結論だけが一人歩きすると、日常社会での差別・偏見を助長するのではないかということが危惧される。また、行動現象を予測できるほどの成果が得られるかどうかは心もとない。なお、行動遺伝学に関しては、5年ほど前に第三世代の行動遺伝学という講演について感想を記したことがあった。

 あと、こちらの論考でも引用したが、行動分析学の視点からは、

Vyse, S. (2004). Stability over time: Is behavior analysis a trait psychology? The Behavior Analyst, 27, 43-53.

といった論考もあり大いに参考になると思う。


 渡邊氏の講演は、性格概念についての歴史、論点、今後の展望をコンパクトに示されており、日本心理学会第73回大会で私が拝聴した講演・小講演・各種話題提供の中では、この講演が最大の収穫であったと言ってもよいかと思う。さすが、日本の心理学界きっての論客である渡邊氏の講演だけのことはあった。

 次回に続く。