じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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2010年版・岡山大学構内でお花見(28)さくら道
 大学構内各所で、落花したソメイヨシノの絨毯ができている。写真は一般教育棟構内。
なお、ホンモノの「さくら道」はこちら参照。


4月13日(火)

【思ったこと】
_a0413(火)[心理]行動随伴性再考(1)「行動と直後の結果」

 新年度前期は、学部専門科目と、教養教育・主題科目で行動分析学の講義をすることになっている。いずれも教科書を使用し、基本に忠実に話を進めていく予定ではあるが、後半では私自身の独自の考えにも言及したいと思っている。

 そんななかで、私自身が、最近、再考の必要を感じているのが「先行条件(A)→行動(B)→結果(C)」という行動随伴性の基本である。この枠組みは、自分や他者の行動を変えようとする時には有効であるが、行動はそんなに断片的なものではない。ネズミのバー押しやハトのキーつつきならともかく、人間の行動は、「ハイっ、反応しました」→「ハイっ、結果です」というような離散的な反応と離散的な結果との繰り返しであるとは限らない。

 以前、このWeb日記でも別のところで引用したが、Glenn(2004)の論文:

Glenn, S. S. (2004). Indeividual behavior, culture, and social change. The Behavior Analyst, 27, 133-151.

でもちゃんと指摘されている。行動分析学の教科書ではしばしば、「行動はそれがもたらす結果の関数である」(“Behavior is a function of its consequences”)と言明されているが、
  • この言明はコンテントフリーの一般原理である。
  • 「それがもたらす(原文では「its」の部分)」という時の「それ(it)」という代名詞は、文法上は「行動(behavior)」と同義であり一体化した流れに言及しているように見えるが、じっさいは、時間的スパンの違いにより、選択プロセスとして異なった役割を果たしており、複合的な関係を形成している。
  • 個々の反応の結果により環境も変わっていく。
  • オペラント行動はこれらの関わりの中で複雑化していく。
といった点にもっと目を向ける必要があるというわけだ。

 「行動とその結果」よりもっとピッタリすると思われるのは、「外界との関わり」、「外界との一体化」、「外界との交流」、「交感」といった表現である。但し念のためお断りしておくが、私はアニミズムや宗教とは無縁の人間である。

 例えば、ピアノを弾きながら酔いしれているというような状態は、鍵盤をたたく反応と、それによって生じる音という「反応→結果」で強化されるわけではない。ピアノを弾いているという行動と、流れてくるメロディとの一体化が継続することで「自然随伴性により強化」されている状態になっているのだ。

 山登りの途中で美しい風景を眺めているのも同様であり、登るという行為と風景の変化という交流状態全体が強化になっているのである。

 「行動とその結果」という分析が応用面でかなりの成果を上げているのは、「その結果」なる部分を切り出して、操作可能にしているからに他ならない。

不定期ながら、次回に続く。