じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _b0526(木)2011年版・高齢者の心と行動(8) 喜びに低級や高級の区別は無い(1) 昨日の日記でも言及したように、スキナーの生きがいの定義「能動的に行動し、かつその行動が強化されていること」を受け入れたとしても直ちに生きがいが獲得されるわけでもなく、また幸福社会の設計プランが確立するわけではない。理想的な幸福社会を設計するためには、別の学問・哲学などを取り入れることがぜひとも必要である。行動分析学ができるのは、何かのプランが設計された時に、それがうまく機能するように、それに見合った行動随伴性を用意するということである。同じ内容の設計であっても、単なるスローガンの羅列なのか、それとも、それを実現するための行動随伴性をしっかりと用意できているのかによって、実現の可能性は大きく異なってくるであろう。また、スキナーの主張を取り入れるのであれば、そうした設計にあたっては、できるかぎり、好子出現による強化の随伴性を用意することが望ましい。 ということで元の話題に戻ることにするが、とにかく、それぞれの時代、それぞれの社会においては、その社会を維持していくために不可欠となるような行動随伴性が多種多様に用意される。それらの中には、支配者層が自らの権益を維持するために都合のよいように意図的に仕組まれたものもあるし、自然環境との相互作用や外国との関わりの中で、自然選択をへて結果的に生き残り、平衡状態を保ちながら存続している制度というものもありうる。 個人それぞれにとっては、その社会が用意した行動随伴性のレールにうまく乗れば、行動が強化されやすくなるというメリットとなっている。例えば、独裁者が支配する国家であれば、独裁者に忠誠を誓い、独裁的支配に貢献すればするほど、社会的な強化を受けやすくなる。また、特定宗教の信仰の厚い国であれば、その宗教に関連した行事に参加したり、日々、お祈りをすることが最も強化的となる。また、多種多様な価値観が混在し、社会的な行動随伴性が乏しい社会であれば、「我欲を求める」と見られる行動が強化されやすくなっていくであろう。 どのような行動が社会的に強化されやすいかということは、その社会がどれだけ安定しているのかによっても異なる。特定の制度が長期間にわたり固定的に機能している社会においては、善し悪しは別として、とにかくその制度に合致した行動をとることが最も強化されやすくなる。身分制度や世襲制が安定的に機能している社会であれば、みずからの身分をわきまえて、親を見習い、親の職業の後を継ぐことが最も強化的となる。いっぽう、社会が変動の時期に入ったり、国内の対立が激化しているような状況であれば、旗色を鮮明にしてどちらかの側につくか、もしくは、中立的・隠遁的な立場でのらりくらりと生きることが最も強化的となる。また、強固な思想信条を身につけた人の場合は、とにかく、信念を貫き、たとえ弾圧されても、信念に合致するような結果をもたらすがゆえに行動することが最も強化的ということになる。 ここで元の話題に関連させると、高齢者の場合は、あくまで社会の担い手としての役割を継続することが強化的となる場合もあるし、その一方で、年金生活などにより、社会が用意している行動随伴性と無関係・独立したライフスタイルを確立することも可能となる場合がある。但し、加齢により体力や能力が衰えてくれば、自立生活は困難となってくる。隠遁生活を理想としても、ついには社会からの手助け無しには生きて行かれないようになってしまう。 次回に続く。 |