じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 農学部農場の田んぼの水張りが始まった。昨年は6月9日だったのでほぼ同時期。まもなく田植えが始まるものと思われる。



6月8日(水)

【思ったこと】
_b0608(水)日本ダイバージョナルセラピー協会2011年度総会・講演会(4)長寿社会における高齢者文化力の活用を探る(2)

 昨日の日記の続き。

長寿社会における高齢者文化力の活用を探る

という特別講演の後半では、民俗学(フォークロア、Folkloreについての研究、英語ではFolkloristics)についての簡単な紹介があった。民俗学は伝承を基礎資料とする学問であり、大きく分けて、口頭伝承(伝説・昔話・ことわざなど)、技術伝承(職人わざ、生業)、芸能伝承(歌舞音曲)があるという。

 このうち、昔話に関する話題として、『桃太カ』や『舌切り雀』が取り上げられた。これらの昔話に共通しているのは、おじいさんやおばあさんが子どもたちとは別居しているという点である。また、「おじいさんは山に柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に...」というのは、自立した生活を営んでいることを示しているという。これらは決して姥捨てではなく、隠居慣行に何らかの意義があったためと推測される。

 講演で紹介された例によれば、ある山村では、山の上のほうに隠居の家があり、ふもとのほうには若者家族が住むという別居慣行があり、山の上に人が住むことで鹿よけの効果があるらしい。また、ヒエやアワなどは、山の上のほうの畑で作る。ふもとのほうでは虫がたくさんつくためらしい。

 このほか、山焼きの伝統と、それによって得られる収穫、半自然がもたらす生物多様性の伝承などが語られた。

 全体として高齢者が文化の伝承に大きな役割を果たしていることが理解できた。

 なお、桃太カや舌切り雀の話では、おじいさんもおばあさんも皆元気であるが、当時の平均寿命を考えると、現代の高齢者よりもはるかに若い可能性がある。念のため質問させていただいたが、おおむね、当時のおじいさん、おばあさんは50歳代ではないかというお答えをいただいた。もちろん、昔話に出てくる「高齢者」の活躍や社会的役割から学ぶことも多いが、当時は、結婚・出産年齢も遙かに若く、子ども・両親・祖父母の年齢差は15歳から20歳程度に縮まっていたのではないかと推測される。現代では、それが25歳〜35歳くらいに広がり、かつ、60歳代以上の世代が、80歳代以上の両親の介護をするということも珍しくなくなった。そのことに伴って、昔話の時代とは異なった新たな介護の仕組みが求められるようになったことも確かである。