じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 日本心理学会の大会会場にはいくつか休憩室が設置されていてコーヒーなどを無料でいただくことができたが、今回は、給湯器の操作がきわめて難解であった。写真上は図解入りの説明だが、文章では「両手で挟め」と書かれてあるのに、じっさいは2本の指で挟むような写真になっている。写真中段は黒板に書かれていた説明文であるが「押しながら引け」と言われても何をしてよいのかさっぱり分からなかった。写真下段は、第3日目に書き直されていた説明文で、いくらか分かりやすくなっていた。要するにいったんレバーを奥に押し込んでから下へ下げるとお湯がでる仕組みになっているようであったが、操作法を習得したのは最終日の第3日になってからであった。

9月19日(月)

【思ったこと】
_b0919(月)日本行動分析学会第29回年次大会(3)コンサルテーション技法と実践

 大会第二日目の昼は

【11:00〜13:00】パフォーマンスマネジメント 教科書では学べないコンサルテーション技法と実践

という自主企画ワークショップに参加した。民間中小企業における問題を行動的に解決しようという事例の紹介であった。なかなか興味深いものであったが、1つ気になったのはいずれにおいても、
  • 望ましい行動にポイントを与える。
  • 目標ポイントを達成した時には賞品がもられる。
  • 個人目標ポイントの50%を、1人でもクリアしない場合は全員賞品無し。
  • チーム目標ポイントの60%を1チームでもクリアしない場合は、全員の賞品なし。
  • 賞品はランチ招待、飲み物、社内旅行など。
というような形で好子?が設定されていたことである。しかしこの程度の賞品で社内一丸となって行動改善が達成できるとはちょっと考えにくい。各種改善行動は、おそらく、
  • 目標達成の有無(目標達成自体が大きな好子。もしくは目標未達成に終わることが嫌子)
  • ポイントは、達成の度合いを示す弁別刺激
というように機能していたのではないかと思われる。なお、目標未達成が嫌子であったとすると、ここでの随伴性は、嫌子出現阻止の随伴性ということになる。

 このほか、発表者ご自身やフロアからも指摘があったように、それぞれの事例では、ベースラインがきっちりとはとられておらず(これが良いと思われるとすぐに初めてしまうなど)、また、標的行動の選定やポイントの重み付けについても種々の曖昧さがあった。

 今回紹介された事例では、ごく一部を除いて、ほぼ100%、当初設定した目標ポイントが達成された。しかし、同じやり方で何年も持続し、それが、当該企業の営業成果などを押し上げるかどうかははなはだ疑わしいように思えた。

 むしろこの種の取り組みは、毎年、社内が比較的ゆとりのある期間にイベントとして実施し、社員全員参加の中で、改善には何が必要な行動であるのかを洗い出し、社員自らが関わることでその重要性(もしくは無関係性)に気づくきっかけづくりとして意味があるように思った。

 少々話題がずれるが、大学構内や町内で年に数回行われる一斉清掃作業なども、上記に近い効果があるように思われる。年数回程度の回数では、清掃自体はきわめて一時的な効果しかもたらさないであろうが、参加者は、清掃活動を通じて、ゴミの分別や地域の環境保全に関心を持てるようになり(=地域環境に関連する諸刺激が弁別刺激となったり、保全活動がシェイピングされたりする)、イベント期間以外にも般化されると期待できるからである。もっとも、現実には、一部の熱心な方々だけの取り組みに終わってしまい、ゴミをポイ捨てするような不心得者はそもそもそういうイベントには参加しないという問題点は残る。

次回に続く。