【思ったこと】 _c0318(日)心理学教育の目標設定の再検討(1)
他の連載のためにすっかり遅くなってしまったが、3月3日の午後、武蔵野美術大学新宿オフィスで行われた表記の研究会に参加した。(案内サイトは日本質的心理学会となっているが、主催者は日本心理学会 心理学教育研究会であり、その研究会のリンク先はこちらにある)。
まず、備忘録を兼ねて、今回の研究会の企画趣旨を転載させていただく。
心理学教育の目標設定の再検討:他専攻との対話から
企画趣旨:心理学教育において、「心理学を受講した社会人となるための教養」から「心理学を専門に学んだ社会人となるための教養と専門性」「国際的競争力のある専門家養成の第1段階」まで多様な目標設定と、その方法が議論されてきた。これらの目標設定以外の目標-方法の連関はあり得ないのだろうか?本企画では、最初に、科学技術・法学という心理学以外の専門分野における教育目標の設定、教育方法、およびそれぞれの分野が抱える問題の紹介をしてもらう。その後、それを踏まえて議論することで、心理学教育のあり方の新たな可能性について考える。
この趣旨に基づいて、お二人の話題提供があり、さらに、フロアを交えての活発なディスカッションが行われた。
- 科学技術の学部教育の目標と方法:松原克志先生(常磐大学国際学部)
- 法学の学部教育の目標と方法:石田京子先生(早稲田大学法務研究科)
研究会ではまず、企画者の荒川氏から、一般的な心理学先行のカリキュラムが、以下のように構成されていることが紹介された。(【 】内は長谷川による補足)。
- 卒業論文【多くの場合、実験または調査データに基づく分析・考察が要求される】
- 実験演習【実験法のほか、観察法、質問紙法、面接法、要因計画法などについての基礎的演習】
- 心理統計学【個人差/誤差をどう処理するか。多くの場合は、人間を「変数の束」として扱い、平均値の有意差を問題とする】
- 臨床実習
- 広義(心理学独特の対象化/分節化の仕方)
こうしたカリキュラム構成の大きなシバリとなっているのは、認定心理士の単位認定基準である。認定心理士は、それを取得したからといって何かの業務独占ができるわけではなく、また昨今、日本心理学諸学会連合認定の心理学検定が実施されるようになったり、国家資格としての心理師の創設の要望が出されているという、かなり流動的な状況にはあるが、四年制大学の心理学科、心理学部、あるいは、岡山大学文学部のように人文学科一学科制改組のあとの心理学領域における教育の質を保証する上では、重要な基準となっていることは間違いない。早い話、私のところの心理学領域で卒業論文を書いても、卒業証書には「岡山大学文学部行動科学専修コース卒業」としか記されず、心理学で卒業したのか、社会学、文化人類学、地理学などで卒業したのかは、それだけでは判別がつかない。認定心理士を取得していれば、他大学の心理学部や心理学科卒業と同等レベルで心理学を習得したことの証になるし、日本心理学会などへの入会や、心理職への就職にも有利となるはずで、「心理学が学べます」と標榜する限りにおいてはこのシバリを外して自由にカリキュラムを組むことは事実上不可能と言える。
次回に続く。
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