じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _c0529(火)認知症高齢者のQOLと実態(2) 昨日の続き。 28件の中で印象に残った報告をいくつか挙げさせていただく。まず、入居者がプランターで野菜を作り、文化祭でそれを売り、そのお金で回転寿司を食べに行ったという事例があった。中心になって動いた方は農業の経験があり、土作りや仕立て方に詳しいという。私自身もコメントさせていただいたが、園芸作業というのは、ゆったりと継続的に関われるという点で、1回限りのレクリエーションには無い長所がある。また、単に自己満足的に収穫するのではなく、施設の人たちと一緒に食べたり、バザーでの収益で外食をすることができれば、その分、行動に対する多彩な結果が随伴することになり、やりがいとなるはずである。発表者の方も「どんな薬もこの植物には叶わない」という言葉を引用されていた。園芸療法学会で発表されれば大いに評価されるのではないかと思う。 次に、精神科単科の認知症治療病棟に入院されている方が、箱デコレーション(箱に張り紙をして装飾)により、落ち着いた状態や過去の記憶の一部を取り戻したという事例があった。この方は、夕方から夜間にかけて暴言や物盗られ妄想などが強く、退院には至らない状態が続いていたが、在宅療法室(レトロな和室)などで、本人が昔やっていた張り紙装飾に取り組んでいただき、落ち着いて過ごせるようになってきたということであった。行動に適切な結果が随伴するようにいろいろと工夫されていた点がよかったと思う。 3番目は、海辺という立地を生かして、釣り(岸壁や砂浜)に参加して貰うという事例である。あくまで自分の意志で参加することを尊重し、かつ、制限枠にとらわれずにいろいろなことをやってみようする姿勢が大いに評価できた。岸壁で車いすに座ったままの釣りとなると、いろいろな危険が危惧されるが、スタッフの方々が常に気を配り、当事者の能動的な行動を支えておられた。 次回に続く。 |