じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 8月12日(日)の早朝、東南アジアで木星食が起こった。日本では少し外れて大接近となった。写真は、04時59分頃に撮影した時の様子。ちなみに、私は、この日に木星食があるということは全く知らず、14日早朝の金星食に備えて、金星の位置とカメラテストのために外に出て初めて気づいた次第である。その金星は、写真下の位置にある。

 もっとも、8月14日(火)の天気は、12日朝の時点では曇り時々雨、あるいは曇りのち雨などと予報されていてあまり良くなさそう。一斉休業期間中の休日にあたるので、日本各地の中で確実に晴れる場所が分かればそこまで出かけることもできるのだが...。

8月11日(土)

【思ったこと】
_c0811(土)TEDで学ぶ心理学(6)Sheena Iyengar: The art of choosing.選択の科学(5)自分で選んだ場合と母親に選んでもらった場合の動機づけの中味

 アイエンガー先生の

●Sheena Iyengar: The art of choosing.(2010年7月)

の連載5回目。

 昨日の日記にも述べたように、この実験は、

Iyengar, S. S., & Lepper, M.(1989).Rethinking the Value of Choice: A Cultural Perspective on Intrinsic Motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 76, 349-366.

から引用したものであり、コロンビア大学のアイエンガー先生の論文一覧から、原著論文ファイル(PDF形式)を直接入手することができる。昨日も述べたが、この実験論文では、実験者立ち会い場面での作業遂行課題のほか、休憩時間(実験者が「採点している」間の待ち時間)に子どもたちがどれだけの時間、自発的にアナグラムで遊ぶかということも報告されている【Figure.2】。グラフをざっと眺めた限りでは、休憩時間に自発的にアナグラムで遊ぶ時間は、
  • 白人系アメリカ人の子ども:「自分で選んだ条件」>「実験者に選んでもらった条件」、「母親に選んでもらった条件」
  • アジア系アメリカ人の子ども:「母親に選んでもらった条件」>「自分で選んだ条件」>「実験者に選んでもらった条件」
  • 自分で選んだ条件の比較:白人系アメリカ人の子ども>アジア系アメリカ人の子ども
というような差があるように見えた。要するに、白人系アメリカ人の子どもでは、「自分で選ぶ」機会を与えられることが「内発的動機づけ」を高める。また、それは、完成できたアナグラムの数だけでなく、自由時間での遊びにも影響した。アジア系アメリカ人の子どもでも、同様の傾向はあるが、それ以上に、母親を喜ばせたいというような動機づけが強く働くので、古典的な内発的動機づけ理論では説明できないように見えた。

 もっとも、行動分析学的にはもう少し別の解釈も可能である。但しそのためには、アナグラムパズルを解くという行動が何によって強化されていたのか(達成自体か、実験者や周囲による称賛か、...)、その行動は好子出現の随伴性で強化されていたのか、それとも「課題をやらないと怒られる」というような「阻止の随伴性」で強化されていたのかを個別に検討する必要がある。そのさいには、それぞれの子どもと母親との関係、あるいは、母親のしつけ方のタイプも調べる必要がある。

 なお、リンク先の原著論文ではさらに詳細な考察や別の実験も掲載されているが、この連載の趣旨からは大きく脱線してしまうので、別の機会にコメントさせていただくこととしたい。

次回に続く。