じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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9月3日の岡山は、昼過ぎと夕刻に真っ黒な雲に覆われ、短時間の豪雨と雷に見舞われた。こちらの記録が示すように、1日の降水量は32.0ミリとなり、草木を潤した。写真は、15時45分頃の時計台上空。皆既日食直前と同じくらいに暗くなっていた。 |
【思ったこと】 _c0903(月)日本質的心理学会・第9回大会(2)個人の準拠枠の変容をTEM・TLMGで描く(2)「記号の学としての文化心理学 昨日の日記に続いて、 ●制度的な組織の境界を超えた繋がり、活動、学習による個人の準拠枠の変容をTEM・TLMGで描く の話題。シンポでは冒頭、企画者から、「TEM」(Trajectory and Equifinality Model:複線径路等至性モデル)と、「TLMG」(Three Layers Model of Genesis: 発生の三層モデル)の概略が説明された。これは、 サトウタツヤ【編】(2009).TEMではじめる質的研究 時間とプロセスを扱う研究をめざして の189頁のあたりで論じられている「記号の学としての文化心理学」に依拠した議論であった。ちなみに、リンク先の書籍は、
もとの話題に戻るが、企画者によれば「TEM/TLMG」は、記号の学としての文化心理学としての意義を有するとのことである。それまでの比較文化心理学では、「文化という入れ物があって、その中の範囲で人間が文化の影響を受けながら発達する」という「文化の容器メタファ」が使われてきたが、このメタファは、人が文化の容器を変容させないという前提となっており、文化のその時点の違いを表層的に比較する研究となっていた。これに対して、「記号の学としての文化心理学」では、人間は開放システム(多様な文脈の影響を受けつつ、集団的文化も個人的文化も共に移ろいながら発達する)として捉えられ、文化の容器は固定されたものではなく、人によって変容させられるものとして捉えられる。具体的には、生涯発達的な観点を核とし、記号の機能化にその文化の普遍的なメカニズムを見出そうとする。そして人間は、複数の記号群から主体的に選択する「冗長な統制原理」がある(Valsiner, 2007, p.57)というように考える。【当日配付資料からの引用】。用語の違いはあるものの、こうした考え方は、行動分析学的な文化論の考えにかなり近いように思えた。但し、行動分析学では、随伴性概念が基本となる。また、リンク先の拙著で引用している、グレン(Sigrid S. Glenn) による一連の議論では、「行動とその結果」という行動随伴性の複合性を指摘した上で文化と文化的慣行を行動分析学的に定義し、「マクロ随伴性(macrocontingencies)」と「メタ随伴性(metacontingencies)」という概念が新たに提唱されている。 次回に続く。 |