じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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秋空には程遠い朝焼け。

 9月7日(金)の岡山県・岡山は相変わらず残暑が厳しく、午後8時の気温は28.9℃で、石垣島に次いで全国第二位の高さとなった【写真右下】。また、9月8日(土)の朝の最低気温は25.7℃で、8月30日以来の熱帯夜となった。

 9月8日の朝は、美しい朝焼けが出現したが、地平線近くには入道雲が湧き上がっていて、秋の空には程遠い光景であった。

9月7日(金)

【思ったこと】
_c0907(金)日本質的心理学会・第9回大会(6)個人の準拠枠の変容をTEM・TLMGで描く(6)価値変容経験と価値変容点/東洋人にも固定的価値観(第三層)があるのか?

●制度的な組織の境界を超えた繋がり、活動、学習による個人の準拠枠の変容をTEM・TLMGで描く

の話題の続き。冒頭の企画者の説明では、「TLMG」(Three Layers Model of Genesis: 発生の三層モデル)における準拠枠の変容例として、「死刑制度に賛成」という固定的価値観(第三層)が、裁判員に採用され種々の議論や冤罪事件の記事を読むことなどの価値変容経験(Value Transportation Experience、VTE)を通じて、死刑制度への態度が不定状態(第三層)となる事例(引用元の99頁)が紹介された。そのさい、VTEとVTM(価値変容点、Value Transportation Moment)の区別が重要であるように思えたが、いずれもラベル的な概念であるゆえ、どちらの概念ツールを使うほうがよいかは、研究者のニーズに応じて決めていけばよいということであった。このあたりは、最近刊行された、

TEMでわかる人生の径路 質的研究の新展開

という本で詳しく論じられているということなので、それを拝読した上で考えを述べさせていただくことにしたい。

 とにもかくにも、TEM/TLMGは、あくまで分析のツールであり、正確さよりも現場でどう役立つかが重要であるとのことであった。また、論文を書く場合、TEM/TLMGは、考える際には活用するが、論文として体裁を整える段階ではもはや、本文中から消えてしまっても良いというような発言もあった。

 では、どいう形で、現場に役立てていくのかということであるが、説明を拝聴した限りで理解できたのは、
  • 焦点化ステップ1:TEM1による個人的文化の回顧的分析。
  • 焦点化ステップ2:TEM(SD/SG)による集団的文化の回顧的分析。
  • 焦点化ステップ3:TLMGによる第三層の準拠枠変容の分析。個人文化についての前向的分析。準拠枠はどのような背景で作られたのか。変容はどのタイミングで起きたか。
  • 焦点化ステップ4:前向的・集団的文化の分析により、支援・介入のタイミングと量を検討。
といったステップであるが、これについても、上掲書を参照の上で、再度コメントさせていただきたいと思う。

 なお、上掲の「死刑制度の賛否についての固定的価値観(第三層)」の変容の事例であるが、一部の死刑制度絶対反対論者(「いかなる凶悪犯であっても死刑にしてはならない」と強硬に主張する人たち)を除けば、一般人が、そんなに強い固定的価値観を持っているようには私には思えない。死刑賛成といっても、別段、積極的に死刑制度推進を唱えているわけではない。消極的な意味で死刑制度存続を支持し、強硬な廃止論者とは考えを異にしているという程度ではないだろうか。であるからして、上掲の事例で自分が裁判員となり、自分が関与する事件で死刑判決を出さなかったからといって固定的価値観(第三層)が揺らぐことは無いのではないかと思う。この事例に限らず、個々人、特に、イスラム圏や厳格なキリスト教徒のような強固な信条に縛られることの少ない日本人では、価値観とか信念というのはかなり二面的かつ曖昧で、実際の行動を左右するほどの影響を与えていない可能性が高いのではないかと思ってみたりする。また、中国人においても、曖昧さを許容したり、自分自身についての矛盾する評価を行う傾向があると指摘されており(日本心理学会第74回大会関連特集の中の「素朴弁証法と心理学的成果」の話題参照)、おそらく西洋人的発想で組み立てられたと思われる「個人的文化と集合的文化」の考え方が、東洋人的な人生径路において、固定的価値観(第三層)なるものにどこまで重きをおけるのか、検討していく必要があるように思った。

 次回に続く。