じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



10月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
§§
 農学部・農場の田んぼで稲刈りが始まった。すでに田んぼの1/3程度が刈り取られている。

10月10日(水)

【思ったこと】
_c1010(水)日本質的心理学会・第9回大会(10)個人の準拠枠の変容をTEM・TLMGで描く(10)宗教カルト経験者の価値観の変容過程(2)事例研究とは?

 日本心理学会の大会やその他の話題を挿入したためにちょうど1ヶ月も空いてしまったが、9月10日の日記の続きとして、

●宗教カルト経験者の価値観の変容過程を描く

という話題提供について、メモと感想を記していくことにしたい。1ヶ月も空いてしまったため、もう一度復習をしておくと、 この研究では、TEM/TLMGの手法が活用されており、等至点に着目してサンプリングする方法として「歴史的構造化サンプリング、HSS」が採用され、また等至点としては、「入信」、「退会」、「退会後の社会的適応」という3点が設定された。このあと、「対話的自己による分析」としてポジションの変化が図解された。

 話題提供の冒頭では、事例研究とは何かということについて、興味深い前置きがあった。配付資料からの孫引きになるが、要約すると以下のようになる。【句読点や語句は長谷川のほうで改変】
  • 事例とは、境界のあるシステムのことである。
  • 事例は、目的を持っており、しばしば自立的である。事例の振る舞いには、パターンが見出せ、一貫性と持続性のあるのがその特徴 (Stake, 2000)。
  • 事例を研究する目的は、個別の事例を、その特殊性から理解することである。
  • 事例研究は、研究の方法論ではなく、何を研究するかという対象の選択法である。
  • 事例研究は一般化を目指すものではあるが、その前提として、事例を最大限効果的に理解する研究の設計に強調点を置く(Stake, 2000)。
  • 事例研究は、出来事や現象の文脈的な次元と時間的な次元の複雑な関係に関心を持つ。単一の研究方法だけを使って、この複雑さを見極めるようなデータを得ることは不可能 (Willing, 2001)。
 ちなみに、上掲の引用のうち、Robert E. Stakeの主要文献は、こちらに紹介されている。よく引用されるのは

The Art of Case Study Research.(1995年)

最近の本としては、

Qualitative Research: Studying How Things Work(2010年)

などがあるようだが、2000年の論文の出典は分からなかった。またWilling(2001)の文献は、おそらく、

ウィリッグ(著)上淵・大家・小松(訳)(2003).心理学のための質的研究法入門―創造的な探求に向けて. 培風館.【Willing, C. (2001) . Introducing Quantitative Research in Psychology: Adventures in Theory and Method. Buckingham: Open University Press.】

の引用ではないかと推測される。

次回に続く。