【思ったこと】 _c1122(木)脳のはたらきからみた幸せのかたち(4)Rolls (1986)の図式化と「KOKOROスケール」
昨日の続き。
講演の中で、Rolls(1986)の二次性情動の図式化(※)と、それを改訂した「KOKOROスケール」についての説明があった。
[※]Rolls, E. T. (1986). A theory of emotion,and its application to understanding the neural basis of emotion,Neural and ChemicalControl. In Y. Oomur, (Ed.), Emotions: Neural and Chemical Control. Tokyo: Japan Scientific Societies Press. pp. 325-344.
Rolls (1986)の二次性情動モデルと「KOKOROスケール」はいずれも、ドーパミンの量を縦軸、セロトニンの量を横軸とした4象限で図式化したものであるが、セロトニンやドーパミンが不足した時の情動の質が異なっていた。
Rolls(1986):セロトニンが不足すると、イライラ→怒り→激怒/ドーパミンが不足すると、不安→恐怖
- 「KOKOROスケール」:セロトニン軸がマイナス方向であると「不安な気分」、ドーパミン軸がマイナス方向であると「やる気がない」
なお、こちらの記事にもあるように、当初「KOKOROスケール」では、縦軸のマイナス方向には「イライラ度」が割り当てられていたが、講演後の質疑の時間に直接質問させていただいた限りでは、「イライラ」から「やる気がない」に改訂するというようなお話であった【←あくまで長谷川の聞き取りであり、未確認】。
Rolls (1986)の二次性情動モデルについては勉強不足でよく分からないところが多いのだが、ウィキペディアで雑学的情報を収集してみると、
- 怒り
- ツィルマンは、「危険にさらされた」という意識が怒りを喚起する万人共通の要素であると指摘しているという。「危険にさらされた」という意識には、物理的な危険だけでなく、自尊心や名誉に対する抽象的な脅威も含まれる。「不当な扱いや無礼な扱いを受けた」「侮辱された」「大切な目標達成の邪魔をされた」等々の意識が含まれる。
- こうした意識・知覚が大脳辺縁系を刺激すると、脳内で複数の経路で反応が起きる。ひとつは、カテコールアミンが放出される。カテコールアミンが放出されると、いわば「攻撃もしくは逃避の、どちらかの激しい行動が一回可能になるだけの」エネルギーが体内で一時的に急増したような状態になり[3]、身体は情動の脳の判断の指令(攻撃もしくは反対の逃避)に備えるかたちになる。
- もうひとつの経路としては、扁桃核から副腎皮質神経系を経由して起こる反応があり、これは全身的な緊張を作り出し、数時間から ときには数日も継続する。この緊張している状態では情動の脳は普段より敏感で、いわば「一触即発」の状態になっている[4]。他者から見ると、いわゆる「機嫌が悪い」という状態である。
- また、あらゆる種類のストレスは副腎皮質に働きかけて精神を緊張させ、人間を怒りっぽくするという[5]。普段はやさしい父親でも、仕事でくたくたに疲れて帰宅したときには子供が騒いだり散らかした程度でも頭に血がのぼってしまう[6]。
- 恐怖
- ジョン・ワトソンやパウル・エクマンなどの心理学者は恐怖をほかの基礎的な感情である喜び、怒りとともに、これらをすべての人間に内在する感情だと主張している。恐怖は防御的、生存的な本能的感情で、多くの生命体で発達していったと思われる。通常、恐怖は特定の刺激に対する反応である。例えば、蜘蛛を見た人はそれに対して恐怖を感じるかもしれない。恐怖はまた、安全への退避の動機を起こす役目を果たしている。
- 人間が恐怖状態に陥ると、脚などの筋肉に血液が集中され、これにより人間はより素早く行動することが可能となる。また、身体は瞬時の凝固を起こし、これはより優れる反応(例:隠れる)の有無を大脳に判断させるためである。大脳では、ホルモンが分泌され、これにより脅威に対する集中が高まり、最も正確な反応を分析する。
- 恐怖は内在する脳内反応であるが、恐怖の対象を覚えさせることは可能とされている。これは心理学において恐怖条件付け (en:fear conditioning) として研究されている。
というように説明されていて、いずれも、セロトニンやドーパミンの量だけでシンプルに説明できる情動ではないように思えた。このほか「イライラ」というのもよく考えてみれば奇怪な気分であり、ネット辞書を検索してみると、
- 思いどおりにならなかったり不快なことがあったりして、神経が高ぶるさま。いらだたしいさま。
- 自分の思うとおりに進まないために、焦って神経が高ぶっているさま。
- ほとんどの場合、人がいらいらしたり、怒りっぽくなったりするのは、何らかのストレスを抱えていて、しかもストレスがなかなか解消しなかったり、自分がそのようなストレスを抱えなければならない理由について納得できなかったりすることが原因です。
といった説明がなされているが、イマイチはっきりしない。
いずれにせよ、脳科学による説明がどうあれ、自分の気分を主観的に評定するということになると、直交軸にあるような気分表現語を探し出してこなければならない。これは脳科学というより心理学の問題と言ってよいだろう。
行動分析学的な見方をすれば、「ワクワク」と「やる気が無い」の軸を規定するのは、正の強化(好子の質、強化スケジュールなど)であると言って良い。恐怖や怒りは嫌子出現とも関連しているが、必ずしも一対一に対応しているわけではない。例えば、断崖絶壁のある山道を通る時、崖に落ちないように正確にハンドルを切るという行動は「嫌子出現阻止の随伴性」によって強化されているであろうが、すべてのドライバーが、崖に恐怖を感じているわけではない。形式上は「嫌子出現阻止」であっても、実際には、赤信号や交通標識と同じような弁別刺激として「崖」に対処しているだけかもしれない。これに限らず、情動的な反応は、大部分、レスポンデント行動の範疇におさまると言ってよいだろう。
次回に続く。
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