じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


ジャンケンの由来と数学的背景について考える

1998年11月22日〜1998年12月6日
【思ったこと】
981122(日)[数学]ジャンケンの効率化について考える
 11/22夜の「アメリカ横断ウルトラクイズ」の中で「2人でじゃんけんをした時と3人でじゃんけんをした時のアイコになる確率は等しい。○か×か?」という問題が出された。
 私は人数が多いほど「グー、チョキ、パー」3種類が出される場合が増えるので×では無いかと思ったが、正解は○。じっさいに場合を数えてみると、いずれも1/3の確率でアイコになることが分かった。

 そこでふと考えたのだが、アイコが同じ確率であるとするならば、たとえばジャンケンで100人の中から1人を選ぶという勝ち抜き戦を行う場合、2人ずつで組を作るよりも、常に3人ずつ組を作って勝者を絞っていくほうが試合の合計回数は少なくて済むのではないか?
 場合を尽くすのは面倒なので、仮に6人が1回戦をする場合を考えてみると、2人組の場合は、じゃんけん1回につき2/3人が敗退すると期待されるので、6人では3試合分で2人が敗退するものと期待される。3人組の場合は、1/3の確率で2人敗退、1/3の確率で1人敗退となるので、1試合で1人分、6人では2試合分で2人が敗退されるものと期待される。現実には勝ち残った人数に端数が出てしまうので微調整が必要になってくるけれど、この計算に間違いがなければ、じゃんけんの勝ち抜き戦は3人組で行った方が試合数が少なくて済むということになりそうだ。うむ、どこか計算違いをしているのだろうか。

 このジャンケンというゲーム。なかなか良く出来ているように思う。プレイヤーはグー、チョキ、パーを好きなように選べる。きわめて公平であり、談合もできない。これって、世界中で共通して行われているゲームなのだろうか。和英辞典で「ジャンケン」を引いてみると「a finger-flashing game of paper-scisors-stone」などという訳が出てきたが、これでは説明文みたいなものだ。これはこんな長い呼称を使うはずがないと思うのだが、実際、ジャンケンに似たような3すくみゲームを抽選の代わりに使うというのはどの程度行われているのだろう? 海外在住の方々、情報をお寄せいただければ幸いです。

 さて、ジャンケンというのは良くできたゲームだとは思うのだが、アイコが多いのがちょっと欠点だ。そこで、ジャンケンの特長である簡便性(指だけで遊べる)と公平性を保ちつつ、アイコが無いような、もしくなもっと少なくなるような別のゲームは無いものか考えてみた。2人用と3人用に、とりあえず思いついたのがこちら。もっとよいアイデアをお持ちの方、あるいはこの種のゲームの数学的な背景について参考文献(サイト)をご存じの方は、掲示板やフォームにてお知らせいただければ幸いです。

 なお、いずれの場合も、お寄せいただいた情報は、事前のご承諾をいただくこと無しに明日以降の日記にて公開させていただきますので、ご了承ください。
【思ったこと】
981124(火)[数学]ジャンケンの由来と数学的背景についてさらに考える(1)
 アメリカ横断ウルトラクイズの問題をきっかけに、ジャンケンのことをいろいろ考えている。11/22の日記の後半では、「グー」と「パー」だけでジャンケンをしたほうがアイコが少なくて効率的に勝者を決められるのではないかという話をした。

 これを含めて私がジャンケンに関して興味を持っている点は次のとおり。
  1. 最強のジャンケン・プログラムを作るには、相手の出す手についてどのような予測方略を用いたらよいか。
  2. ジャンケンのルーツは? ジャンケンが普及していない国では、代わりにどうやってくじ引きをするのか?
  3. 選択肢(手)が2つだけのジャンケンを可能にするためにはどのようなルールが必要か。
  4. 同じく、選択肢(手)が4つ以上のジャンケンを可能にするためにはどのようなルールが必要か。
  5. ジャンケンの数学的な背景はどうなっているのか。
 このうち、1.については、「オペラント条件づけによる可変的な選択行動の形成」などというテーマで少し前にいろんな実験をしたことがあるが、私がやったのは、直前2つの反応パターンからの推移頻度を算出して予測するというものだった。確か、「何たらマルコフモデル」とかでもっと精密な予測ができると思ったが、操作可能なシンプルな随伴性になりうるかどうかは不明。

 2.については掲示板書き込みやEメイルによりいくつかの貴重な情報が寄せられた。gooで検索したところでは、英語なぜなぜ110番【英語諸問題研究会(代表:大分工業高等専門学校・穴井孝義先生)の問答集をは岐阜高専の亀山先生が許可をいただいた上でネット上に転載しておられるもの】というサイトの中のジャンケンする時は英語でどういうのか?という記事に、ジャンケンの起源は中国であるとの記述があり、さらに英語圏ではコイン投げや「Counting-out Rhyme」という「ずいずいずっころばし、ごまみそずい……」風のゲームがあるとの説明があった。なお長谷川あてに寄せられた情報にはインド起源説もあり。また朝鮮半島では、ジャンケンそっくりの3すくみゲームがあるとの情報をいただいている。日本では大人でもジャンケンをするが、英語圏の人たちはその代わりに輪になって「ずいずいずっころばし」をするのだろうか。ジャンケンに代わる抽選法についてもう少し情報をいただけたらと思う。

 ひとつ面白いと思ったのは、離散数学と娯楽の数学というサイトに紹介されていたフランス式?ジャンケンというもの。これは、石、壺、鋏、紙の4択となっており、石>鋏、鋏>紙、紙>石、紙>壺、壺>石、および壺>鋏という強弱関係(不等号の左が強い)が決められているという。元サイトではあくまで「噂ではフランスには...」と断っており、実際にフランスでどの程度遊ばれているのかは、不明である。また、このサイトで指摘されているように、フランス式?ジャンケンでは石を出すなら壺を出したほうがゼッタイ有利であり、石という手は無意味であることが分かる。

 3.については11/22の日記で私なりの考えを述べた。このうち「sameかdifferentか」で勝ち負けを決めるゲームは、数学的にはコイン投げと同じ意味になるのだろう。但し、それはあくまで数学上の話。コイン投げでの場合、インチキさえしなければ、投げる人は純粋なランダム生成機となる一方、じぶんで手を考える必要は全くない。これに対して、「sameかdifferentか」ゲームは、相手のクセを読みとれば勝率を50%から上に上げることができる。そういう意味では心理学的には、「sameかdifferentか」ゲームはコイン投げとは本質的に異なるゲームであると言うことができるだろう。

 同じく、3人以上で行う時の「少ないほーうが、かーち」ゲームは、なかなか名案であろうと思うが、なぜこれまで行われてこなかったのだろう。嘉田 勝のリビングルームの中の気まぐれ数学談話室では「多いもの勝ちじゃんけん」というのが紹介されていたが、優勝者1人を決めるのであれば「少ないもの勝ち」のほうが早く決着がつくであろう。だいいち、「多いもの勝ち」では、いったん「これが多い」という手が知れ渡ってしまうと、参加者はいつも同じ手を出すようになるのでアイコばかりで永久に決着がつかなくなると予想される。またわざわざ3通りの選択肢を用意しなくても「ぐー」と「パー」だけで十分であるように思う。

 2.および、4.と5.についてはgooで関連サイトを検索してみたのだが、それぞれの検索語について非常に多くのサイトがマッチしたため、すべてのチェックは困難であった。以下に11/24夜の時点での各検索語とマッチした数を示す。
  • 「じゃんけん」:4444。
  • 「じゃんけん」AND「数学」:168。
  • 「じゃんけん」AND「外国」:228。
  • 「ジャンケン」:4164。
  • 「ジャンケン」AND「数学」:135。
  • 「ジャンケン」AND「外国」:219。


 いくつかアクセスした中では、上にもご紹介した2サイト:
離散数学と娯楽の数学(豊橋技術科学大学 情報工学系・伊藤大雄さん)および、「嘉田 勝のリビングルーム」の中の気まぐれ数学談話室が、懇切丁寧な解説をしてくださっていた。
 まだ十分には拝見できていないが、要するに、それぞれの手の間の強弱関係を方向の定まった線で結ぶという「有向グラフ」理論の応用として考えておられるようだ。
 伊藤さんの頁の終わりのほうに紹介されていた“手の数5の面白さ最大の(しかも唯一の)ジャンケン”というのは、私が子供の頃遊んだ「軍人将棋(「ミサイル行軍」とも呼ばれていた)」というゲームを思い出させる。あのゲームは、元帥、大将、ミサイル、工兵、砲兵、スパイ...などの間に強弱関係が定められていて、たとえば大将はたいがいの駒には勝てるがスパイだけには負けるというルールになっていた。駒の中には「原爆」とか「地雷」というのもあって、何となく戦争賛美の雰囲気があるのはあまり好きではなかったが、純粋なゲームとしてはなかなか面白いルールであったと思う。もっとも、こうやって考えていくと、いまふうのRPGにおける武器や防具の強弱関係なんかも、質的な強弱関係を数量的なものに置き換えただけであるような気がしてくる。

 なお4.および5.については、素人ながら、私も独自に考えたことがある。上記の2サイトとはちょっと違うモデルであったので、次回以降に披露させていただくことにしたい。
【思ったこと】
981125(水)[数学]ジャンケンの由来と数学的背景についてさらに考える(2)
「少ないほーうが、かーち」ゲームは、なかなか名案であろうと思うが、なぜこれまで行われてこなかったのだろう。 と書いたところ、Takeda Kazunoriさんから、
じゃんけんにつきまして、多人数でのグーとパーによる選別は、愛媛県八幡浜市ではかなりメジャーな方法でした。かけ声は「多いもの(少ないもの)勝ちな。グーとパーでホイ」というように、多いほう残りか少ないほう残りかを事前に約束しておくものでした。人数が多くて早く決めたいときは少ない方残りが選択されることが多かったようです。
という情報をいただいた。そうか、やはりあったんですな。しかしこれは愛媛県の一部だけで定着しているものなのだろうか。さらに各所からの情報をお願いしたいと思う。

 ところで3人以上が「グーとパーだけのジャンケン」で勝ち負けを決める方法だが、原理的に考えて、「多いか少ないか」以外に判定基準を作ることはできないように思う。「グーかパーか」というカテゴリカルな情報だけを利用する場合(いわゆる「名義尺度」)、頻度以外には簡便な統計指標値が見あたらないからである。
 もし、3人以上が輪になって座っているならば、別の情報も取り込むことができる。「たとえば隣りの人と同じ手を出したら負け」というルールだ。これは二項系列から連(run)を排除する方法を利用したもの。もちろん全員が同じ手を出した時はアイコ。最後に2人が残った時は、「sameかdifferentか」ゲームに移行すればよい。
[図]  次に、選択肢(手)が4つ以上の場合について私のアイデアを披露させていただく。私はまず、「強い、弱い」という関係は、直線上にプロットされた点の位置関係によって定められるものと考えた。但し、一直線上の順序関係だけでは「3すくみ」は生じない。そこで直線の端と端をつなげて時計の目盛りのようなものを作る。たとえばジャンケンの序列関係を示したのが左上の図だ。
 本来、順序関係というのは点の間の距離は問題にしないのだが、ここでは偶数の手数(たとえば4個の手)の強弱関係への拡張のため、時計のように円環に等間隔(等角度)の目盛りを付し、より多様な強弱関係を考えることにした。
 左上のジャンケンの図における強弱関係は、視覚的には次のようにとらえられる。すなわち、石、紙、鋏、いずれかの位置から円の中心方向を眺めた時、中心より左側に見える手は自分より強い手、右側に見える手は自分より弱い手だ。これによって、とりあえず「有向グラフ」を用いなくてこ強弱関係を記述することができる。
 次に、これを4つの選択肢(手)に拡張してみる。ここでは、昨日ちょっと紹介したフランス式?にならって、石、紙、鋏に「壺」という手を加えてみる。 [図] [図]  まず、4つの手を90度ずつずらして配置すると、どの位置から見ても中心の真後ろに、強弱関係不明の点が現れることになる(左中図)。そこで、右中図のように、位置をずらす。これでとりあえず、4すくみの関係ができあがった。たとえば「壺」の位置から中心方向を眺めると、鋏と石が中心の左側に見えるので自分より強い手、紙は右側に見えるから自分より弱い手ということになる。
 さて、この右中図は完璧な「4すくみ」と言えるだろうか。これを「有向グラフ」で表すと、
[図] 左側のいちばん下の図のようになる。じつは、昨日の日記でご紹介させていただいた離散数学と娯楽の数学というサイトで論じられているのと同様、ここでも「無意味な手」(別の手を出した方がゼッタイ得であるという手。どれだか分かりますか?)が出現してしまう(もとのフランス式?の強弱関係はこちら)。ま、数学的に証明されているのだから当然といえば当然なんだが。やはり、私のような素人が考えることには限界があったようだ....。時間が無くなったので、もう1回だけ続く。
【思ったこと】
981126(木)[数学]ジャンケンの由来と数学的背景についてさらに考える(3)
 まずこれまでの経過報告から。「少ないほーうが、かーち」ゲームが行われている事例として、昨日の日記で愛媛県のことを紹介させていただいたが、その後学生に聞いてみたところ、愛媛県以外でも各地で似たような遊び(もしくは、くじ引きとしての手段)のあることが分かった。また留学生によれば、台湾でも、手の平と手の甲という二種類の選択肢(手)を用いて同種のゲームがあるそうだ。意外に広く行われていることが分かった。

<11/27追記>掲示板にて、うえだたみおさんから、大阪で「おいもんがっちでいんじゃんほい」という遊びがあったことのご紹介とともに、「五行説における相生・相克(相剋)についてのご紹介をいただきました。どうもありがとうございました。五行説については、次回以降にとりあげさせていただきます。
<11/27追記2> さらに松井孝雄さんからも次のような情報をいただいた。ありがとうございます。
ところで、グーとパーだけのジャンケンは私の子どものころにもよく使われていました(ただし、どっちかというとグループ分けのために使われることが多かったような気がしますが)。場所は千葉県 市川市国府台です。ドーミーレーという旋律で「グーパージャン」と声をかけてやってました。ひきわけになったとき(グループわけの場合、ひきわけにならなかったとき)はそれに続いてドレミミレーという旋律で「チョキナシジャン」とやります。
 それから、ジャンケンが欧米であまり行われていない理由について、もしかしたら、これには何らかの文化的な背景があるのかもしれないと思った。日本のようなムラ社会では、トコトン話し合って最終候補を決めるやり方ではしこりを残す場合がある。特に2人の候補が激しく争った場合などそうであろう。そこで、最終決着をジャンケンという偶然性に委ねる。あまり争いが激しくなる前にジャンケンでものごとを決めていけば、お互いの顔がたつというものだ。

[図]  次にきのうの日記の続き。昨日示した図では円環上の目盛りに合わせて数値が付してあった。順序だけではなくて数値を与えたのには2つの目的があった。
 ひとつは、これによって、強弱関係が簡単な数式で判定できること。たとえば左側の図にある普通のジャンケンの場合であれば、Aさんの手をx、Bさんの手をyとしたとき、
f(x,y)=((x+12-y) mod 12)-((y+12-x) mod 12)
ただし「t mod 12」は、整数tを12で割った時の余りを表す
を算出し、この値がプラスならばyのほうが強、マイナスならばxのほうが強というように自動的に判定される。一例をあげれば、Aさんが紙、Bさんが鋏を出したときは、x=4、y=8だから、((4+12-8) mod 12)=8、-((8+12-4) mod 12)=4となって、f(4,8)=8-4=4、この値はプラスだからBさんのほうが勝ちと判定されるわけだ。単なるジャンケンの勝敗判定にこんな式は不要と思われるかもしれないが、右下の図のように選択肢(手)が4とおりになっても、判定の複雑さが変わらないところが、強弱関係を円環上の数値として表すことのメリットと言える。
[図]  数値を与えたもう1つの理由は、昨日も述べたように、順列以上の情報を与えつつ、有向グラフよりも直感的に強弱関係を把握するためであった。右側の4択ジャンケンは左下の有向グラフと同じ強弱関係を表すが(昨日アップの図は矢印の向きが全部逆になっていたので図を差し替えました。失礼)、有向グラフでは関係を一目で理解することは難しいしとうて覚えきれない。円環上に表すならば、4個の数値を覚えるだけでよいし、上にも述べたように簡単な計算で強弱の判定ができる。但し、すべての有向グラフの関係が円環上で表せるとは限らないだろう。たとえば伊藤さんの頁の終わりのほうに紹介されていた“手の数5の面白さ最大の(しかも唯一の)ジャンケン”は円環上に数値で表せるだろうか(私はまだ考えてない)。
<11/27昼追記>たぶんこんな形で表すことになるのかと思います。紙から石への矢印はワープ回路です。がははh。
[図]  それから、昨日の日記で述べた「無意味な手」だが、ここの図に示した4択ジャンケン(フランス式?とは強弱関係が異なっているのでご留意願いたい)の場合には、「壺」が無意味な手になっている。「壺」は「石」には負けて「紙」には勝てるが、これは「鋏」を出しても同じ。ならば「壺」より強い「鋏」を出しておいたほうがゼッタイお得という訳だ。この「無意味な手」は円環上では、
壺と鋏は、他の2点(石と紙)いずれから見ても、中心方向から左右いずれか一方の側に揃って位置している
という関係にあることが分かる。つまり、石から見ても紙から見ても手をつないでくっついたように見えており、この場合、左側の手は無意味な手ということになる。
円周上に、対角線が中心を通らないように(かつ重ならないように)4点を配置した場合、そのうちの2点を一辺とし、他の2点のうちのそれぞれを頂点として作られる2組の三角形の中には、必ず中心を三角形内に取り込まない組が存在する
なんていう定理もできるが、これは当たり前といえば当たり前で、竜頭蛇尾の結論みたいになってしまった。
【新しく知ったこと】
<1998年11月30日追記>じゃんけんに関して、掲示板にて赤尾さんから貴重な情報をいただいたのでご紹介させていただく。
民族遊戯大事典』(大修館書店)の「じゃんけん」の項(寒川恒夫)によると,「すくみ原理」に基づくじゃんけん遊びは,東アジア固有のものだそうです。
「四すくみ」はありませんが,中国広東省やマレーシアでは「五すくみ」じゃんけんがあるそうです。 広東省では,親指=神,人差し指=鶏,中指=鉄砲,薬指=キツネ,小指=シロアリ。すくみ関係は,神>鶏,神<鉄砲,シロアリ<神,鉄砲<鶏,キツネ<鶏,鶏<シロアリ,鉄砲<キツネ。神=キツネ,鉄砲=シロアリ,キツネ=シロアリは引き分けだそうです。
マレーシアのは,鳥,石,鉄砲,板,水で,すくみ関係は複雑ですが,結局は「三すくみ」に還元されることも多いようです。
文献史料で確認できる最も古いじゃんけんは後漢時代の将軍たちの「五雑俎」で,その名の通り「五すくみ」だったようです。
だとすると,陰陽五行論にじゃんけんの起源があるのは本当のことかも。
【1998年12月6日:ちょっと思ったこと】
  • アメリカ横断ウルトラクイズの問題をきっかけに11月下旬からジャンケンに関する話題をとりあげてきたが、このうち11月24日付けの日記でリンクさせていただいた気まぐれ数学談話室の嘉田勝さんが、このたび、第五話を完成され、じゃんけんの一般化について、さらなる考察を行っておられるので紹介させていただく(urlは12/6に変更されているので前月のリンク先とは異なる)。

     まだ十分に拝見できていないが、前置きの部分で手の種類の多いジャンケンについて
    じゃんけんの各々の手は、平等な「強さ」を持つ
    という「公平性」を保つかどうかについて考察されているところがたいへん興味深い。「公平性」が保たれるという条件のもとで選択肢(手の種類の数)が増えた場合の選択行動は、いわゆる乱数生成行動とか「可変的な選択行動の形成」問題とも関わってくるように思った。要するに、ステレオタイプな手の出し方が起こりやすくなるという話。
     後半の9-じゃんけんの中の「同型でない9-じゃんけんが、少なくとも2通り存在する」実例も大変わかりやすかった。9-じゃんけんというのはずいぶん複雑に見えるけれど、解説にあるように両手を使えば9通りの手が表現できるので意外とゲームとして成立するかもしれないと思った。

     なお、ひとつだけお断りしておくが、11月24日の日記で
    嘉田 勝のリビングルームの中の「気まぐれ数学談話室」では「多いもの勝ちじゃんけん」というのが紹介されていたが、優勝者1人を決めるのであれば「少ないもの勝ち」のほうが早く決着がつくであろう。
    と書いたが、あれは嘉田さんご提案の「generalizedじゃんけん」の紹介に先立って、あまりエレガントでないルールの一例として紹介されたものであって、嘉田さんが推奨されていた訳では決してなかった。その部分だけをコンテクストと無関係に単独でとりあげてしまったのは少々軽率であったのでお詫びさせていただく。