じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡大一般教育棟A棟前の環境整備工事がほぼ完了。写真は、東西通り北側から眺めたところ。これまであった柵や自転車置き場が撤去され、広々とした快適空間が出現した。なお、パノラマモード撮影のため、道路が歪んで写っている。(8月3日早朝5時半頃に撮影)。


2013年08月2日(金)

【思ったこと】
130802(金)日本行動分析学会第31回大会(7)行動分析学による認知症リハビリテーションの発展」(1)

 今回は、7月27日(土)午後に行われた、

自主企画シンポジウムI:行動分析学による認知症リハビリテーションの発展」

についてメモと感想を述べさせていただく。

 このシンポでは、3件の話題提供と2件の指定討論があった。

話題提供の中で特に参考になった点を列挙させていただくと、
  • DBDS(Dementia Behavior Disturbance Scale, 日本語版は、溝口, 1999)の総得点とFIM(Functional Independence Measure、日常生活自立度)の関連。これら総得点には一定の負の相関が見られるが、一部、FIMとDBDSのいずれも高い(比較的自立度が高いのに、問題行動が高頻度で起こる)というタイプも見られる。
  • 認知症重症度(Mini-mental State Examination《MMSE》など)や日常生活動作(FIMなど)従来の認知症評価にくわえてDBDSを投入。これにより、認知症の中核症状(記憶障害、見当識障害、理解・判断力障害、実行力障害など)ばかりでなく、行動・心理症状(不安・焦燥、うつ状態、幻覚・妄想、徘徊、興奮・暴力、不潔行為など)の現状把握と改善に有用。
  • 認知症リハビリテーションでは、「何度言っても覚えられないのは、やる気がないから、あるいは、認知機能の低下が原因」と受け止められがちであるが、行動分析学的にとらえるならばこれは行動の問題であって、
    • 行動を制御する先行刺激
    • 適切な動作への強化刺激
    • 動作を失敗させないための環境整備
    に注目することが肝要。
  • 拒否が起こるケースでは、拒否行動前後の環境変化に注目
  • 問題行動を消去するのではなく、問題行動に代わる「適切な行動」を促す。
などがあった。なお、上記の中で、「拒否行動」が問題行動として挙げられていたが、一口に拒否といっても、明らかに非論理的で何の脈絡もなしに拒否する場合と、はっきりした意思表明の1つとして拒否する場合がある。後者については、2012年4月25日の日記にも記したように、望月の「行動的QOL」の第三のレベルでは、
第三のレベル:拡大する選択肢の内容決定に本人が関与できる。個人が既存の選択肢を拒否して新しい選択肢を要求できる。あるいは、特定対象は指定しないが、新たな欲求を探索するような行動を許容する選択事態。
というように、「拒否」が評価基準に含まれている点にも留意する必要があるだろう。いっぽう、前者については上掲の通り、拒否行動前後の環境変化に注目する必要があると思う。

 指定討論の1番目では、認知症患者への介入においては、失敗が学習効率を低下させることに配慮し、無誤学習(動作が成功するように環境を整備し、少しずつ難易度を挙げる)の大切さが説かれた。このほか、今までに生起したことのない動作であればシェイピング、プロンプトで動作が生起するようであれば、先行刺激を段階的にフェイディングしていく中でプロンプトを減少させるという技法、さらにプロンプトで動作が生起するようになったら、チェイニングで一連の行動をつなぐ技法などが紹介された。
 このほか、問題行動については「できるを伸ばそう、できている質を向上させよう」という姿勢、また今後の展望として、チームアプローチ実現のための、課題分析表の作成や、生活場面への般化プログラムの開発、強化子(好子)の整備などが提案された。

次回に続く。