【連載】チコちゃんに叱られる! 劇場や映画館の座席の色
昨日に続いて、11月14日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
- なんで童話や昔話は怖い話が多いの?
- 日本人はなぜ「とろとろ」が好きなの?
- 劇場や映画館の座席は赤いのはなぜ?
という3つの話題のうち最後の3.について考察する。
さて、3.の疑問だが、私自身は劇場や映画館には殆ど訪れたことがないため、そもそも座席の色が何色なのかは全く記憶に無い。
- 以前、四国のオデオン座を訪れたことがあったので座席の色が何色だったか過去日記を調べてみたが、なんと、オデオン座の観客席は現在では板の間になっていた。
- 岡山市内にある岡山芸術創造劇場 ハレノワの大劇場は「木材を多用した内装や、朱色を基調とした色合いは“ハレ”の場に相応しい客席空間をつくり出しています。」と紹介されており、今回の疑問に合致しているようだ。但し中劇場は「深淵な宇宙を感じさせる客席空間は青色を基調としており、観客の意識が舞台に集中しやすく、鑑賞者の想像力を豊かにしていきます。」、また小劇場は写真を見た限りでは黒か濃い灰色のように見えた。
- 岡山市のランドマークと言われる岡山シンフォニーホールの座席は、
写真を見た限りでは青色系のようだ。
- 岡大の五十周年記念館の座席は青系統の色。
ということで、全体として必ずしも赤い色が多いとは言えないように思えた。
以上をふまえた上で、本題に戻るが、放送では、劇場や映画館の座席が赤いのは「座る人をステキに見せるため」が正解であると説明された。オペラの歴史や劇場について研究する石田麻子さん(昭和音楽大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- 現在のコンサートホール、劇場、映画館の座席が赤いのは西洋で生まれたオペラハウスが関係している。
- オペラは16世紀末のイタリアが起源。
- 初期のオペラは王族や貴族が個人的に招いた限られた人向けに上演されていた。
- その後、お金を払えば誰でも入場できるオペラハウスが次々と誕生したことで裕福な市民にもオペラが広まっていった。
- 初期のオペラハウスの一階は座席が無く立ち見だった。
- 側面には個室のような部屋がつけられ座席が用意されていた。
- 側面の個室は分譲マンションのように座席そのものを購入していた。
- 当時、赤は高級な染料であり、赤い座席は高級品であると見られていた。
- 個室を買い高級な赤い席に座っていることで、買った人の権威を示すことができた。
- フランス・パリ」の『オペラ座』を建築したシャルル・ガルニエは女性を美しく見せるため赤い座席を使用。赤色によって女性たちの顔がほんのり赤く健康的に染まり、より美しく見せるという狙いだった。オペラ座は世界中の劇場設計のお手本になった。
- その後、劇場で楽しむ娯楽として映画が誕生。現存する最古の映画館であるフランス・エデン座(1889年~)の座席も、オペラハウスの伝統を受け継いで赤色になっている。
- さらに赤色は人間の目では暗い場所でより暗く見える特性がある。
- 赤色の道路標識(例えば『止まれ』)は明るい場所では鮮やかな赤に見えるが、暗くなると他の色に比べて極端に暗く見える。
- 映画館では、館内が明るい時は赤色の座席がはっきり見えて空席を探しやすく、上映前に暗くなると赤色は目立たなくなり映画に十分集中できるようになる。
- 【石田さんの個人的な感想】赤色の座席を見るとワクワクする効果もあるかもしれない。
- 最近では赤くない変わった座席も登場している。
- 東京・新宿にある映画館は全席革張りの黒いシートで電動リクライニングまでついている。1席6500円。
- 海に浮かぶ映画館『アーキペラゴシネマ(Archipelago Cinema)は筏の上で映画を楽しめるようになっている。タイの映画祭のために特別に造られた。
ここからは私の感想・考察を述べる。
まず冒頭にも事例を挙げたように、そもそも劇場や映画館の座席の色に赤色が多いのかどうかはイマイチ分からないところがある。また、赤色に「座る人をステキに見せる」という効果があるのなら、飛行機も新幹線もバスも、みんな赤色シートにしてしまえばよいはずだが、少なくとも日本では乗り物の座席を赤色にすることは少ないように思う。
座席の色の話題から逸れるが、照明や壁の色が赤色系の場合と青色系の場合では、赤色系のほうが時間が長く感じられるという。このあたりのことをChatGPTに尋ねたところ以下のような回答をいただいた。
結論から言うと、**赤色系の照明・壁色のほうが「時間が長く感じられやすい」**とする研究・心理実験が多く報告されています。
逆に、**青色系は時間が短く感じられやすい**傾向があります。
以下、その理由をわかりやすく説明します。
■ なぜ赤い空間は時間が長く感じるのか?
- 赤は覚醒度・緊張を高める色
赤色光は自律神経のうち **交感神経をやや優位**にし、心拍数を上げたり、注意を高める方向に働くとされます。
人は緊張していると、**時間の流れを細かく意識するため、長く感じる**傾向があります。
- 赤は「活性刺激色」
心理学では、赤は“ウォームカラー”で、刺激量の大きい色です。
刺激が大きいほど「時間がゆっくり進んでいるように感じる」現象があります(退屈で長く感じるのとは違う仕組み)。
■ なぜ青い空間は時間が短く感じるのか?
- 青は覚醒を抑え、リラックス方向に働く
青色光はメラトニン抑制など睡眠関連の議論はありますが、**主観的には落ち着きを誘う色**として使われます。
注意の焦点が外に広がり、時間への注意が薄くなると、**時間が短く感じられる**ことがあります。
- 寒色=静・沈静」の効果
青系は心拍数をやや下げる方向に働き、刺激量が小さく、**時間感覚を伸ばしにくい**とされています。
- ■ 室内での体感は「照度・場面」でも変わる
ただし、室内での体感時間は **色だけでなく照度(明るさ)、光源の質、部屋の用途**でも変わります。
- 明るい青 → 集中しやすく、時間が速く感じる
- 暗い赤 → 落ち着きはするが、時計を見る頻度が増え「時間が長く感じる」
- 暖色の弱い光 → 眠気で時間感覚が曖昧になり、短く感じる場合もある
つまり、**一般的傾向としては赤=長い、青=短い**ものの、環境で多少変動します。
■ まとめ
- **赤色系の照明・壁色 → 時間が長く感じられやすい**
- **青色系の照明・壁色 → 時間が短く感じられやすい**
主観的時間は「覚醒度」「刺激量」「注意の向き」に大きく左右され、色はその一部を決めています。
もう1つ、「劇場や映画館の座席の色が赤色系の場合と青色系の場合ではどのような違いがもたらされると思いますか?」と質問したところ以下の回答をいただいた。
劇場や映画館の座席色が **赤系か青系か**によって、生じる心理効果・空間効果にはいくつか明確な違いがあります。
ここでは **観客の体験・空間演出・運営側の意図**という3つの観点からまとめます。
- 観客の心理的体験の違い
## 【赤色系の座席】
### ● ①「温かい・華やか」→ 期待感を高める
赤は“ウォームカラー”で、興奮や期待、華やかさを演出します。
劇場で歴史的に赤が多いのは、**非日常感を高め、これからステージが始まる高揚感をつくる**ためです。
### ● ②時間を「やや長く感じやすい」
先ほどの話と同じく、赤は刺激の多い色で、覚醒度が上がるため、
**上演時間を長めに感じさせる要因**になる可能性があります。
### ● ③視界に入ったとき“賑やかさ”を感じる
明るい赤だと視覚刺激が強く、劇場全体に活気を与える反面、
静かな雰囲気には若干向きません。
## 【青色系の座席】
### ● ①「落ち着く・静か」→ 没入感を高めやすい
青は沈静色で、心を落ち着かせるため、**映画や舞台への没入感を強めやすい**という効果があります。
とくに暗転すると青系の座席は背景に溶け込み、**観客が風景から消えたような一体感**が出ます。
### ● ②時間を「短く感じやすい」
青は刺激が少なく、時間への注意が薄れやすいため、観客にとって**上映時間が短めに感じられる**傾向があります。
### ● ③知的・クールな印象
落ち着いた上品さがあり、現代的・知的な印象を与えます。
- 空間演出としての違い
## 【赤い劇場】
- 伝統的・格式がある
- オペラハウスや古典劇場に多い
- 舞台の“幕”の色(赤い緞帳)と調和
- 光が反射すると温かさが強調され、豪華な雰囲気が出る
## 【青い劇場】
- 近代的、ミニマル、SFっぽい印象
- 暗転したときに座席が闇に溶けやすい
- 光の反射が弱く、**観客の存在感が消えて演目に集中しやすい**
- 運営側から見たメリット・デメリット
## ● 赤色のメリット
- 汚れ(飲み物跡、ほこり)が比較的目立ちにくい
- 古典的で“劇場らしい”雰囲気をつくれる
## ● 赤色のデメリット
- 青に比べると「賑やか」「煩い」印象になりやすい
- シリアス・静寂重視の作品では空間と作品のトーンがズレることも
## ● 青色のメリット
- 空間が落ち着き、観客が作品に集中しやすい
- 暗転時に座席が見えづらくなり、没入感が増す
## ● 青色のデメリット
- 赤より汚れが目立ちやすい(特に明るい青)
- 歴史ある劇場では“格式感”が弱く感じられる可能性がある
- ## ■ 結論(短くまとめると)
- ### ● **赤い座席の劇場**
- 伝統的・豪華・高揚感
- 観客の存在もやや目立つ
- 時間を長く感じやすい
- 緞帳や内装との調和が良い
- ### ● **青い座席の劇場**
- 落ち着く・近代的・没入感が強い
- 暗転時に観客が背景と一体化
- 時間が短く感じやすい
- 映画館や現代劇に向く
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