【連載】チコちゃんに叱られる! 茎が中空になることのメリット、デメリット/双子葉草本の茎が中空になりにくい理由
昨日に続いて、11月21日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、放送内容から外れるが、
●なぜストローで飲むようになった?
という疑問に関連して、一部の草本でなぜ茎が中空になるのかを調べてみた。
まず、ChatGPTに。
●植物(草本)のなかで茎の内部が中空になるのはどんな種類ですか?
と尋ねてみた。回答は以下の通り。
植物の茎が**中空(=内部が空洞)になる草本**には、いくつか典型的な分類的・構造的グループがあります。主な理由は「維管束が茎の外側に輪状に配置され、中心部(髄)が成長過程で崩壊する」ことです。
以下、代表的なタイプを整理します。
## ■ 1. イネ科(Poaceae)
最も典型的で、**草本の中空茎といえばまずイネ科**です。
- 竹(木質ですがイネ科)
- ススキ、ヨシ(アシ)
- コムギ、オオムギ、ライムギ
- イネ
- トウモロコシ(※節間は多くが中実〜半中空)
**特徴**
イネ科の茎は節(node)で仕切られ、節間が中空になるのが普通です。
これは維管束が外側に束状に配置され、中心部の髄が成熟とともに消失するため。
## ■ 2. セリ科(Apiaceae)
セリ科の多くの草本は **中空または中実〜スポンジ状**。
* フキ、アシタバ、ニンジン(花茎)、ウド、セリ、ミツバ
※完全に中空のものと、スポンジ状のものがある
**特徴**
発達した髄が比較的早く崩れて中空化する。野外でも「折ると空洞」が特徴で見分けの手がかりになる。
## ■ 3. キク科の一部(Asteraceae)
茎が太くなる多年草で中空・スポンジ状になるものがある。
- フキ(セリ科と誤解されることがあるが実際はキク科) → 中空
- ゴボウ(若茎は充実、花茎は中空)
- ヤグルマギクなど一部の大形草本
## ■ 4. シソ科の一部(Lamiaceae)
シソ科は四角い茎が特徴ですが、**内部が中空になる種がある**。
- ホトケノザ、ヒメオドリコソウ など
(※外見は四角形でも中心部の髄が薄く、中空〜スポンジ状)
## ■ 5. アブラナ科の一部(Brassicaceae)
花茎が伸びるタイプで、**花茎が中空になることが多い**。
- ナタネ(菜の花)
- ダイコン(花茎のみ中空)
- ハクサイの花茎
## ■ 6. ユリ科・ツユクサ科の一部
太い花茎や偽茎が中空~スポンジ状になる例がある。
- ネギ・アサツキ(ネギ類の**花茎**は中空)
- タケ類(木質だがイネ科の仲間)
## ■ 中空化のしくみ(簡単)
草本で中空になる主な理由は
- **維管束が外周に配置される(茎の外側が強い)**
- **中心部の髄細胞が成熟に伴い崩壊**
- → **軽量で風に強い「パイプ構造」になる**
特にイネ科はこの構造が顕著です。
## ■ まとめ(もっとも典型的なグループ)
中空茎になりやすい代表的な草本は:
- **イネ科**(最も典型)
- **セリ科**
- **キク科の一部**
- **シソ科の一部**
- **アブラナ科の一部**
- **ネギ類の花茎**
続いて以下の質問をさせていただいた。
●茎が中空になることは、茎が中実である植物と比べてどのようなメリット、デメリットがありますか?
いただいた回答は以下の通り。
茎が**中空(空洞)**になることには、植物にとって明確な**メリット**と、条件によっては生じる**デメリット**があります。
構造工学的に見ても利点がある一方、欠点もあります。
以下、植物の視点で分かりやすく整理します。
■ 中空茎のメリット
- **軽くて強い(効率の良い支柱構造)**
中空は、同じ材料量でも「曲げに強い」構造を作れます。
(ストローやパイプが強いのと同じ)
* 少ない細胞量・少ないエネルギーで背を高くできる
* 風でしなりやすく、倒伏しにくい(イネ科の利点)
→ **“軽量・高剛性”の構造を安く作れる**。
- **成長が早い**
中心部の髄を大きく作らず、外側の維管束リングと表皮さえ作ればよいので、
* **初期成長が速い**
* **急速に背丈を伸ばす必要がある草本で有利**(ヨシ、ススキなど)
- **通気性の改善(アナエロビオシス対策)**
湿地環境の植物(ヨシ、ガマなど)は、茎内部の空間が「通気組織(aerenchyma)」と連続して根に酸素を送り、
* **湿地でも根が窒息しにくい**
* **水分過多でも生育できる**
→ 中空構造は湿地植物の重要な適応。
- **倒れた後の再立ち上がり(曲げやすさ)**
イネ科植物は中空で節が多いため、
* 曲がっても折れにくい
* 風や動物で倒されても回復しやすい
→ 柔軟性の高さが生存率を上げる。
- **中空化で病害虫を減らす場合もある**
髄が少ないため、
内部を食べる昆虫の生息スペースが少ない
髄腐れ病などのリスクが低下しうる
(ただし種による)
# ■ 中空茎のデメリット
- **圧縮や局所的な力には弱い**
曲げには強いですが、点的に押しつぶされる力には弱い。
* 踏みつけ、動物の噛みつき、重みで折れやすい
* 中実茎ほど「つぶれ耐性」がない
→ **広範囲には強いが、局所破壊に弱い**。
- **腐敗・水の侵入に弱い場合がある**
中空部分から水や病原菌が入り込むと、
* そこが湿って腐りやすい
* 内部でカビ(土壌菌)が繁殖しやすい
※植物によっては節で区切ることで対策している(イネ科の節構造)。
- **機械的支持が必要な場合には不利**
果実を大きく育てる植物や、太い茎で重い器官を支える必要のある植物では、
* 中実構造の方が「圧縮」「せん断」に強い
* 重い実を支えられない(例:ヒマワリは太いが内部はスポンジ状で強度が足りず倒れやすい)
- **乾燥環境では間接的に不利になることも**
茎が中空だと、外層の維管束・皮層に依存しているため、
* 表皮破損=機能の大部分が失われやすい
* 乾燥の影響が内部へ侵入しやすい
中実茎(サボテン、木本)は乾燥に強い。
- **捕食者に利用されやすい(棲みつき)**
昆虫が産卵に使ったり、ハナバチ類が巣に利用したりするため、
* 中空部分が寄生・巣作りに利用されやすい
* 種子や表皮が傷つくリスクが増える場合も
# ■ まとめ
## ◆ 中空茎の大きな利点
- 軽くて強い(構造効率が高い)
- 高く・早く伸びられる
- 湿地での通気性が良い
- 柔軟性が高い
## ◆ 中空茎の欠点
- 局所的な押しつぶしに弱い
- 水や病原菌の侵入リスク
- 重い器官を支えづらい
- 表皮損傷が致命的になりやすい
最後に、
●なぜイネ科に中空茎が多く、双子葉草本は少ないのでしょうか?
と尋ねてみた。回答は以下の通り。
イネ科(Poaceae)に**中空茎が圧倒的に多い**のは、彼らの**進化的背景・茎の構造・生活史**が強く関係しています。
一方、双子葉草本では「必要性が少なく」「構造的に作りにくい」ため、中空茎は少数派です。
以下、「なぜイネ科は中空になりやすく、双子葉草本はなりにくいのか」を、進化・構造・生態の3方向から整理します。
- 茎の内部構造が根本的に違う
## ● イネ科(単子葉植物)=**外周に維管束が散在し、中心に大きい髄**
- * 維管束(道管+師管)が**リング状(外側)に配置されやすい**
- 中心部の髄が**成長の途中で崩れやすい**
- 外側に強度が集中した “パイプ状” 構造が自然にできる
→ 中空にしても全体強度が落ちない
つまり、**中空化に「向いた構造」**を生まれつき持っている。
## ● 双子葉草本(Dicots)=**中心部に太い維管束柱・髄があり、成長に「二次肥大」がある**
- 維管束は輪状に並び、その内側に太い髄がある
- 二次成長(肥大)により、髄や木部が厚くなりやすい
- 中空にすると構造的に弱くなりすぎる
→ 双子葉植物の茎は**“中実の柱”として発達する方向に進化**しており、
中空化は“構造的合理性が低い”。
- イネ科の進化環境と適応が「細くて軽い・速い成長」を要求した
イネ科の祖先が繁栄したのは、
- 開けた草原
- 風が強く、火事も多い
- 短期間で伸びて光を確保する必要が高い
という環境でした。
### ➤ そこで求められた特性は
- **速い垂直成長**
- **軽いが強い構造(風で倒れにくい)**
- **再生が早い(火災後の更新)**
これらに最も適したのが**中空+節で補強された“パイプ状茎”**。
つまり、**草原環境が中空茎を強く選択した**。
- イネ科特有の「節(node)」構造が中空化を可能にする
イネ科の茎は
- 節(node)=強固な補強リング
- 節間(internode)=中空で軽量
という構造で、まるで“竹のような連続した補強パイプ”になっています。
これにより
- 中空でも折れにくい
- 局所的な破壊が節で止まる
- 水分や病原菌の侵入を防げる
→ **構造的安定性が高いため、中空化が安全**。
※双子葉草本はこのような硬い「節」構造を持たないため、中空にするとすぐ折れたり潰れたりしやすい。
- 双子葉草本は「重い器官を支える」方向に進化した
双子葉植物は多様な形質を発達させ、
- 太い葉柄
- 大きな葉
- 大型の果実
- 木本化(樹木)の起源になる能力
を持っています。
そのため、
- **内部が詰まった中実構造**が有利
- 二次成長で太くして強度を確保
- 中空化はむしろ不利
→ “脇から枝や葉を支える”ための剛性を要し、中空化は起こりにくい。
- 双子葉草本にも中空が少数存在するが“例外的”
セリ科やキク科の大形草本の一部では中空化が起きますが、これは
- 茎を “管状支柱” として使う方向
- 肥厚成長が少ない一年草・越年草
- 大きな果実や重い枝を持たないタイプ
という限られた状況でのみ起こります。
→ 双子葉での中空は“特殊化した例外”であり、イネ科のように全体的な特徴ではない。
- ■ まとめ:両者の違いを一言で
- ### ◆ イネ科
**構造的にも生態的にも中空茎に向いており、草原環境がそれを強く選択した。**
- ### ◆ 双子葉草本
**中空にすると強度不足になりやすく、進化的にも中実化・肥大成長が主ルートだった。**
次回に続く。
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