【連載】チコちゃんに叱られる! 天気予報の雨マークは傘か雲か?/傘の国際比較
昨日に続いて、11月21日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
- なぜストローで飲むようになった?
- なぜフクロウの首はあんなに回る?
- なぜ日本の天気予報の雨は傘マーク?
- 【ひだまりの縁側で…】難しい漢字歌『林檎』
という4つの話題のうち、3.について考察する。
確かに日本の気象情報では雨は傘マークで表示されることが多い【但し、ウェザーニュースは一貫して「雲に雨粒」で表示されている】。いっぽう、海外では雲マークの下に数本の直線を引いたり水滴を加えることで雨を表すことが多い。念のため傘マーク(ピクトグラム)は日本だけかとChatGPTに尋ねたところ、日本以外で皆無とは言えないが、殆ど普及していないという回答であった。
地域 傘マークの普及度 備考
日本 ★★★★★(非常に高い) 天気予報の標準アイコン
韓国・中国・台湾 ★★☆☆☆ 雲+雨粒が主流、傘は一部で使用
欧米 ★☆☆☆☆ 基本は雲+雨粒、傘は例外的
国際気象機関 (WMO) ★☆☆☆☆ 標準アイコンには傘を採用しない
ということで放送内容に戻るが、放送では、日本の天気予報の雨が傘マークなのは「たぶん福澤諭吉のおかげ」が正解であると説明された。脇坂伯史さん(広島市江波山気象館)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- 日本の天気予報では雨を傘マークで表現するがこれは世界でも珍しい。他の国では雲から雨が降っている様子で表現されている。
- 日本で最初の天気予報に使われた天気図(1884年)には雨などの記号は使われていたが傘などのイラストは使われていなかった。また天気予報は「全国一般 風ノ向キハ定リナシ 天気ハ変リ易シ 但シ雨天勝チ」という大ざっぱなもの。8時間先までの予報だったので、観測所の前などに貼り出されるだけだった。
- 4年後の1888年、24時間先まで予報されるようになると、多くの新聞に天気予報が掲載されるようになった。
- そんななか、福澤諭吉が発行した『時事新報』にイラストつきの天気予報が掲載されるようになった。雨の予報は傘をさして高下駄をはいた男性のイラストになっており、これが雨の傘マークの原点になったと言われている。
- 福澤諭吉は時事新報を作る時に「ビジュアルでわかりやすく」という発想があったので、天気予報にイラストをつけよう指示したのではないかと思われる。
- 福澤諭吉は西洋の文化を紹介した『西洋衣食住』(1867年)でもイラストを入れビジュアルでわかりやすくしていた。
- 傘のマークが使われたのは、日本人は外国人に比べて傘への思いが強いからと思われる。
- 鎌倉時代を描いた『一遍星絵』には雨で傘をさす様子が描かれていた。
- 江戸時代になると急な雨で困った客に呉服屋や飲食店が傘を貸し出すサービスが始まった。
- 江戸時代には武士や裕福な商人の間では、高級品の蛇の目傘が流行しお洒落なアイテムとしても使われた。こうして「傘をさす=粋」という文化も生まれ、舞台でも使われるようになり、日本人にとって傘は特別な存在になったと考えられる。
- つまり、歴史的にも日本人と傘の関係は古い。
- さらに日本では雨が降るとしばらく降り続いて湿度も高くなるため、服が濡れると乾きにくいこともあり、傘を使う頻度が海外より多いと思われる。
- そのことから雨=傘のイメージがあり、天気予報に傘マークが採用されたのではないか。
- ウェザーニュースの2014年の調査によれば、自分の持っている傘の世界平均は2.4本、
- 1位 日本 3.3本
- 2位 スウェーデン、タンザニア、南アフリカ 3.0本
- 3位 韓国 2.8本
- 4位 台湾 2.3本
- 5位 ロシア・中国 2.2本
などとなっていて日本は世界1位になっている。
- 同じくウェザーニュースの2014年の調査で「雨で服がぬれるのは気になりますか?」という問いに対する回答を日米で比較したところ、
- とても気になる 日本25%、アメリカ12%
- ちょっと気になる 日本56%、アメリカ41%
- あまり気にならない 日本17%、アメリカ31%
- 全く気にならない 日本2%、アメリカ16%
という比率になっており、日本人はおよそ8割が気になるのに対してアメリカ人ではおよそ半分しか気にならず多少の雨では傘をささないという。
- 実際、世界の4地点で雨が降った時に傘をさしているかどうか映像から読み取ったところ、
- 渋谷のスクランブル交差点:ほぼ全員が傘をさしていた。
- ニューヨーク:渋谷と同じ程度の降雨時では傘をさしているのは数人程度。
- ロンドン:かなりの雨でも傘をさしている人は少ない。
- メキシコ;そもそも傘を使うという習慣が無い?
ここからは私の感想・考察を述べる。
まず日本の気象情報番組や天気サイトで傘マークがどの程度使われているかという点だが、私がよく閲覧している気象協会では確かに傘マークが使われている。またそのマークは雨の降り方によって、いくつかの段階に分かれていた。いっぽうウェザーニュースでは傘ではなく雲マークが使われており3段階表示になっている。
なお、NHKの公式サイトの中には天気マークについての説明は見つからなかった【ChatGPTに探してもらったがやはり見つからないという】。ウィキペディアには、
NHKワールドTVで「NHK NEWSLINE」に内包して放送される英語版では、3日先の天気画面とBGMのみ流す場合(以下、通常版)と、立体CGを駆使し女性キャスターが英語による気象解説を行う(以下、立体CG版)2つのパターンがある。
2007年4月より祝日を除く月 - 金の昼間 - 深夜の時間帯(日本時間)においてリニューアルが行われ、他の海外放送局と同様に地球に見立てた立体CGの映像や天気マーク(「曇り」のマークが実物にそっくりな形で表現されている。雨マークは雨雲から水滴が落ちるアニメーション)および最高・最低気温(摂氏のみ)の表示もリニューアルされた。
と記されており、どうやら海外向けには雨天は「雲マーク」が使われているようだ。但しWebサイトは傘マークになっていた。
放送では自分の持っている傘の本数や「雨で服がぬれるのは気になりますか?」という質問への回答比率が海外と比較されていたが、これらのデータは、調査対象のサンプリング(都市か農村かなど)、質問表現(「気になる」に相当する外国語をそう翻訳しているか)によって大きく変わってくる可能性がある。
ネットで検索したところ、どうやらこちらに結果詳細が公開されているようだ。
- 調査期間:6月15日(日)~18日(水)
- 参加者数:37663人
- 参加国数:35ヶ国
となっていてサンプル数は十分なようだが、どのようにサンプリングしたのかは分からなかった。分かりしだい後日追記する予定。
次回に続く。
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