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【小さな話題】ケンボー先生と山田先生~辞書に人生を捧げた二人の男~(8)辞書にのまれた見坊/語釈のマネ/盗用、剽窃、盗作、真似の違い すっかり間が空いてしまったが、この連載はまだ終わっていなかった。【9月5日で中断。】 9月5日の日記では、
その見坊は1968年3月、ワードハンティングに専念するため国立国語研究所を突然辞職。「見坊は辞書にのまれた」とも言われた。山田忠雄はこの時期の見坊について、 ●問題が起こりましてね。彼【見坊】は語彙採集の手をだんだん広げてまいりました。それが大規模になればなるほど語釈に取りかかることができなくなった。『明国』が改訂しなければいけない時が来てもなかなかそれを始めることができない。 こうして『明国』は改訂できず15年以上が過ぎた。そんななか1971年2月、『暮らしの手帖』に掲載された『国語の辞書をテストする』という記事であった。記事では当時の国語辞書10点ほどが比較検証された【画面によれば、『三省堂』、『岩波』、『中教』、『小学館』、『角川』、『講談社』、『旺文社』、『広辞苑』、『新潮』、『新国語』、『研究社』など】。記事では「まつる」の語釈がほぼ同一であったことから、 ●何冊かの辞書を引き比べてみるとやたらに似たような文章にぶつかる。ほんの一字か二字を言いかえただけのような文章である。 と批判された。放送画面によれば、このほか、新聞記事からひろった言葉と衣食住関係の言葉合わせて215語について誤りがあるかないかも点検。画面からの読み取りなのではっきりとは言えないが、どうやら誤りの箇所が多数の辞書で共通しており、各辞書が独立して誤りを犯したとは言いがたいということが指摘されたようであった。こうして、当時の辞書界にはびこっていた盗用、剽窃の問題が明らかにされた。このことを誰よりも憂いていたのが山田忠雄であった。『新明解』初版では、『真似』の用例として「先行書の真似はよせ」が載せられていたという。 ここでいったん私の感想・考察を述べるが、『暮らしの手帖』はリンク先によれば今でも19万部【但し2014-2015年頃のデータ】の発行部数があるそうだが、1970年代は遙かに影響力が大きかったように思う。とりわけ商品テストの影響力は絶大であり、度成長期の日本の工業製品の品質改善のきっかけともなったという。残念ながら、人手とコストが掛かるなどを理由に2007年、編集長交代と同時に中止された。 そう言えば『主婦の友』という雑誌もあったと記憶しているがウィキペディアによると 『主婦と生活』と『婦人倶楽部』が休廃刊した後、老舗の婦人雑誌では最後の一誌となった。しかし、近年は購読層や読者の生活事情の変化などもあり発行部数が低迷し、2008年5月2日発売の同年6月号(通巻1176号)をもって休刊することになり、創刊から91年の歴史に幕を下ろした。最終号には、創刊号(1917年発行)の復刻版が付録として付けられた。2014年11月20日に『主婦の友Deluxe』として復活[14]。2018年12月に雑誌コードを取得し、宝箱(家計簿入りのギフトセット)として独立創刊。とのことである。ネットが普及してSNSなどを介して無料で有益情報が入手できる今の時代、紙媒体の雑誌はジャンルにかかわらず苦戦を強いられていくことだろう。 元の話題に戻るが、放送で取り上げられた『真似』の用例は、『新明解』第七版では、 ●「先行書の真似は よせ」「鵜(ウ)の真似をする烏(カラス)〔= ⇒ 鵜〕」「がんばりやの先輩の真似はできない」「物真似・口真似・猿真似・人真似小真似」 となっており、「先行書の真似」の用例がちゃんと残っていた。いっぽう『三国』第七版のほうの用例は、 ●「死んだ━をする」「顔━」 というようにシンプルであった。 ちなみに『真似』の語釈のほうは、
もう1つ、放送で「盗用・剽窃」という言葉が使われたことに関して、類似の「盗作」、「模倣」を含む4語についてChatGPTに違いを説明してもらった。 ◆## 🔹 4語の違い(全体像) | 用語 | 主な対象 | 意味 | ニュアンス・使われ方 | | ------------- | -------------- | ------------------------ | ---------------------------- | | **盗作(とうさく)** | 小説・音楽・絵画などの作品 | 他人の作品を自分のものとして発表 | 芸術・創作分野での不正。「まるごとパクリ」に近い | | **剽窃(ひょうせつ)** | 論文・研究・文章など | 他人の文章・考え・データを自分の成果として使用 | 学術的な不正。「引用せず使う」ケース | | **盗用(とうよう)** | 言葉・アイデア・デザインなど | 他人のものを許可なく流用 | 比較的広い意味。法律文書や報道でよく使われる | | **模倣(もほう)** | 作風・構図・デザインなど | 他人の表現を真似る(意図的でも違法でないことも) | 倫理的グレーゾーン。学びや参考としての「模倣」もありうる | ◆## 🔸 用語の関係図(イメージ) 模倣 → 盗用 → 剽窃/盗作 ↑ ↑ └──合法/参考段階──┘ → 不正行為
◆## 🔹 具体例で比較 | 状況 | 評価 | 該当語 | | ----------------------- | -------- | ------- | | 他人の絵を真似して練習する | 問題なし(学習) | 模倣 | | 他人の絵を一部トレースして自分の作品として展示 | 不正の可能性あり | 盗用または盗作 | | 他人の論文の一節を無断で自分の論文に挿入 | 不正 | 剽窃 | | 有名曲のメロディーを少し変えて自作曲として販売 | 不正 | 盗作 | ◆## 🔸 まとめ(短く整理) | 分野 | 主に使う語 | 不正の性質 | | ------- | ----- | -------------- | | 芸術・文学 | 盗作 | 作品の「形」や「表現」を盗む | | 学問・研究 | 剽窃 | 知的内容や文章を盗む | | 一般・法的表現 | 盗用 | 他人のものを無断で使う | | 学び・参考段階 | 模倣 | 必ずしも不正ではない | 最後に「著作権法上の区別(どこまでが違法か)」を説明してもらった。 ◆## 🔹 まず基本:著作権法が守るのは「表現」であって「アイデア」ではない
したがって、
◆## 🔸 各用語と法的評価の関係 | 用語 | 法的に違法? | 著作権法との関係 | 補足 | | ------ | ----------- | ----------------- | --------------------------------------------- | | **盗作** | ✅ 違法の可能性が高い | 著作権侵害に該当(無断複製・公表) | 他人の作品を自分の名で発表すれば、著作権(複製権・氏名表示権など)侵害 | | **剽窃** | ⚠️ 法的にはグレー | 倫理違反が中心(学問的処分) | 他人の研究内容を無断使用しても、「表現」をそのまま使わなければ著作権侵害ではないことも多い | | **盗用** | ⚠️/✅ 状況による | 無断引用なら著作権侵害 | 部分的引用でも、引用要件を満たさなければ侵害になる | | **模倣** | ❌ 原則合法 | 著作権侵害にならない | アイデアや作風を参考にするだけならOK。ただし酷似していれば盗作と見なされる | ◆## 🔹 剽窃と盗作の違法性の境目 たとえば: | 行為 | 法的扱い | 評価 | | -------------------- | ---------- | ---------------- | | 他人の文章をそのままコピー | 著作権侵害 | 違法(盗作・剽窃) | | 他人の研究アイデアを自分の言葉で書く | 倫理違反(学術不正) | 剽窃(法的には違法でないことも) | | 他人の絵の構図や色使いをまねて自作を描く | 場合による | 模倣(度合いによって盗作扱い) | ## 🔸 学問分野での「剽窃」の扱い * 大学や研究機関では、剽窃は**研究倫理違反**として
ただし**刑罰(罰金や懲役)**の対象には通常なりません。 ◆## 🔸 芸術分野での「盗作」の扱い * 小説・音楽・絵画・映像などでは、**著作権侵害**として民事・刑事の責任を問われる可能性があります。
## 🔹 まとめ | 分類 | 法的リスク | 主な制裁 | | -- | ------------------ | --------- | | 盗作 | 高い(著作権侵害) | 損害賠償・刑事罰 | | 剽窃 | 低い(倫理違反) | 論文撤回・学位取消 | | 盗用 | 中程度(引用の仕方による) | 民事上の責任 | | 模倣 | 原則なし(ただし度が過ぎると問題化) | なし/社会的批判 | |