【連載】サイエンスZERO『色彩の科学へようこそ! “赤”は変幻自在!』(3)林檎はなぜ赤い?/赤が昆虫の警戒色になった理由
昨日に続いて2025年5月11日に初回放送された、
●“赤”は変幻自在!
の話題。本日より放送内容に入る。
放送ではまず、赤、緑、青のそれぞれに反応する視細胞の感度分布のグラフが紹介された。その中で赤の視細胞は波長の長いほうを感じ取ることができる。
続いて、スタジオ解説者の堀内隆彦さん(千葉大学)から、赤い林檎を『赤』と感じることができるのは哺乳類の中でも霊長類のごく一部に限られているという説明があった。それらの霊長類は青々とし葉っぱの中から赤い熟れた果実を探すことができるように赤い色覚を獲得したと言われている。また林檎の赤い色は「おいしそう」という感情を想起させるという。
ここまでのところでさっそく疑問が浮かんだが、上記の説は、
●赤い色覚を獲得した動物のほうが緑の木々の中から赤い果実をいち早く見つけられるので適応上有利になった。
という意味かと思うが、この説明では「多くの林檎はなぜ赤い?」という説明にはならない。林檎を含めて多くの果実が赤色になることにはどういう利点があったのだろうか? 上記の堀内さんの説明では、「赤」を感じることができるのは霊長類のごく一部と説明されたものの、鳥類のことには言及されていなかった。たぶん、鳥に果実をたくさん食べてもらい、消化されなかった種をたくさんばらまいてもらう上で、果皮が赤いほうが鳥に見つけられやすいためではないかと推測できる。念のためChatGPTに
【質問】林檎はなぜ赤いのでしょうか? 林檎を含めて植物の中には赤い果実(果皮が赤い実)をつける植物がたくさんありますが、赤くなることには適応上どのようなメリットがありますか?
と尋ねたところ以下のような回答をいただいた。
林檎が赤くなる理由は、**色素の生化学的役割**と**進化的・生態学的適応**の両面から説明できます。以下、段階的に整理します。
- 林檎が赤くなる直接の理由(生理・化学)
林檎の赤色は主に**アントシアニン**という水溶性のフラボノイド色素によるものです。
* 成熟に伴い果皮細胞でアントシアニンが合成・蓄積される
* 特に
* 強い日照
* 昼夜の寒暖差
* 糖の蓄積
が引き金となって合成が促進される
* そのため、日当たりの良い側だけ赤くなることが多い
- 赤くなることの適応上のメリット(果実一般)
### (1) 動物への「成熟サイン」としての視覚的広告
赤色は多くの動物にとって**遠くからでも識別しやすい色**です。
* 鳥類・霊長類は色覚が発達しており、赤色を明確に識別できる
* 「赤い=食べ頃」という信号を発することで、
* 果実が食べられる
* 種子が糞とともに散布される
という相利共生が成立する
特に林檎の祖先が生育してきた森林環境では、**緑の葉の中で赤は非常に目立つ**ため、散布効率が高まります。
### (2) 未熟果との差別化(誤食の回避)
* 未熟な果実は
* 種子が完成していない
* 有毒成分や強い酸味をもつことが多い
* 赤く色づくことで
* 「今は食べてもよい段階」
を明確に区別できる
これは**植物側にとっての時間調整機構**といえます。
### (3) 果皮の保護機能(副次的メリット)
アントシアニンには以下の作用があります。
* 紫外線吸収による**光ストレス軽減**
* 活性酸素を除去する**抗酸化作用**
* 低温ストレスへの耐性向上
特に林檎は秋に成熟するため、
**強い日射+低温**という環境下で果実組織を守る役割が重要になります。
- なぜ「赤」なのか?(他色との比較)
果実色には赤・黒・紫・黄色などがありますが、赤には以下の特徴があります。
* 緑背景(葉)に対して**最大級のコントラスト**
* 鳥類・霊長類の色覚特性と相性が良い
毒々しさ(警告色)と誤認されにくい
※昆虫では赤は警戒色だが、果実では「栄養豊富」の文脈で機能
そのため、**大型哺乳類や鳥に種子散布を依存する植物**では、赤系の果実が多く進化しました。
- 林檎の場合の補足(人為選択)
野生リンゴ(*Malus sieversii* など)でも赤い果実は存在しましたが、
* 人間は
* 赤く
* 甘く
* 見栄えのよい果実
を強く選抜してきた
結果として、**現在の栽培リンゴは自然選択+人為選択の産物**となっています。
- まとめ
林檎が赤い理由は単一ではなく、
* **動物に見つけてもらい、種子を散布してもらうため**
* **成熟の合図を明確に伝えるため**
* **果実自身を光や低温から守るため**
という複数の適応的メリットが重なった結果です。
赤い果実は、単なる「色」ではなく、
**植物が動物と環境を相手に進化させてきた高度な情報表示装置**だといえます。
さて、放送でも紹介されていたが、赤色の果実は鳥や霊長類の一部では食べ頃の合図になるのに対して昆虫では警戒色になるという。なぜ昆虫では赤が警戒色になるように進化したのだろうか? この点についてもChatGPTに尋ねてみた。いただいた回答は以下の通り。
結論から言えば、**昆虫における赤色の「警戒色化」は、昆虫自身の色覚特性と、昆虫を捕食する天敵(主に鳥類)の視覚特性との相互作用の中で進化した**と理解すると整理できます。以下、段階的に説明します。
- 警戒色(アポセマティズム)とは何か
警戒色とは、
* 「自分は不味い・有毒・危険である」
* 「攻撃すると損をする」
という情報を**捕食者に学習させるための視覚信号**です。
重要なのは、**色を“どう感じるか”の主体は昆虫ではなく捕食者**である点です。
- 赤が警戒色になりやすかった最大の理由:鳥の視覚
### (1) 昆虫の主な捕食者は鳥類
* 多くの昆虫(特に日中活動する種)の主要な天敵は鳥
* 鳥類は
* 赤を含む広い波長域を識別可能
* 人間以上に色差に敏感
* 動く小物体を色で素早く識別できる
つまり、**赤は鳥にとって非常に目立つ色**です。
### (2) 「背景とのコントラスト」が決定的
自然環境では、
* 背景の大部分は
* 緑(葉)
* 茶(樹皮・土)
* その中で
* 赤・黄・黒の組み合わせは統計的に極めて稀
この「環境中で不自然な配色」そのものが、
**捕食者に「要注意対象」として学習されやすい**という利点を持ちます。
- なぜ赤“だけ”ではなく、赤+黒/黄+黒なのか
多くの警戒色は単色ではなく、
* 赤+黒
* 黄+黒
といった**強コントラスト配色**です。
理由は以下の通りです。
* 遠距離でも形状認識しやすい
* 薄暗い環境や逆光でも識別可能
* 捕食者の「一度の失敗学習」を最大限に活かせる
結果として、**少ない犠牲で「危険」という意味が定着**します。
- 昆虫側の色覚は直接の理由ではない
ここで誤解されやすい点を整理します。
* 昆虫の多くは
* 紫外線・青・緑に感度が高い
* 赤への感度は低い、またはほぼない種も多い
* したがって、
* 昆虫自身が「赤を警戒色だと認識した」わけではない
**警戒色は、捕食者にどう“見えるか”で進化する形質**です。
- 「毒を持つ個体が赤かった」ことの進化的連鎖
進化的には次のような過程が想定されます。
- たまたま赤みの強い体色を持つ個体が出現
- その個体が
* 毒
* 強い悪臭
* 刺す・噛むなどの防御手段
を持っていた
- 鳥が捕食して嫌な経験をする
- 鳥が「この色は危険」と学習
- 赤い個体が選択的に生き残る
この**捕食者側の学習**が世代を超えて積み重なり、赤色=警戒色という意味づけが強化されていきます。
- なぜ果実では警戒色にならなかったのか
比較すると理解しやすくなります。
- **昆虫**
* 動く
* 小さい
* 捕食される立場
→ 「近づくな」の信号が有利
- **果実**
* 動かない
* 食べられることが目的
* 種子散布に依存
→ 「食べ頃だ」の信号が有利
同じ赤でも、**生態的文脈(誰に何を伝えたいか)が正反対**なのです。
- まとめ
昆虫で赤が警戒色として進化した理由は、
* 主な捕食者である**鳥類にとって赤が非常に目立つ色だった**
* 自然背景に少なく、**異常・危険として学習されやすかった**
* 一度の不快経験を色と結びつける**学習効率が高かった**
という条件がそろっていたためです。
つまり赤は、**昆虫が選んだ色ではなく、捕食者の脳に刻み込まれた「危険のラベル」**として定着した、と理解するのが適切でしょう。
次回に続く。
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