【連載】チコちゃんに叱られる! 「脊柱起立筋」、「『馬鹿』の語源」
昨日に続いて、3月28日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は
- デパートの1階に化粧品売り場があるのはなぜ?
- その日の気分で食べたいものが変わるのはなぜ?
- NHK放送100年記念特別企画 歴代クイズ番組の問題に答えてみてクイズ!
- 大河ドラマはなぜ大きな河?
- 【こんなんのコーナー】くるくる回ると体が柔らかくなっちゃう現象
- バカが「馬」と「鹿」なのはなぜ?
という6つの話題のうち5.と6.について考察する。
まず6.の「くるくる回ると体が柔らかくなっちゃう現象」というのは、文字通り自分の好きな方向に3回ぐるぐる回ると、前屈の成績が向上、つまり体が柔らかくなるという現象であり、岡村さんやゲスト3人が実演したところ確かに2cm〜7cm程度からだがよく曲がることが確認された。
お馴染みの坂井建雄さん(順天堂大学)による解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- からだが柔らかくなる原因は『脊柱起立筋』の緩み。
- 『脊柱起立筋』は骨盤〜背骨〜頭部まで繋がる最も長い筋肉の総称。
- 人は直立している時、脳から無意識のうちに「まっすぐ立て!」という指令が出ている。脊柱起立筋が常に緊張状態になることで立つことができる。この筋肉は横になっている時以外は緩まない。
- しかし、くるくると回る時は脳からの指令が「まっすぐ立て」から「回れ」に変わる。脊柱起立筋の緊張が緩むことで伸びやすくなり、一時的に体が柔らかくなった。
ぐるぐる回ることで前屈の成績が向上することは私自身でも確認できた。もっとも、上掲の説明では、「ぐるぐる回れ」以外の命令でも脊柱起立筋の緊張を緩めることができるはずだ。例えば腹筋を10回行うとか、ラジオ体操をするといった運動でも同様の効果が生じるはず。なぜ「ぐるぐる回る」のが一番有効なのかは分からなかった。
念のためCopilotに「立った状態でぐるぐる回ると脊柱起立筋の緊張が一時的に緩むというのは本当ですか?」と尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
はい、ある程度は本当です。立った状態で回転することで、脊柱起立筋(背中の筋肉)の緊張が一時的に緩和されることがあります。これは、以下のような理由によります。
- **遠心力と動的ストレッチ**
ぐるぐる回る動作によって、背中の筋肉が伸びたり縮んだりするため、一時的に緊張がほぐれやすくなります。これは「動的ストレッチ」の一種で、急激な収縮と伸張によって筋肉の血流が促進され、リラックス効果が生じます。
- **前庭系の刺激**
体を回転させると、三半規管が刺激され、姿勢を調整する働きが活性化します。これによって背中や体幹の筋肉のバランスを調整する神経系が活性化し、無意識のうちに筋肉の緊張が緩むことがあります。
- **一時的な緊張解除**
筋肉は一定の姿勢が続くと緊張しやすくなりますが、動きのある刺激を与えることでその緊張が緩むことがあります。ただし、これは一時的なものなので、根本的な筋肉のこわばりや疲労を解消するには、適切なストレッチやマッサージが必要になります。
実際に回転することで背中の筋肉がほぐれる感覚があるかどうかは個人差がありますが、軽く回ってみて心地よいなら、ちょっとしたリラックス法として試してもいいかもしれませんね。
ただし、めまいやバランスを崩しやすい人は注意してください!
なるほど、放送時間が限られている坂井建雄さんの解説よりAIのほうが詳しい情報を得ることができた。回答内容は鵜呑みにはできないが、最近のAIの適確な説明には恐れ入ってしまう。
最後の「バカが「馬」と「鹿」なのはなぜ?」については放送では『鹿を見せられて『馬だよね?』といわれたから」が正解であると説明された。日本語の語源を研究している丸田博之さん(京都先端科学大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- 【馬鹿は】もともとは僧侶の隠語として使われていてサンスクリット語の「無知」を意味するmoha(モハ)から来ている。
- 『モハ』は中国に伝わり『慕何』と記された。
- 『慕何』は平安時代以降に日本に伝わり、「ボカ」や「バカ」と読まれた。
- 室町時代に書かれた辞書『運歩色葉集』では『慕何』は「破家」、「馬鹿」、「馬嫁」などの当て字が使われていた【←もう一例あったが判読できず】。但しこの辞書は上流階級のみが使用していた。
- 『馬鹿』が定着したのは、中国の四字熟語『指鹿為馬』(しろくいば)が関係している。
- 紀元前210年ごろの中国・秦の時代、秦の始皇帝が亡くなった後を二世皇帝の胡亥(こがい)がつとめていた。
- 家臣の趙高は始皇帝の遺言を偽って幼子だった胡亥を皇帝の座に就かせた。趙高が丞相(国政を司る大臣の位)として実権を握った上に、自らが皇帝の座を得ようとした。
- 趙高は、自分に忠誠を誓う家臣団がどれほどいるのかを見定めようと、鹿の置物【←放送ではシカのおもちゃ】を見せて、「これは馬だ。お前はどう思うか?馬か鹿か?」と自分の言う事に100%従う家臣かどうかをテストした。
この一連の出来事から、誤った事を力ずくで押し通す事を『指鹿為馬』と言うようになり、このエピソードが奈良時代以降、当時多くの人に読まれていた『史記』に記されていたことで僧侶・貴族。武士に広まった。
- さらに平安時代に日本に伝来した『新唐書』(しんとうじょ)には「而亥不能馬鹿矣」(胡亥は馬と鹿の区別がつかない)という言い伝えが書かれていて、これが「馬鹿」という当て字の有力な候補になった。
- 室町時代になると学問を広めるために僧侶が全国で講義を行うようになり、愚かな行為のたとえ話として「指鹿為馬」の四字熟語が庶民にも広まっていくことになった。こうして鹿を馬と言い張る愚かでバカげた物語が知れ渡ったことで、馬の「バ」鹿の「カ」で「馬鹿」の当て字が広まった。
- 江戸時代、庶民が読んでいた文学作品にもこの「馬鹿」の表記が頻繁に登場した。放送では『好色一代男』(井原西鶴)における使用例が紹介された。
ここからは私の感想・考察を述べさせていただくが、まず私自身は『馬鹿』という言葉は滅多に使わない。大辞泉によると『馬鹿』には
- 知能が劣り愚かなこと。また、その人や、そのさま。人をののしっていうときにも用いる。あほう。「―なやつ」⇔利口。
- 社会的な常識にひどく欠けていること。また、その人。「役者―」「親―」
- つまらないこと。無益なこと。また、そのさま。「―を言う」「―なまねはよせ」
- 度が過ぎること。程度が並はずれていること。また、そのさま。「―に風が強い」「―騒ぎ」「―正直」
- 用をなさないこと。機能が失われること。また、そのさま。「蛇口が―で水が漏れる」
というような意味があるが、1.は知的障害者の差別表現になるような気がする。また私は高校卒業までは東京で生まれ育ったが、大学入学後はずっと西日本で暮らしていたため、アホ・バカ分布図で言えば「アホ」を耳にすることが多かった。ま、他の人ではなく、自分自身に向けて「私バカよね」とか「あほくさ」とつぶやくことは問題なさそう。
『馬鹿』の語源については今回の放送内容以外にも諸説があるようだ。ざっと検索したところこちらやこちらに参考情報があった。なお、放送では「指鹿為馬」由来であるとされたが、中国では使われていないようだ。
このWeb日記で何度も指摘しているように、何かの言葉の語源は古文書に頼られることが多い。その言葉がいつの時代にどういう文脈で出現していたのかを実証する方法である。しかし、言葉というのは何も上流階級だけが使うわけではない。とりわけ「バカ」というのは、日本語で相手をからかったり、罵倒(その立場を低く見なす事で、相手の感情を損なう・人格の否定)するため、最も普通に使われる」という表現であり、庶民一般によって大昔から使われていた言葉があるはず。まずは一般庶民が使われる言葉が存在し、その時代の物書きがそれを文字で表したと考えるべきではないかと思う。といってもタイムマシンが無い限りは、昔の時代にどういう言葉が【日常会話として音声で】使われていたのかを調べるのは難しい。
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