じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 PM2.5による大気汚染が深刻化しており、よく晴れていても夜空の星が見えにくくなっている。とはいえ、夕方の南西の空に見える金星(12月7日が最大光度でマイナス4.7等)と月(12月6日21日の月齢3.5)【写真左、本部棟の左側】や、東の空に昇る木星(マイナス2.6等)【写真右、キビの穂の上】はさすがに明るい。



2013年12月06日(金)

【思ったこと】
1301206(金)絶滅の危機!? “岡山弁”

 12月6日夕刻のNHKローカル番組

岡山ニュース もぎたて!の特集コーナー金だイチで、

絶滅の危機!? “岡山弁”

という話題を取り上げていた。【この日記執筆時点では未掲載だが、おそらくhttp://www.nhk.or.jp/okayama/program/kindaichi/20131115.htmlというところに過去記録が残る見込み。】

 番組冒頭の資料によると、岡山弁は岡山県民においてもそれほど好まれておらず、全国都道府県別の調査によれば、「土地のことばが好き?」という問いにYESと答えたのは50.2%にすぎず、全国では44位になっているという。また、「土地の言葉を残したい?」という問いにYESと答えたのは51.5%でこちらも全国38位という低さになっているということであった。ちなみに、「土地のことばが好き?」という問いにYESが多かったのは、第1位が沖縄県で83.0%、以下、北海道74.8%、岩手県74.6%、秋田県73.6%、宮崎県73.6%などとなっていて、大都市から離れた地域の都道府県に多い。いっぽう、「好き」の比率が低いほうのワースト5は、千葉県41.0%、埼玉県43.6%、茨城県45.6%、岡山県50.2%、滋賀県51.4%となっていて、東京や大阪・京都近辺の都道府県に多いということであった。

 以上の資料だけを見ると全国ランキングでは下位だが、岡山弁が好き、あるいは岡山弁を残したいという県民はかろうじて過半数を超えており、必ずしも嫌われているわけではない。とはいえ、全国各地域で、方言が人のぬくもりや安心感、誇らしい、かっこいいといったイメージを肯定的評価を受け地域によっては「方言ビジネス」が成功しているなか、岡山弁への関心はイマイチという印象はぬぐえない。

 番組冒頭では岡山弁についての街角インタビューが紹介されていたが、どちらかと言えば「乱暴」「汚い」といった否定的なイメージが多く語られていた。じっさい私自身も、東京、京都、愛知、長崎、そして岡山でそれぞれ3年以上生活したことがあるが、ぬくもりを感じさせてくれるのは長崎弁や京都弁、いっぽう、岡山弁や名古屋弁は、相対的に乱暴でキツイように聞こえてしまう。番組によると、その一因は、岡山弁や名古屋弁に濁音や「連母音融合」という特徴があるためらしい。例としてあげられたのは、

とても寒いと思ったら、雪が降っているよ

であり、これを岡山弁で言うと、

でれーさみーおもーたら、雪ふりょーるが

また、名古屋弁で言うと、

どえりゃーさみー思ったら、雪ふっとるがや

となるという。ここで連母音融合というのは、「さむい」の「mui」が「mi--」のように1つの母音に融合することをいい、丁寧に喋っていないという印象を与えてしまうということのようだ。ちなみに、愛知県民による自県の方言評価も全国41位と下位になっているという。

 番組ではもう1つ、「土地のことばが好き?」という問いに対して、
  • YESが多かった都道府県が、北海道、山形、岩手、宮城、福島、京都、長崎、宮崎、佐賀というように、京都を除いては、東京と大阪の大都市圏から離れている地域であること
  • YESが相対的に少なかった都道府県が、栃木、茨城、埼玉、千葉、岐阜、福井、滋賀、愛知、奈良、岡山というように、東京と大阪の大都市圏に近い地域であること
が指摘され、その理由として、
  • 東京・大阪との距離が遠い地域では、土地の風習などが残り郷土愛を持ちやすい
  • 東京・大阪との距離が近い地域では、都会への憧れで地元への愛着が弱くなる


という、井上史雄先生の説を紹介していた。井上先生の多大な研究業績にケチをつけるつもりは毛頭無いが、岡山弁や名古屋弁があまり好かれていない理由としてはイマイチ説得力に欠けるように思えた。その理由は以下の通りである。
  • 少なくとも名古屋は独自の文化圏があり、名古屋人が、東京・大阪に近くてそれら2大都会へ憧れているとは到底思えない。
  • 岡山は今でこそ、新大阪までのぞみ号で45分という近さにあるが、もともとは関西とはかなり隔たっており交流があるとは言いがたい。じっさい、大阪方面からローカル路線バス乗り継ぎで岡山に行こうとすると、兵庫県との県境の峠で徒歩移動を強いられることになる。【ローカル路線バス乗り継ぎの旅の第4弾参照】
  • 通信手段や交通機関が発達した現代においては、大都市と地方との距離の長短は、離島を除けばあまり影響を受けにくいのでは? 土地の風習の残りやすさ、あるいは都会への憧れの程度と地理的な距離の長短は関係ないのでは?
 むしろ、岡山弁が廃れてきた理由としては、岡山市や倉敷市は他県からの転入者が多く、少なくとも都市部でオリジナルのしゃべり方が通じにくいということがあるのではないかと思う。岡山市は交通の便の良い都市であり、近畿圏、山陰、四国、中国地方西部、九州方面からの流入も少なくない。じっさい、こちらのデータにある通り、岡山大学の場合、岡山県内からの入学者の割合は30〜33%程度で、過去5年間では1/3を超えたことが無い。教員の場合はもっと顕著で、私の専修コースの同僚には岡山県出身・育ちは一人もいない。なので、授業や会議で岡山弁が使われることはほとんど無い。事務職員には地元出身者が多いが、毎日それほど会話を交わしているわけではない。

 ということで、岡山・倉敷近辺の都市部で岡山弁が廃れていくのはやむなしという気もする。但し、県北山間部や島嶼地域では文化伝統とともにずっと受け継がれていくのではないかと思う。