じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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韓流「ビッグ」のラストシーン。左側は、魂キョンジュン(身体ユンジュ)がキル・ダランと約束して分かれるシーン。右側は、元の身体に戻ったキョンジュンがキル・ダランと再会するシーン。これらを交互に提示する構成となっているが、再会後の顔は傘で隠されていて見えないように工夫されている。


2014年3月15日(土)

【思ったこと】
140315(土)韓流「ビッグ 〜愛は奇跡〜」(2)ラストシーンとハッピーエンドをめぐる議論

 昨日も述べたように、このドラマは、韓国ドラマ大賞では総合82位、ラブコメ部門で31位と、必ずしも高い評価を得ていない。その理由はおそらく、
  1. キル・ダランとKKJ【外見はユンジュだが魂はキョンジュン】、「身体キョンジュン」が最終話まで寝たきりで終わってしまったこと。
  2. 一度視ただけではラストシーンが分かりにくい。
といった点にあるのではないかと思われる。

 1.に関しては、キル・ダランはなぜもっと、寝たきりになっている「外見キョンジュン・魂ユンジュ」の介護をしなかったのか、なぜもっと早い回復を願わなかったのか、といった問題がある。ドラマの冒頭のほうでは、魂ユンジュはイ・セヨンとの関係疑惑があったり、キル・ダランとなかなか会わなかったり、アメリカに行こうとしていたり、...といった、誠意を疑わせるエピソードがいろいろ出てくるが、回が進むにつれて、それらは別の事情によるものであって、ユンジュは心からキル・ダランとの結婚を望んでいたことが分かってくる。そうなると、いくら、KKJに好意を抱くようになったとしても、魂ユンジュ(身体もユンジュに復帰)と結ばれるべきではないか、そうでない限りは、やっぱり、浮気とか移り気になってしまって、純愛に至らないという考えも出てくるかと思う。

 2.については、じっさい、いくつかの感想サイトで、そのような指摘がなされている。【改行箇所は長谷川のほうで改変。絵文字は省略】
  • 韓流ドラマ 大好きな事務員さん
    何か最後がはてなでした
    二人の魂が元に戻ったと言っていたのに、何でキョンジュンはユンジェの姿
    おまけに、消えるはずの記憶は全部あったのはてな
    終わり方が、イマイチ意味が分からず、残念でした
  • 韓ドラの奇跡
    よくわからないラストでした(^_^;)
    実際の時間は、雨が降ってたのだけどラストシーンはダランの想い出、妄想シーンのような感じでしたね。
    それとも多少、カットだったのかしら。

    とにかく!ダランはキョンジュンと結ばれたんです。
    ずっと、体はユンジェだったけど、魂はキョンジュンだから。なら、キョンジュンで終わって欲しかったわ。

    キョンジュン役のシン・ウォンホ君をもうちょっと、出して欲しかったです。特に最後はキョンジュンと結ばれたのだから。
    まあ、主役はコン・ユ氏なんですけど^^;

    腕時計が見えたので、あれもキョンジュンですよね。顔を見せても良かったのでは。
    その辺りが消化不良の気がします。モヤモヤしてます。
    ツイッター見たらやはり、キョンジュンを見たいと感想が多いようでした。

    コン・ユ氏のドラマなのは承知なんですけどね。このラストで、評価が分かれた作品なんでしょう。
  • Yahoo知恵袋の回答
    私の解釈では、記憶はなくなることなくキョンジュンとダランの2人の姿なんだと思っていました
    現実にはキョンジュンが目の前にいるという設定だけれど、
    ダランの目には一緒に長い時間を過ごした
    "中身はキョンジュン見た目ユンジェ"の姿なだけどいう感じで ちょっと、おとぎ話のような、非現実的な終わり方にしたかったのかなと思います

    ただ、私もラストが少年の姿だと期待していたのですごく残念でした
    そこを見てこそ、愛していた相手は中のキョンジュンだったと思えたと思うので
    ただ現実的なことを考えて、ドラマに長く写っていたのはコンユだったので
    結局長く一緒にいた姿ででてきたのかな、と自分を納得させざるを得ませんでした

    そこはすごく残念ですし、でも役者の立場的にも新人を最終回ラストに持ってくるより
    大物の俳優のコンユを出すほうが、絵的にも、コンユに対してもそうするしかなかったのかなとか
    そこはかなり消化不良です
  • ドラマとFoodとエッセンス

    制作関係者の意図や、脚本家の井沢 満氏がプロから見た目についてのリンクあり。ちなみに、リンク先で井沢氏は、
    脚本家はここが巧みでした。
    最終回、少年が元に戻ってからの姿は、傘に隠していっさい見せないのです。ヒロインの表情を追うだけ。役者の声は、医師の時のまま変えていません。
    むー。なるほどと唸りました。実に上手い処理。
    そして雨も傘も、初回に伏線として見せている用意周到ぶり。少年との最初の出会いがそのまま最終回に持って来られる。鮮やかでした。
    ホン姉妹は、初回から最終回までおそらく細部に至るまで構成を組み立ててから書いているように見受けました。
    というように高く評価しておられた。

 キル・ダランと【魂と身体が合致した】カン・キョンジュンが結ばれることがハッピーエンドであるという前提であれば、私自身も、あのラストはまことに秀逸であると言ってよいのではないかと思う。とはいえ、番組を録画し、かつ、上掲のような種々の議論を拝見したあとでの感想である。放送を一度だけしか視なければ、ラストが、魂キョンジュン(身体ユンジュ)がキル・ダランと約束して分かれるシーン【上掲の写真左側】と、元の身体に戻ったキョンジュンがキル・ダランと再会するシーン【上掲の写真右側】の重ね合わせであることは、服装や天候の違い、あるいは再会後は顔が隠されていることなどには気づきにくいのではないかと思う。

 もっとも、キル・ダランとカン・キョンジュンが結ばれるという形が最良のハッピーエンドであるかどうかについては若干疑問が残る。以下のようなラストでも、よかったのではないか。
  • 【魂と身体が合致した】ユンジュは韓国に戻り、めでたくキル・ダランと結婚。
  • キル・ダランはユンジュと幸せな日々を送っているが、ときたま、【魂と身体が合致した】ユンジュの仕草や懐かしいアイテムからKKJのことを思い出す。
  • キル・ダランと過ごした記憶を完全に失った【魂と身体が合致した】カン・キョンジュンは、1年後、韓国に一時帰国し、雨の日にバスの中で偶然キル・ダランと再会する。
  • バスを降りて1つの傘に入ったキル・ダランとキョンジュンは...【このあとの展開は、含みを残す】
というのが現実的で、むしろ、まるく収まるようにも思えた。

 そういえば、アメリカ映画の「ビッグ」(1988年)も別段、ハッピーエンドというわけではなかった。こちらのあらすじで、
彼を追ったスーザンは「私をおいていかないで!」と涙声で訴えたが、既にジョッシュが“ゾルダー”に願いをかけた後であった。2人は別れを惜しみながらしっかりと抱き合う。懐かしい我が家に返って行ぐジョッシュが、服がだぶだぶになりもとの12歳にもどっていくのを、スーザンはいつまでも見守っていた。
となってるように、別れのシーンでラストとなるのである。

 私自身の結婚生活が30年を超えたせいか、単に歳をとったせいか、最近は、結婚すればハッピーエンドという単純な発想にはついていけなくなってきた。人は誰でも死ぬ運命にあり、いつかは必ず別れなければならない。むしろ、最良の別れ方こそにハッピーエンドを求めるべきかもしれない。そういう点では、私の心が聞こえる?のラストは、「ドンジュとウリの真実の愛の物語」ゆえにハッピーエンドというより、スングム(ポン・マルの祖母、ウリの義理の祖母)がヨンギュに背負われて家に戻る途中に息を引き取るという別れの中にこそ真のハッピーエンドがあったようにも思えてくる。

 なお、今回の「ビッグ」については、いずれ完全版のレンタルDVDを視聴した時点で、あと1回、感想を書く予定。