じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 八重桜と文学部と新緑の半田山。文学部東側の園地では、ウコンザクラとともに、八重桜が見頃を迎えている。10年前の台風23号で倒木の被害に遭っているが、ウコンザクラと異なりまだ若木。


2014年4月16日(水)

【思ったこと】
140416(水)長谷川版「行動分析学入門」第2回(1)行動、刺激を暫定的にどう定義するか(1)

 今回から、第2回目の講義録となります。章立てとしては、まだ第1章の一部であり、構成内容は、

  • 1.行動の原因を明らかにするとは?
    • 1.1. 原因にもいろいろある(原因の複合性、原因はニーズによって変わる)【既出
    • 1.2. 存在の原因と、変化をもたらす原因【既出
      ★★★★★★★★★★ここからが第2回★★★★★★★★★★
    • 1.3 行動、刺激を暫定的にどう定義するか
    • 1.4 予測と制御に役立つ説明を目ざす
    となっています。

     ということで、今回はまず、行動や刺激や環境変化を暫定的にどう定義するのかについてお話しします。「暫定的」と述べたのは、これらの定義は、まさに行動分析学の内容そのものとなるからです。つまり、行動分析学入門の授業が完結した時点で、これらは本格的に定義されたとお考えください。

     さて、前回、私たちが考える「原因」は、存在の原因と、変化をもたらす原因に大別できるとお話ししました。しかし、こういうことを科学的に議論するためには、そもそも「同じ」とか「違う」とはどういうことなのかをしっかりおさえていく必要があります。

     例えば、「あの畑でイノシシが出た」と確認するためには、イノシシと他の動物(熊や鹿など)を区別する必要があります。また、「個体番号01のイノシシが3回、個体番号02のイノシシが1回出現した」という場合には、2頭のイノシシを区別しなければなりません。

     こうした、「同じ」とか「違う」といった区別は、主観的な印象で勝手に決められるものではありません。それではコミュニティの中で正確な情報が伝わらず、共同作業もできません。では絶対的な基準があるかと言えばそれも違います。今述べたイノシシの例でも、イノシシの被害を受けた人の場合には、とにかく、3回プラス1回で合計4回の被害に遭ったということが問題なのであって、それが個体番号01なのか02なのかという区別はさほど重要ではありません。いっぽう、イノシシの生態を観察している動物行動学者が居れば、2頭のイノシシを区別することはきわめて大切です。

     ここでもっと簡単な例として、2枚の10円玉の例を挙げましょう。この2枚は同じでしょうか?違うでしょうか?

     日常生活場面、例えばおつりを受け取る場合とか、自動販売機にコインを挿入する場合は、2枚の10円玉は全く区別されません。ですので、「同じ」10円玉と見なされます。

     ところが、よく見ると、1枚は平成10年、もう1枚は昭和33年発行と書かれてあったとします。こちらの情報によると、10円玉の発行枚数は年によって変わっており、こちらのまとめによると、コインショップでは100円から200円の価値があるそうです。よって、コインマニアにとっては、2枚の10円玉は全く違っていると扱われます。

     要するに、「同じ」とか「違う」というのは、それに関わる人のニーズによって異なるということです。但し、ニーズが異なるといっても、主観ではありません。それぞれのニーズに応じて客観的な判別基準があり、1つの基準のもとでは、「同じ」か「違う」かという判断は全員一致で下されなければなりません。

     「同じ」、「違う」を明確にしておきませんと、「○○という行動が起こった」とか「○○という行動は増えた」というような確認・検証はできず、行動を科学的な分析の対象とすることはできません。

     不定期ながら次回に続く。