じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
岡大本部棟の屋上に昇る太陽。早朝5時29分〜32分頃に撮影。本部棟の左側の山は龍ノ口山。 |
【思ったこと】 140425(金)長谷川版「行動分析学入門」第3回(4)レスポンデント行動とレスポンデント条件づけ 昨日述べたように、動物は、その名の通り、行動することで環境変化に適応します。その行動は以下の2種類に分類できます。
例えば、急激に寒くなると、鳥肌が立ち、震えが起こり、身をかがめ、さらに、涙や鼻水が出ることもあります。 ここで1つお断りしておきますが、通常、環境変化は複数の行動(反応)を同時に引き起こすことがあります。今述べた、急激な寒さとそれによって引き起こされる諸反応との関係などがまさにそれに相当します。しかし、「行動の原因は何か」とか「行動を予測・制御するにはどうすればよいか」という枠組みで分析する場合は、あくまで特定の行動が主人公となります。ですので、「震える」という行動を対象にした場合は「震えるという行動はどういう刺激によって引き起こされるのか」という問題の立て方をすることになります。「寒さがどういう行動を引き起こすのか」という捉え方(=1つの刺激を主人公にして、どういう行動が生じるのかを調べる捉え方)はしていないという点にご留意ください。 レスポンデント行動を体系的に研究したのはロシアの生理学者、パブロフです。但し、「レスポンデント」という名前はスキナーが発明したものであって、パブロフの本にはそのような用語は出てきません。パブロフの研究では、「レスポンデント」に変わって、「無条件反射」、「条件反射」が基本用語となります。 パブロフの研究としてよく知られているのは、イヌの唾液分泌の実験です。イヌに餌を与えると、イヌは唾液を分泌します。この「刺激(餌)→反応(唾液分泌)」は無条件に引き起こされるので「無条件反射」と呼ばれます。行動分析学の用語に置き換えると、 唾液分泌という「レスポンデント行動」は、餌という誘発刺激(無条件刺激)によって引き起こされる(誘発される) と記述されることになります。 パブロフはさらに、「餌を与える際に、ベルまたはメトロノームなどの音を聞かせる」という刺激の同時提示を繰り返すことによって、音を聞かせただけでも唾液が分泌されることを体系的に明らかにしました。言うまでもなく、これが条件反射の理論です。行動分析学の用語に置き換えると、
と記述されるようになります。 上の説明では、実験場面での操作という意味で「同時提示」という言葉を使いましたが、日常場面においても、中性刺激と無条件刺激の同時出現を繰り返し経験することで同じ現象が生じます。 例えば、梅干しの写真を見ただけで唾液が出てくるようになるという条件反射は、梅干しの視覚刺激(もともとは中性刺激)と実際に食べた時の味(無条件刺激)の同時出現、要するに梅干しを食べる時にはその色や形を見ているという体験を繰り返すことによって形成されるようになります。 このほか、緊急地震速報の音声を聞くと身をすくめるとか、車酔いに悩む人が止まっている車の中に入っただけで吐き気を催すとか、ウナギを焼いているニオイが流れてきただけで唾液が出てくるといった現象がこれに相当します。 レスポンデント行動の最大の特徴は、それが特定の誘発刺激(パブロフの理論で言えば「無条件刺激」または「条件刺激」)によって引き起こされるという点です。言い換えれば、レスポンデント行動の原因は、誘発刺激の提示(自然界であれば「誘発刺激の出現」)にあります。誘発刺激が出現するかどうかを把握すればレスポンデント行動が起こるかどうかを予測でき、また、誘発刺激の提示操作、あるいは無条件刺激と中性刺激との同時提示による条件づけ操作を行うことで、レスポンデント行動を制御できます。 レスポンデント行動やレスポンデント条件づけは、人や動物の環境適応の基本機能でもあり、また情動面のコントロールにきわめて重要な役割を果たしていますが、今回のお話の中ではこの程度にとどめさせていただき、次回からは、行動分析学のメインテーマである、オペラント行動やオペラント条件づけのほうに話を移していきたいと思います。 不定期ながら次回に続く。 |