じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
座主川の新緑。座主川沿いの遊歩道は岡大の敷地であり、敷地内全面禁煙適用エリアであるが、4月1日の喫煙所全廃以降、この場所は岡大の敷地外であると、自分の都合のよいように勝手に解釈して喫煙している者を見かけた。もっともその後1ヶ月にわたる説得活動により、最近では、少なくとも日中の違反喫煙は滅多に見かけなくなった。 |
【思ったこと】 140504(日)長谷川版「行動分析学入門」第5回(3)好子出現の随伴性による強化(3)好子の起源と多様性(2)確立操作 「生得性好子」とは、特別の経験を必要とせずに好子になっているようなモノや出来事のことを言いますが、生得性だからといって、いつでもどこでも好子として機能するわけではありません。 例えば、水は、砂漠の旅を続けている人にとっては貴重な好子となりますが、プールでおぼれそうになっている人にとっては好子として機能しません。いくら甘党だと言っても、ケーキバイキングでたらふく食べた後では、お菓子が好子になることはありません。 あるモノや出来事が好子としてどの程度働くかどうかは、直近でどれだけそれを獲得したり接していたのかに大きく依存します。すでに大量に獲得していたり、何度も何度も接していると好子としての機能は低下していきます。これを飽和化(satiation)と呼びます。飽和化の代表例は、以下のようなものです。
飽和化というのは要するに「続けていれば飽きる」ということです。「飽きる」というと何となく悪いことのように見えますが、適応という観点からはきわめて重要です。なぜなら、もし、「飽きる」という機能が無かったら、その動物は、優先順位の高い1つの行動ばかりに執着してしまい【例えば、食べ続けるだけで動かないとか、セックスばかりしていて食事しないとか】、環境に多面的に適応することができなくなってしまうからです。 いっぽう、飽和化とは逆に、長時間入手できなかったり、接したりできなかった時には、そのモノや出来事の好子としての機能は増加します。これを遮断化(deprivation)と呼びます。お腹が減ったり、のどが渇いたりする現象がこれに相当します。 飽和化や遮断化のように、特定のモノや出来事の好子としての力を左右する操作のことは、一般には「確立操作」(establishing operation)と呼ばれます。【「確率」ではなく「確立」ですので、書き間違えないようにしてください。】 なお、確立操作という概念は、ここに述べた好子の確立操作ばかりでなく、後述する嫌子のところでも登場します。また、行動随伴性の基本的な図式において、確立操作という概念を重視している行動分析学者もおられます。 ところで、上記の「飽和化」や「遮断化」は、行動分析学以外の心理学ではしばしば、動機づけのしくみの1つとして解説されています。また、「生活体に特定の行動を起こさせる内部の力」として「動因」という言葉が使われることもあります。 しかし、行動分析学の辞書には、「動機づけ」や「動因」は出てきません。その理由は、以下の通りであると思われます。
このうち2.について、「井戸から水を汲む」という行動を例に挙げて説明すると次のようになります。 まず、干ばつで水が手に入りにくい状態となれば、「井戸から水を汲む」行動は増加します。行動分析学的に言えば、これは、「水を汲む」行動が強化されている現象です。干ばつによって、水という好子に対する遮断化が起これば、水という好子の強化力が増え、その分、水を汲む行動は強化されるようになります。ここで重要なのは、「動因」と呼ばれるような内部の力が増えたために「水を汲む」行動が増えたわけではない、「水を汲む」行動はあくまで、それが強化されているから増えているのだと考えている点です。その証拠に、井戸が涸れてしまえば、水を汲む行動はもはや強化されなくなります。そうなると、そこの住民は、別の場所に井戸を掘るか、山の中の湧き水を探しに行くといった別の行動をとらざるを得ません。そこでもまた、新たな行動のうちのどれが増えるのかは、水という好子を獲得できるかどうか、それによって強化されるのかどうかに依存してきます。「内部の力」を想定していたのでは、どの行動に取って代わるのかは説明できません。 次回に続く。 |