じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
月齢20.6の月と岡大・石庭。 |
【思ったこと】 140519(月)長谷川版「行動分析学入門」第7回(6)好子出現の随伴性による強化(13)消去(3) すでに述べたように、行動が強化されなくなると、その行動は散発的に増加する(消去バーストや自発的回復)ことがあっても、最終的には頻度ゼロの状態に終息していきます。日常用語を使ってわかりやすく言えば、
しかし、消去は、行動を無くしていくだけの働きにとどまるものではありません。
このうち1.は、一般には「試行錯誤」と呼ばれています。辞書によれば、「試行錯誤」は
じっさい、問題集を解きながら数学の勉強をするという場面を思い浮かべてみてください。問題集というのは、正解を出せば○がつけられ得点が増えるいっぽう、不正解の時は×がつけられ得点が与えられません。これによって、正しい理解は得点という好子によって強化され、間違った理解は消去されていくことになります。正解でも不正解でも区別せずに○をつけてしまったら、勉強はちっとも進まないでしょう。 2.のレベルアップというのは、例えば、「四則演算の計算問題を90%正解したら合格」というような練習場面において、第一段階では2桁、第二段階では3桁、第三段階では4桁というように数の桁数を増やして難易度を上げたり、制限時間を短くしたりして、レベルアップを図ることです。こうした方法は、自動車運転の教習やスキー教室のように、複合的なスキルの上達を目ざす訓練の中でごく普通に導入されています。いずれの場合も、それぞれの上達段階において、到達(合格)基準を上回った行動を強化し、下回った行動は消去するという形でレベルアップを目ざしていきます。そのさい、もし、基準を下回った行動が消去されなかったとしたら、いつまでたってもスキルはアップしません。 最後の3.は分化強化、シェイピング(反応形成、shaping)などと呼ばれています。例えば、行動分析学ではしばしば「ネズミがレバーを押す」という実験装置(=スキナー箱Skinner box)が取り上げられます。ウィキペディアに スキナーは、1951年に、米国内外のいくつかの大学にスキナー箱を送るのと同時に、日本の東京大学にはラット用スキナー箱を、慶應義塾大学にはハト用スキナー箱を贈った。 しかし、体重統制や反応形成といったスキナー箱の使用についての基礎知識やオペラント条件付けの知識がまだ浸透していなかったために、動物を入れてもちっとも反応しないが故障しているのではないかという問い合わせがあったという。と記されているように、飼育しているネズミを単にスキナー箱の中に入れたからといって、直ちにレバーを押し始めるわけではありません。上掲にもあるように、「体重統制や反応形成」という手続を踏まなければ、99%のネズミは、箱の中で居眠りを始めるだけで、何ヶ月たってもレバーを押すようにはならないでしょう。 この「体重統制や反応形成」という記述の「体重統制」というのは、要するに、例えば自由摂食時の体重の90%になるまでネズミの給餌を制限して、お腹が空いた状態に至らしめることです。これは実験で使用するペレット状の餌が好子として機能するよう、確立操作を行うことにあたります。 いっぽう「体重統制や反応形成」という記述の「反応形成」という部分が、今回話題に取り上げているシェイピングに相当します。もし、短期間のうちにネズミにレバー押しをさせようと思った時には、通常、以下のような手順でレベルアップをする必要があります。
次回に続く。 |