じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 シャリンバイ(車輪梅)と本部棟。この季節、トベラとともに、大学構内各所で白い花を咲かせている。


2014年5月20日(火)

【思ったこと】
140520(火)長谷川版「行動分析学入門」第7回(7)好子出現の随伴性による強化(14)部分強化と強化スケジュール(1)

 前回までのところで、好子出現の随伴性による強化と、その消去について説明しました。復習をかねてもう一度説明すると、あるオペラント行動が生じた時には
  1. 行動すれば好子が出現するが、行動しなければ好子は出現しない。これにより行動は強化される。
  2. 行動してもしなくても好子は出現しない。これにより、行動は強化されない(=「無強化」)。
という2通りが考えられます。また、1.の段階で強化されていた行動が、2.の段階を経て起こりにくくなった場合は、その行動は消去されたと言います。

 もっとも、現実には、1.の「行動すれば好子が出現する」という確率は100%が約束されているわけではありません。例えば釣りに出かけるという行動は、釣果という好子によって強化されますが、どんな釣名人でも、100パーセント魚が釣れるわけではありません。「行動すれば好子が出現」というのは、一定の確率で出現するという場合を含んで論じられることになります。

 行動に対して好子が100%出現することは「連続強化(continuous reinforcement)」、これに対して、一定の確率で好子が出現することは「部分強化(intermittent reinforcement)」と呼ばれます。なお私は、個人的には「intermittent reinforcement」は「部分強化」ではなく「間欠強化」のほうが妥当な用語だと考えていますが、Googleで検索すると「部分強化 連続強化」は1340万件、「間欠強化 連続強化」は6万3500件となっていて、「部分強化」のほうが圧倒的に普及しているようですので、ここでは「部分強化」と呼ぶことにします。

 部分強化は、操作的には、連続強化と無強化を組み合わせた手続となります。しかし、通常、1回目の行動は好子出現によって強化、2回目は無強化によって消去、3回目も消去、4回目は再び好子が出現したので強化、...というように細分化して分析することはありません。そうではなく、「5回に1回の確率で強化される」、「1回好子が出現したら、2分間経過しないと次の行動は強化されない」というように、「部分的に(間欠的に)強化される」というように記述され、そのあいだの無強化の状態に、いちいち消去があったとか消去バーストが起こったというような捉え方はしません。もちろん、じっさいには、連続強化よりも部分強化のほうが反応数が多いことや、かつ、部分強化のほうが連続強化よりも消去されにくいこと(「部分強化効果」あるいは「the Humphreys effect」())を説明する場合には、消去に言及する必要があるかと思います。
リンク先: Humphreys LG (1939). The effect of random alternation of reinforcement on the acquisition and extinction of conditioned eyelid reactions. Journal of Experimental Psychology, 25, 141-158. にもあるように、部分強化効果を最初に示したとされるこの研究自体は、人間の眼瞼反応についての実験です。当時の学習心理学においては、Hull(1943)の説が影響力を持っており、Hullの説とは矛盾することから特に注目されたようです。


 なお、一般の学習や記憶の心理学では、「部分強化」がそののちの行動にどういう影響を及ぼしたかということが主要な関心事になります。行動分析学の場合は、それも重要ではありますが、むしろ、「部分強化」という条件のもとで、行動がどのように遂行されるのかを分析対象としています。そのさいのシステマティックな分析ツールが、強化スケジュールであり、累積記録装置ということになります。

次回に続く。