じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 5月24日の朝はよく晴れ、龍ノ口山からの日の出を眺めることができた。実際にズームで撮ってみると、太陽の上縁部は尾根筋の木々の間から出ており、皆既日食の前後のダイヤモンドリングや「ダイヤモンド富士」現象のような閃光は観られなかった。



2014年5月24日(土)

【思ったこと】
140524(土)長谷川版「行動分析学入門」第7回(11)好子出現の随伴性による強化(18)部分強化と強化スケジュール(5)変比率スケジュール

 昨日取り上げた「定比率スケジュール(Fixed Ratio Schedule、「FR」と略されることあり)」は、実験場面であれば例えば「レバーを10回押すごとにペレット餌が1粒提示される」というように、好子出現に必要な行動の回数(量)が固定されていました。

 これに対して、好子出現に必要な行動の回数(量)がそのつど不定であるスケジュールのことを「変比率スケジュール(Variable ratio schedule、「VR」と略されることあり)」と呼びます。変比率スケジュールで唯一固定されているのは、好子出現のために平均何回の行動が必要であるかという条件だけです。「定比率スケジュール(FR schedule)」で「FR10」と記述された場合は、10回行動するごとに必ず1回ずつ好子が出現しますが、「変比率スケジュール(VR schedule)」で「VR10」と記述された場合は、平均して10回の割合で好子が出現するものの、ある時は1回、ある時は20回、というように次の好子獲得に要する回数は定まっていません()。
 数学的に言えば、「VR10」とは、毎回の行動が1/10の確率で強化されるという意味になります。コンピュータで0〜9の数をランダムに発生させ「1」という数字が記されていた回に限って好子を出現させれば、完全にランダムな回数で強化しているということになります。
 もっとも、変比率スケジュールは定義上は「必要な行動の回数が不定である」と言っているだけで、そこまでのランダム性は要求していません。好子出現に必要は行動回数が、例えば「1回、19回、1回、19回、1回、1回、19回、1回、19回、19回、...」であったとしても、VR10の変比率スケジュールということになります。但し、この条件では、1回行動して好子が出現しなかった時は、次に必要な行動回数は残り18回であるということが分かってしまいますので、完璧に不定とは言えません。といって、完全にランダムな系列にしてしまうと、1000回行動しても強化されない確率も僅かながらありうるため、実験セッション中一度も好子が出現せずに行動が消去されてしまう恐れも出てきます。実際の実験場面では、回数の確率分布に基づいて、好子出現に必要な回数が極端に大きくならないような範囲で何通りかに設定しておいて、それをランダムに割り当てるという手法がとられているようです。(例えば、「1回、2回、4回、8回、16回、29回」の6通りの回数条件を等確率でランダムに選べば平均10回になります。)


 日常場面で変比率スケジュールは、
  • マグロ1本釣りの漁師さんが、毎日船を出す。マグロが釣れるかどうかは不定。
  • パチンコで、毎回打つ玉がチューリップの穴に入るかどうかは不定。
  • 訪問販売のセールスマンが、契約をとれるかどうかは不定
  • 野球で、打球がゴロになるかヒットになるかどうかは不定。
などに相当します。

 上記いずれの場合でも、好子がどれだけ出現するかどうかは、まずは行動の量に依存します。全く行動しなければ好子は出現しませんので、これらが行動の回数(量)によって規定された比率スケジュールであることは間違いありません。もっとも、それが、平均どのくらいの回数で強化されるのかということは、行為者の技能にも関係してきます。つまり、日常場面での変比率スケジュールでは、いくら頑張って行動しても成果が得られないことはあり得ます。しかし、技能を磨くことで、好子出現に必要な平均回数(VRの値)を小さくし、好子獲得の確率を高めることは可能です。

 変比率スケジュールのもとでの行動は、定比率スケジュールのもとでの行動に比べて活発であり、しばしば熱中の原因になります。多くの娯楽、ギャンブル、スポーツなどでは、変比率スケジュールが巧妙に仕掛けられています。

 じっさいのところ、「玉を10回打つごとに必ず1回チューリップの穴に入る」というようなパチンコは単純作業と同等であって何の楽しみも生まれません。また、強い人が必ず勝つことが予想できるようなスポーツであったらわざわざ対戦する意味がありません。技能を前提としつつも、ある程度の意外性があってこそ観戦の楽しみが生まれるというものです。

 変比率スケジュールのもとでなぜ活発な行動が起こるのかについてはいくつかの説明が可能です。その一因としては、人間であっても動物であっても、食べ物の獲得機会は不定であること、それゆえ、変比率スケジュールで強化されやすい動物のほうが適応的であった可能性が考えられます。もっともそうであるとすると、一日の大半を草を食べたり反芻に費やしている草食性動物の場合は、定比率スケジュールのほうが活発に行動する可能性がありますが、そのような比較研究が行われているのかどうかは不明です。

次回に続く。