じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



05月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

 5月29日の岡山は大陸からの高気圧帯に覆われてよく晴れ、日照時間は11.4時間、最高気温は29℃となった、もっとも、黄砂PM2.5による大気汚染ですっきりした青空にはのぞめず、その分、あざやかな夕焼けが見られた。
 なお、この日の午後1時の全国の気温ランキングでは、気温の高い方のTop5と低い方のTop5がいずれも北海道内で観測されるという珍現象が起こった。オホーツク海とその周辺の内陸部ではよく晴れ30℃以上の高温になったのに対して、すぐ南の太平洋側は10℃以下の寒さ。釧網本線で32.0℃の網走から9.0℃の釧路まで移動する時には、熱中症対策と防寒対策の両方が必要と思われる。


2014年5月29日(木)

【思ったこと】
140529(木)長谷川版「行動分析学入門」第7回(16)好子出現の随伴性による強化(23)部分強化と強化スケジュール(10)いろいろな強化スケジュール(3)変時隔スケジュール(1)

 定時隔スケジュール(Fixed Interval schedule、「FIスケジュール」と略す)は
  • 前回の好子が出現したあと、一定時間以内に行動しても全く強化されない(次の好子が出現する確率はゼロ)
  • 前回の好子が出現したあと、一定時間が経過したあとの最初の行動は100%強化される(次の好子が出現する確率は100%)
として定義されていましたが、上記の一定時間を、平均値mでいろいろな値に変化するtに書き換えたスケジュールのことを、「変時隔スケジュール(Variable Interval schedule)」と呼びます。また、それらの時間間隔の平均値をもって、「VI 60秒」、「VI 5分」というように表します。「VI 60秒」というのは、
  • 次に強化可能(=好子出現)となるまでの時間間隔が5秒、10秒、20秒、60秒、100秒、110秒のいずれかであり
  • それらの時間間隔がランダムに配置されており、
  • 平均すると60秒になる
という意味です。

 強化スケジュール研究の元祖『Ferster, C. B., & Skinner, B. F. (1957). Schedules of reinforcement. 』の第6章では、VIスケジュールは
A variable interval (VI) schedule is one in which the intervals between reinforcements vary in a random or nearly random order. The VI schedule is designed to produce a constant rate by not permitting any feature of the bird's behavior to acquire discriminative properties.
変時隔(VI)スケジュールとは、強化と強化の間の時間間隔が、ランダムまたはランダムに近い順で変化するように配置されたスケジュールのことである。VIスケジュールでは、(自分がどれだけ行動したのか、あるいはどれだけ時間が経過したのか)という手がかりを利用することができない。これをもって、安定した反応速度(反応率)が生じることを想定している。【訳は長谷川による】
というように定義されています。

 もっとも1957年当時の実験装置はコンピュータが使われていませんでしたので、さまざまな時間間隔をランダムに配置するということは限界があったと思われます。ちなみに私が卒論実験をしていた1970年代半ばには、使用済みの映画フィルムをリールにはめて動かし()、あらかじめランダムにパンチした穴の配列で変時隔や変比率スケジュールの制御をしていました(「フィルムリーダー」と呼んでいたと記憶しています)。
]フィルムリーダーをタイマーと組み合わせて動かせば変時隔スケジュール、反応が起こるたびに1コマ分ずつ動かせば変比率スケジュールの制御ができます。

 現在では、パソコンを使って簡単に乱数を発生させることができますので、もはやフィルムリーダーは要りませんが、「ランダム」という概念には注意が必要です。例えば、ひとくちに「VI 60秒」といっても、
  1. 時間間隔の分布が矩形分布になっている場合(「20秒、40秒、60秒、80秒、100秒」のいずれかの時間間隔が等頻度、かつランダムに並んでいる場合。
    具体的な並び順は、40、80、20、100、80、20、60、100、60、40、...というようなイメージで平均すると60になる
  2. 時間間隔の分布が指数分布になっている場合(おおざっぱですが、「10秒、20秒、30秒、60秒、90秒、180秒...」というように、短い時間間隔は頻繁に出現し、長い時間間隔がたまに出現する)
    具体的な並び順は、10、20、10、90、10、30、180、60、10、10、90、...というようなイメージで、平均すると60になる。
では、行動に及ぼす影響が違ってくると考えられます。ちなみに、日常場面での待ち時間2.に近い分布となりますので、日常行動のシミュレーションをするのであれば2.の設定をするべきかと思います。

次回に続く。