じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 5月31日の岡山は、高濃度のPM2.5と黄砂に覆われたもののよく晴れ、日中の最高気温は33.2℃まで上がった。暑さが滞留しやすいという岡山特有の気候により、夜の20時と21時の気温はそれぞれ、29.0℃と27.5℃となり【出典はこちら】、栄誉ある?暑さ日本一に輝いた。
 写真下は、翌6月1日の日の出。さらに暑くなりそうな気配。


2014年5月31日(土)

【思ったこと】
140531(土)長谷川版「行動分析学入門」第7回(18)好子出現の随伴性による強化(25)部分強化と強化スケジュール(12)いろいろな強化スケジュール(5)FTスケジュールとVTスケジュール

 今回からは、FTスケジュールとVTスケジュールを取り上げます。
  • FTスケジュール(Fixed Time schedule、定時スケジュール):
    行動と無関係に一定の時間間隔で好子が出現する。時間間隔の長さは「FT 5min」(5分ごと)、「FT30min」(30分ごと)のように表す。「固定時隔供給スケジュール」と呼べば分かりやすいかも。
  • VTスケジュール(Variable Time schedule、変時スケジュール):
    行動と無関係に、変動する時間間隔により好子が出現する。平均の時間間隔の長さは「VT 5min」(5分ごと)、「VT30min」(30分ごと)のように表す。「変動時隔供給スケジュール」と呼べば分かりやすいかも。
 さて、5月22日のところでは、強化スケジュールを「1回ごとの行動をどのような確率で強化するか(ここでは、好子出現の随伴性のみを扱っていますので、「毎回の行動の直後にどのくらいの大きさの確率で好子を提示するのか」と同義になります)を定めたプログラム(手順書)のようなものである」と述べました。ところが、上述のFTやVTでは「行動と無関係に好子が出現する」と定義されていますので、果たしてこれらが強化スケジュールと呼べるのかどうかは疑わしくなってきます。しかし、FTやVTは、日常生活行動全般、とりわけ選択行動において、また、迷信行動の形成や問題行動の解消に重要な役割を果たしています。

 まず、以下のような具体例を挙げてみましょう。
  • FTスケジュール:
    • 鉄道マニアが駅のホームに立っていたら、20分ごとに新型特急列車が通過した。
    • 公園のベンチに座っていたら、噴水が10分おきに高く吹き上げた。
  • VTスケジュール:
    • しし座流星群見物のため近隣の丘の上で仰向けに寝ていたら、1時間に30個の流星を眺めることができた。
    • 公園の池のほとりのベンチに座っていたら、時々、カワセミが魚をとる様子を観察することができた。
 これらの例に共通して言えることは、まず、これらの出来事は、行動とは無関係に生じているということです。当事者がいくら頑張ったとしても出現確率が増えることはありませんので、比率スケジュールではないことが分かります。また、時隔スケジュールであれば、ある程度時間が経過した後の最初の行動は高確率で強化されますが、上記の例では、時間経過後に何かをしてもしなくても出来事が生じることに変わりはありません。

 もっとも、いずれの場合も、巨視的に見れば、つまり、特定の場所における一定時間の体験全体を好子出現と見なすのであれば、
  • 駅に出かけると、新型特急列車という好子がFTスケジュールにより出現
  • 公園に出かけると、噴水という好子がFTスケジュールにより出現
  • 近隣の丘に登ると、流星がVTスケジュールで出現
  • 公園に出かけると、カワセミの魚穫りがVTスケジュールで出点
というように、いずれも、好子出現の随伴性によって強化されていることが分かります。

 要するに、ある区切られた時間、文脈の中で行動と結果の関係を微視的に捉えた場合には、「行動と無関係に好子が出現する」ということになりますが、より巨視的にとらえれば、「特定の時間に特定の場所に移動する」という行動と、「その時間・場所に限って好子が出現しやすい」という結果との関係は、好子出現の随伴性によって強化されていると言うことができます。これは「随伴性の入れ子構造」のところで後述します。

 ところで、いま、微視的に捉えた場合、「FTやVTでは、行動と無関係に好子が出現する」と述べましたが、これはあくまで、強化スケジュールの提供者側が、そのように設定しているというだけの話です。行動する側は、事前にそのような情報を得ていませんから、実際の体験の中で行動を変えていきます。

 例えば、流れ星の観察に出かけた時に、「お星さん、流れて!」と叫んだとします。もちろん、流れ星は、そのような行動とは無関係に出現しますが、何度か叫ぶうちには、「お星さん、流れて!」の直後に星が流れるということも無いとは限りません。そうなると、「お星さん、流れて!」と叫ぶ行動は偶然的に部分強化され、迷信行動が形成されることになります。ハトを被験体とした実験研究においても、実際にはキーをつついてもつつかなくてもFTやVTで勝手に餌が出てくるという状況のもとで、キーをつつくという迷信行動が生じることが広く知られています。いったん、キーつつきが頻繁に生じるようになりますと、行動とは無関係に提示されているはずの餌がキーツつつきの直後に偶然に提示されることが起こりやすくなり、結果的に、「迷信行動」は部分強化によって継続していくことになります。

 このほか、FTスケジュールは行動障害の改善にも有効であると言われています。奥田(2012、191頁〜)には、FTスケジュールで頻繁にお菓子を提供するという方法をとることで、暴力的な行動が起こりにくくなったというような事例が紹介されています。

 もとの話題に戻りますが、FTスケジュールやVTスケジュールは、日常生活における機会選択を考える上で重要です。自然現象においても、人間の社会生活場面においても、自分の行動と無関係に次々と生じる出来事は溢れるほどあります。そういう場合、個々の場面でどう行動するかという以前に、どこに移動するのか、何を買うのか、どういう進路に進むのか、といった選択が重要になってきます。選択した機会が、VRスケジュールなのかVTスケジュールなのかはさほど問題にならない場合もあり得ます。【バネをはじいて玉を打つパチンコはVRスケジュールですが、ダイヤルを回すと自動的に玉が出てくるようなパチンコや、スロットマシンの操作などはVTスケジュールに近い。】 こうした選択に関わる問題は、次回に述べる並立スケジュール(Concurrent schedules)や並立連鎖スケジュール(Concurrent-chain schedules)と関係しています。

次回に続く。