じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 2014年4月1日の敷地内全面禁煙施行後、それまで指定喫煙所に通っていた喫煙者の一部が、キャンパス外の路上に出て喫煙し、このことについて近隣の住民から苦情が寄せられていると聞いている。その対策の一環として、特に苦情の多い北西側(岡山理大入り口近く)のフェンス沿いには「この付近での喫煙はご遠慮ください 岡山大学」という掲示が数メートルおきに貼られていた。

 じっさい、喫煙者の中には、自分が副流煙の害を垂れ流していることを棚に上げて、「大学が喫煙所を廃止したから、しょうが無いので敷地外で喫煙している。文句があるなら大学に言え」と居直って喫煙を続けている人もいるとか。
 しかし、「敷地外で喫煙するのは当然の権利だ」と主張するのは本質的に間違っている。全国の自治体と比較すると岡山市の喫煙対策は決して十分とは言えないが、それでも、岡山市美しいまちづくり,快適なまちづくり条例(岡山市条例30号、平成19年4月1日施行)の第4条3項において「市民等は,路上喫煙に当たっては,他人の身体及び財産に影響又は被害を与えないように配慮する責務を有する。」と定めており、近隣住民から苦情が出されているような敷地外喫煙は、明らかに条例違反である。
 とにかく、自宅を出てから帰宅するまでは一度も喫煙しないこと、授業時間帯や勤務時間帯には一度も喫煙しなくても禁断症状が出ないように、自分自身でニコチン依存から脱却をしていただくほかはない。 大学周辺での敷地外喫煙があまりにも深刻になった場合は、近隣の町内会とも協議し、大学周辺を条例上の「路上喫煙制限区域」に指定していただくよう働きかける必要があると思う。

※「喫煙対策WG検討会への提案をご覧ください。



2014年6月2日(月)

【思ったこと】
140602(月)長谷川版「行動分析学入門」第8回(1)好子出現の随伴性による強化(27)そのほかの好子出現のスタイル(1)好子出現の遅延

 これまで述べてきた
  • 好子出現の随伴性による強化
  • それが中止されることによる「消去」
  • 部分強化の手順を定めた強化スケジュール
においては、いずれも、オペラント行動とその直後の結果との関係に注意が向けられていました。しかし、オペラント行動は、それ以外のスタイルで出現する結果によっても影響を受けます。ここでは、こちらの考察に基づいて、以下の3点について論じることにしたいと思います。但し、以下の1.から3.のうち、2.と3.は行動分析学の入門書では殆ど取り上げられていません。必ずしも定説があるわけではない点にご留意ください。
  1. 好子出現の遅延
  2. 同時体験型、スパイラル型の随伴性
  3. 入れ子構造型の随伴性
 まず1.ですが、通常、人間以外の動物では、特殊な学習()を除いて、行動が強化されるためには、おおむね、60秒以内に好子が出現することが必要であると考えられています。これを「60秒ルール」と呼びます。但し、「60秒」というのはおおざっぱな数字であって、59秒ならセーフ、61秒はダメだという根拠はどこにもなく、便宜上、「だいたいそんなものですよ」程度の基準であるとお考えください。
]ラットでは、摂取した食物(あるいは飲み物)とその結果(急性食中毒によるムカつきなどの不快症状)との間に6時間、時には24時間の遅延があっても、その食物(飲み物)に含まれている味やニオイを避ける学習ができます。これを食物嫌悪条件づけ(Food aversion conditioning)と言います。但し、この条件づけは、オペラントではなくレスポンデント条件づけであると考えられています。
 しかし、実際には、オペラント条件づけにおいても、かなりの時間が経過した後に好子が出現しても、行動が強化されることがあります。これを可能にするための「しかけ」は何通りかあるようです。

 まず、行動が連鎖状に生起し、遅延の橋渡しをするという「しかけ」です。例えば、ネズミを被験体として、
  1. まず、実験箱の中のペダルを押すと天井からヒモが降りてくる
  2. 次に、つるされたヒモを引いて、底面に収納されていたハシゴを取り出す
  3. 最後に、ハシゴを高台にセットして、高台に登ると餌が貰える
というような3段階の曲芸をさせることはそれほど困難ではありません。この場合、一番目の「ペダルを押す」という行動と、最後の餌の提示の間には数分以上の遅延があります。にも関わらずこのような曲芸ができるのは、

ペダル押し→(天井からヒモ)→ヒモを引く→(ハシゴ出現)→ハシゴをセットして高台に登る→(餌出現)

というように行動が連鎖状になっていて、それぞれの行動の直後には(  )で示すような結果(習得性好子)が伴っていて、全体の行動を強化していると考えることができます。ちなみに、もしこのような曲芸をさせようと思ったら、実際の連鎖とは逆順、つまり、
  • まずは、(すでにセットされた)ハシゴに登って高台で餌を受け取る訓練
  • 次に、ハシゴをセットする行動の訓練
  • 次にヒモを引いてハシゴを出現させる訓練
  • 最後にペダルを押してヒモを出現させる訓練
というように、おおもとの好子である餌に近いほうの行動から連鎖を作っていくことが有効です。

 人間の場合ももちろん、一連の行動連鎖をつくることはできますが、動物と一番異なるのは、連鎖の一部または全部をことばで代用できるという点です。つまり、人間であれば、個々の段階をいちいち訓練しなくても「ペダルを押してヒモを取り出し、そのヒモを引いてハシゴを取り出し、そのハシゴに登って高台に行けば報酬が貰えます」と言語的に表現するだけで、その手順に従って報酬を獲得することができます。

 人間はさらに、はるか先の目標達成に向けて努力することができます。もっとも、「目標達成」というのはまだ一度も経験していない「形式上の好子」に過ぎません。また、単に「こういう行動をすれば、やがて○○という結果が得られます」と言葉で表現するだけでは、なかなか実行することができません。下記の例:
  • 毎日30分間、英会話の練習をすれば、1年後には英語がぺらぺらになる
  • 毎日3時間、この参考書で受験勉強すれば、1年後には○○大学に合格できる。
  • 毎日30分間散歩をすれば、1年後にはスリムな体型になれる。
はいずれも、毎日行動と1年後の結果を言語的に記したものですが、これを紙に書いて壁に貼り付けたとしてもそれだけで行動を持続させることはできません。しっかりと強化するためには、目標達成の度合いを目に見えるように具体化するとともに、日々の行動に付加的な好子を随伴させる必要があります。これについては、いずれ、「ルール支配行動」のところで詳しく説明する予定です。

次回に続く。