じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 高松地方気象台は6月3日、「四国地方が梅雨入りしたとみられる」と発表した。平年(6月5日ごろ)より2日早く、昨年(5月27日ごろ)より7日遅い梅雨入りであるという。四国に近い岡山でも、だいぶ梅雨らしい空になってきた。写真は日の出直後の写真を6月1日から順に並べたもの。黄砂の空から梅雨空への推移が見て取れる。なお、この梅雨空のおかげで、岡山に滞留していたPM2.5の大気汚染もかなり解消した。黄砂のほうはまだ若干残っており、6月4日の降り始めは茶色い雨になるかもしれない。



2014年6月3日(火)

【思ったこと】
140603(火)長谷川版「行動分析学入門」第8回(2)好子出現の随伴性による強化(28)そのほかの好子出現のスタイル(2)同時体験型、スパイラル型の随伴性

 今回は、オペラント行動と好子が同時に体験されたり、スパイラル型に行動が変容するという事例を取り上げます。この議論は、主としてこちらの考察に基づくものですが、行動分析学の入門書では殆ど取り上げられていないように思います。また、必ずしも定説化されていないという点にご留意ください。

 まず、具体例としては、
  1. ピアノを弾くという行動は、弾いた時に流れるメロディによって強化されている。鍵盤を1回叩いた直後の音によって強化されているわけではない。
  2. ジョギングを楽しむ行動は、体を動かすこと自体に伴って生じる感覚刺激が好子となっている場合もあれば、ジョギングの最中に目に入ってくる風景が好子となっている場合もある。いずれの好子もジョギングと同時に体験されている。
  3. ネズミが回転籠で輪回しをする行動は、輪回し自体がもたらす諸刺激(おそらく、動くことによる感覚刺激)によって強化されている。
などを挙げることができます。
 これらの事例では、行動の直後に好子が出現しているわけではなく、行動と好子は一体化して体験されていきます。そして、行動と好子の織りなすスパイラルが、行動を増やしたり、上達させたりしていきます。以下の図は、ピアノの演奏における行動と好子とのスパイラルを、「鐘をつく→鐘の音が鳴る」という単線型の随伴性と比較したものです。【出典はこちらの図1】

 要するに、鐘をつくという行動であれば、その直後に鳴り響く鐘の音が好子となって強化されますが、ピアノの演奏の場合は、一定時間続けられる演奏行動と、その時間内に流れるメロディーのスパイラルが行動を強化しているのではないかということです。同じことは、ジョギングの最中の諸刺激についても、ネズミの輪回しについても言えます。

 ここで留意すべき点が4つあります。
  • 第一に、ピアノ演奏、ジョギング、輪回しいずれにおいても、行動しなければ好子は出現しないという点です。
  • 第二に、好子出現によって行動が増えるという、「好子出現の随伴性による強化」という関係は保たれています。
  • 第三に、ピアノ演奏、ジョギング、輪回しいずれにおいても、好子の出現(提示)を操作することが可能です。
    • ピアノ演奏の場合:(電動ピアノであれば)音が出なくなるようにできる、調律を細工して変な音が出るようにする、鍵盤を重くする、...)
    • ジョギングの場合:(体の動きにともなう感覚刺激自体が好子である場合は)足におもりをつける、坂道の多いコースに変える、...)、(途中目に入ってくる景色が好子である場合は)夜に走った場合と比較する、トラックを周回するコースに変更する、...)
    • ネズミの輪回しの場合:回転籠に重しをつけて回りにくくする、...
  • 第四に、行動機会の選択肢となりうる。今からピアノを弾くか、ジョギングに出かけるか、あるいは料理をするか、テレビを視るか、...というような選択
 けっきょく、これらの事例は、行動と好子出現との関係を、微視的に捉えるか、巨視的に捉えるかという立場に関係していきます。
  • 微視的な立場では、1回ごとの反応とその直後に出現する好子との関係、さらには、反応と反応の間の時間間隔、刺激と刺激の間の時間間隔などが詳細に分析されます。
  • いっぽう、巨視的な立場では、上に述べたスパイラル型の随伴性、選択場面における行動の優先順位、ひとまとまりの行動と別のひとまとまりの行動との関係、行動随伴性の入れ子構造などが分析対象となるものと思われます。
 巨視的な立場は、人間の日常生活行動を分析する上できわめて重要です()。特に、これから先の行動機会を選択する場面においては、巨視的な立場をとらないとうまく予測や説明ができない事例がたくさんあります。【例えば、カーネマンが説いているピークエンドの法則など。】
] 動物行動においても、巨視的な立場でないとうまく説明できない事例があります。例えば、約50年前に提唱されたプレマックの原理(プリマックの原理、Premack Principle)の元になった実験は、ネズミにおいて、「輪回し行動」と「水飲み行動」という2つの行動の一方が他方の行動を強化し、かつ、どちらがどちらを強化するのかが条件によって変わるといった内容でした。この場合、「輪回し」と「水飲み」は「1回ごとの反応と直後の好子」という関係ではなくて、一定時間継続する行動の関係であり、巨視的な関係となっています。


次回に続く。