じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 昨日に続いて月の写真。6月13日は満月となり(13時11分)、またその2時間後の15時08分には月の赤緯が最南となった。一年中で最も低い位置(仰角)にある満月。これによって、月を背景にして地上の低い位置にある事物とコラボになるような写真が撮りやすくなった。【月が空の高い位置にあると一緒に撮ることはできない。】
  • 写真左:満月と月見草(但し、コマツヨイグサ)
  • 写真右:満月と「岡大観音」




2014年6月13日(金)

【思ったこと】
140613(金)長谷川版「行動分析学入門」第9回(3)好子出現の随伴性による強化(36)刺激弁別(3)レスポンデント行動との違い

 前回までに述べてきた「刺激弁別」というのは、一口で言えば「違いが分かる」ということです。ちなみに、ここではオペラント行動における弁別を取り上げていますが、弁別自体は、レスポンデント行動でも起こります。

 例えば、パブロフのイヌの条件づけの実験において、メトロノームのチクタク音と餌を同時に提示したとします。
  • まずは、100拍のテンポと同時に餌を提示するという操作を繰り返すと、イヌはメトロノームの100拍音だけを提示した条件でも唾液を出すようになります。
  • 次に、60拍や150拍のテンポの音を出します。当初は、これらの音に対しても唾液が分泌されます【これは「刺激般化」と呼ばれます】。
  • そこで、
    • 100拍のテンポの音と餌を同時に提示
    • 60拍、または150拍のテンポの音が出たときは餌を与えない
    という操作を繰り返します。
  • 十分な訓練を行うと、イヌは、音だけを提示するという条件のもとで、100拍の時だけ唾液を分泌し、60拍や150拍の時は唾液を分泌しなくなります。
これが、レスポンデント行動づけにおける弁別です。

 ここで留意すべきなのは、レスポンデント行動における弁別は、条件刺激についての弁別であるという点です。ですので、当然、その刺激は行動を誘発する力を持っています。上記で100拍のテンポの音が提示された時には、唾液は自動的に誘発されます。また、無条件刺激や条件刺激が存在しないもとで、唾液分泌が勝手に自発されることはありません。【厳密に言うと、口の中を湿らす程度の唾液分泌はあります。また人間の場合、口内の筋肉で唾液腺を圧迫して、オペラント的にツバを出すことはできます。】

 いっぽう、オペラント行動は、弁別刺激が無くても自発されるということが基本的特徴となっています。すでに挙げた「青信号が提示されたら横断歩道を渡る」という行動の場合、青信号という弁別刺激は「渡る」という行動の手がかりになっていますが、「渡る」という行動を誘発しているわけではありません。青信号が提示された時、それに吸い寄せられるように勝手に動いてしまうというならばレスポンデント行動ですが、それはキョンシーか何かの物語だけの話です。実際は、横断歩道を渡るという行動は、信号機が壊れている時でも自発されます。また、車が1台も通っていないような道路では、信号が赤でも、青に変わる前に渡る人もいます。

 前回挙げた
  1. 朝起きたあと、時計を弁別刺激として、朝食や出かける支度をする。
  2. 運行時刻表や遅延表示を手がかりにバスを待つ。
  3. 職場のビルに入ってエレベーターのボタンを押す。
  4. 外回りのために、空車表示のあるタクシーを、手を挙げて止める。
  5. 昼食のさい、暖簾(のれん)のかかったお店に入る。【暖簾がかかっていないお店は準備中】
  6. 夜、道路の反対側のお店で買い物をする時、そのお店の店内が照明されているか【たぶん営業中】、真っ暗か【閉店】を見極める。
といった例においても、それぞれ、
  1. 時計が無くても、出かける支度はできます。
  2. 時刻表が破れていても、バスを待つことはできます(但し、一日中待っても来ないかもしれません)
  3. エレベーターのボタン自体はどれでも押せます。但し、目的階に行かれるとは限りません。
  4. タクシーが近づいた時に手を挙げること自体はできます。但し、賃走中であれば止まってくれません。
  5. 暖簾がかかっていなくても、お店に入ることはできます。但し、まだ準備中なので食事はできません。【まれに、特別の厚意で作ってもらえることはできます。】
  6. お店が真っ暗でも、お店の前まで歩いていくことはできます。
というように、オペラント行動の自発自体は可能となっています。要するに、あくまで、弁別刺激は「行動の手がかり」ですから、行動生起にゼッタイに必要という刺激ではありません。しかし、それを利用したほうが好子出現の確率を高めるという点で適応的と言えます。また、現代社会では、法律や慣習で形成された弁別刺激がしっかりと利用されないと、大混乱が起こってしまいます。

 次回に続く。