じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 火曜日午前は別の学部で分担授業があった。写真は、その学部の教室にあった資料提示装置。私の関心事はHDMI端子からのプロジェクター投影ができるかどうかという点にあった。端子はついていたが(赤い円内)、残念ながら、プロジェクターとの間をつなぐケーブルが存在せず、実質的に機能していないことが分かった。【10月6日の日記参照】


2014年10月14日(火)

【思ったこと】
141014(火)選択行動に関する実験論文(1)アイエンガーたちのアナグラム実験(1)

 後期の授業では選択行動に関する話題を取り上げている。そのなかで10編ほど、古典的な実験論文を引用する予定であるが、いずれも、いくつかの問題点があり、結論部分を鵜呑みにするのは危険であるように思う。ということで、不定期連載で、各論文の問題点を指摘していきたいと思う。

 最初に取り上げるのは、アイエンガーたちの

Iyengar, S. S., & Lepper, M.R.(1989). Rethinking the Value of Choice: A Cultural Perspective on Intrinsic Motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 76, 349-366.

という論文。これは、アイエンガーのTEDのプレゼン、

Sheena Iyengar(2010).The art of choosing.

でもグラフ付きで紹介されている。

 この実験は、サンフランシスコの日本人街にある学校で行われ、参加者は7〜9歳になる白人系と東アジア系の子どもたちであった。彼らはそれぞれ、3つのグループにランダムに分けられ、いずれも6つのジャンル(Family、Home、Animals、Party、Food、San Francisco)のアナグラムのカードの山のうち、いずれか1つの山のカードを使ってアナグラムを解いた。また解答に使用するマーカーペンは6種類あり、そのうちの1本が使用された。

 3つのグループのうち、「Self群」のグループに配属された子どもたちはジャンルもペンも自分で好きなものを選ぶことができた。いっぽう、「Miss Smith群」の子どもたちは、スミスさんが指定したジャンルとペンでアナグラムを解いた。さらに「Mother群」は、お母さんが選んでくれたとされる【←実際はウソだが、そう思い込ませるような仕掛けがある】ジャンルとペンでアナグラムを解いた。なお、3つのグループでジャンルやペンの違いが影響を与えないよう、yokedデザインが用いられ、カウンターバランスがとられた。

 実験の結果、白人系の子どもたちのアナグラム正解数は、

「Self群」>「Miss Smith群」≒「Mother群」

であったが、東アジア系の子どもたちの場合は、

「Mother群」>「Self群」>「Miss Smith群」

という差があり、文化差が反映したのではないかという結論になっていた。なお、TEDのプレゼンでは言及されていないが、オリジナルの実験論文では、これと別に、実験の「合間」【←本当はウソ】の自由時間にどれだけアナグラムで遊んだのかという比較もなされ、

アナグラムで遊んだ時間の長さにも上記と同様の差が見られていた。

次回に続く。