じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 岡山では月曜日もまたまた雨となった。1日の合計雨量は17.5ミリ。これで、4月1日から20日までの20日間のうち0.5ミリ以上の雨が降った回数は15回、75%となった。また、20日までの積算降水量は144.0ミリとなり、残り10日間を残している時点ですでに平年値92.3ミリを大幅に上回っている(156%)。

 写真は
  • 時計台前の水たまり
  • 雨で洗い落とされたアメリカフウの雄花
  • 水たまりに映る新緑の楠



2015年04月20日(月)



【思ったこと】

日本一パンを食べる都市が京都である理由

 夕食時、

TBS世にも不思議なランキングなんで?なんで?なんで?

の一部を視た。ウィキペディアによれば、この番組は、
 2014年10月12日に『スパニチ!!』枠で放送し、2015年1月2日にも放送された『世にも不思議なランキングSHOW なんでランクインしたんですか?』(よにもふしぎなランキングショー なんでランクインしたんですか?)をレギュラー化したもので、番組はタカアンドトシがメインMCを務め、毎回あるテーマに沿ったランキングを基に、それがなぜランク入りしたのかを追求する情報番組である。
とあった。

 この記念すべきレギュラー化の最初の話題は、

(1)エッ!なんで?和食の町【京都】が日本一パンを食べる!?

であった。まず、その根拠であるが、念のためネットで調べたところ、総務省統計局の、

家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(平成24年(2012年)〜26年(2014年)平均)

により詳しいデータが載せられており、そのTop10は
パン パン 食パン 食パン 他のパン 他のパン
-<金 額>- -<数量: g>- -<金 額>- -<数量: g>- -<金 額>- -<数量: g>-
全国 28,489 全国 44,887 全国 8,589 全国 19,552 全国 19,900 全国 21,494
神戸市 37,399 京都市 62,599 神戸市 12,404 神戸市 26,867 京都市 25,668 岡山市 27,757
京都市 36,835 神戸市 61,629 京都市 11,166 京都市 25,232 神戸市 24,994 神戸市 27,213
大阪市 34,339 岡山市 58,009 奈良市 10,762 奈良市 24,794 岡山市 24,872 大阪市 26,562
堺市 34,227 堺市 56,241 堺市 10,554 堺市 24,521 松山市 24,271 京都市 26,552
岡山市 34,050 大津市 55,697 高松市 10,468 鳥取市 24,225 大津市 24,194 堺市 25,800
奈良市 33,787 大阪市 55,316 高知市 10,359 大阪市 23,709 大阪市 24,091 松山市 25,298
大津市 33,755 奈良市 53,046 大阪市 10,247 松江市 23,374 堺市 23,673 大津市 25,127
松山市 33,404 富山市 50,070 川崎市 10,207 名古屋市 22,707 福井市 23,346 奈良市 24,723
和歌山市 32,609 和歌山市 49,122 松江市 10,117 金沢市 22,060 奈良市 23,025 和歌山市 24,310
川崎市 31,973 福岡市 48,909 金沢市 10,094 高松市 22,051 和歌山市 22,847 富山市 24,250

となっていることが分かった。京都市が全国一位なのは、「パン全種類」の消費量と「食パン以外のパン」の消費金額であり、それ以外では神戸市や岡山市に一位を譲っている項目があった。

 京都市が一番であることについて番組では、
  1. 新しもの好きな気質
  2. 発酵文化がパン作りを広めた
  3. 職人の町だった
という3点を挙げていた。またパン食普及協議会のサイトにも
京都市が何故パンの消費が多いのか、理由を京都府パン協同組合理事長にお尋ねしたところ、「京都人は、合理的で新しい物が好き、だからと云うべきか、より選りの伝統あるものがたくさん残っている。また、京都市の街中は職人の町でもあるため、おやつを提供するのに、手軽に食べられるパンが好まれたのではないか」ということでした。
と引用されていたが、これらの理由には必ずしも納得できないところがあった。

 まず、「新しもの好き」が原因であるというなら、パン以外の食べ物、ファッションなどにおいても京都が最先端であることを示す必要がある。なお番組では、SNSやネット利用者が多いというデータも挙げていたが、これは京都府で大学生が多いことが主因であって、必ずしも「新しもの好き」を反映しているとは言えないように思う。ちなみに、文部科学省の学校基本調査によれば、京都府は都道府県の中で最も大学生が多い。

 次に、発酵文化説だが、ここでいう発酵とは酒種を利用したパンのことであり、イーストではない。酒種を使ったパンと言えばあんパンだが、京都であんパンがよく売れているという話は聞かない。

 3番目の「職人の町だった」(職人は仕事の都合上、食事をパンで済ませることが多いという説)というのも疑問。番組では、「職人の町だった」根拠として、伝統工芸士の数が一番多いというデータを示していたが、その実数は「1位 京都府1056人」、「2位 石川県 403人」、「3位 新潟県210人」であって京都府が一番多いとはいうものの、絶対数はあまりにも少ない。京都府全体でわずか1056人の工芸士がパンの消費に影響を及ぼすとは考えにくい。また、さまざまな職種まで広げるのであれば、東京や大阪の町工場の職人のほうが遙かに多いはずだ。

 ということで、和食の本場と言われる京都市でパンの消費が多いという意外なデータに注目した点は評価できるものの、その説明ははなはだお粗末、という印象を受けた。いくら娯楽番組だからといって、説明はできる限り科学的であってほしいものだ。一般的に「○○市が多い」という理由を説明するためには、各都市共通原因と、その都市特有の個別原因を明確にし、共通原因が多いのか、それともその地域に特有の原因が大きく影響しているのかを分けて考える必要がある。そのさい、相関ではなく、因果関係のパスを明らかにしなければならない。

 では、なぜ京都市でパンの消費が多いのか? 上にも述べたように、1つの原因は、大学生、大学院生、留学生などの若者が多いせいではないかと思ったが、上掲の元データは家計調査によるものということなので、今回の説明には当てはまらないようだ。リンク先にもあるように家計調査では、学生の単身世帯や外国人世帯は調査対象にはなっていないからである。ちなみに、パンの消費が、全国にあてはまる共通原因の多少によって決まっているとするなら、首位を争っている神戸市や岡山市が多い理由もちゃんと説明しなければならない。そうでなければ、神戸市や岡山市特有の原因をしっかり挙げる必要がある。神戸市については歴史的経緯が考えられるが、私の住む岡山市でなぜパンの消費量が多いのか、とりわけ食パン以外のパンの消費量では全国一位であるという意外な事実をどう説明するのかは全く分からない。さっそく、地域経済や地場産業に詳しい同僚に尋ねてみようと思う。