じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
一般教育棟構内、南極の蜂の巣岩に沈む夕日。建物や樹木の配置の関係で、この光景が見られるのは春分の日の1カ月後(4月下旬)と秋分の日の1カ月前(8月下旬)の一週間前後に限られる。
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【思ったこと】 150816(日)『嫌われる勇気』(36)叱ってはいけない、ほめてもいけない(3) 昨日の日記で、叱ったりほめたりすることの効果が無いにもかかわらず、当事者(叱ったりほめたりする側)にとっては「効果があった」と錯覚される場合があると述べた。その1つとして「平均値への回帰」が知られている。 この現象が起こるのは、テストの成績や、スポーツ大会での優勝というように、実際の結果が「努力の成果」と「幸運」の合算を反映するような場合である。少し長くなるが、クリティカルシンキングの本(Zechmeister & Johnson, 1992, Critical thinking: A Functional Approach., Brooks/Cole Pub. Co)から該当部分を引用しておく【訳は長谷川による。一部意訳あり。】。 ある授業科目で何度も受けたテストの点数のことをちょっと考えてみましょう。ある時は紛れもない高得点、そしてある時は気に入らない低い点になっているでしょう。言い換えれば、あなたの成績にはある程度の変動があるということです。要するに、学校でのテストの点とか、スポーツ大会での成績というのは、「実力点」プラス「幸運点」の合算のようなものである。このうち「幸運点」とは、サイコロを5回振って、目の数の合計を加算するようなもの。もちろん、実力点が高くなければ好成績はあげられないが、最高点をとったり優勝するといった場合は、5回投げたサイコロの目がすべて6であるといった「幸運」も必要である。といって、確率的には、そのようなチャンスは滅多にないため、最高点を取った回の次の回では点数が下がりやすくなり、最低点を取った回の次の回では点数は上がりやすくなる。 以上を「叱る」、「ほめる」に当てはめてみると、最高点をとった時にほめると、(実際には、ほめる効果と無関係であったとしても)次回には点数が下がりやすい。結果として「良い点をとった後で褒めたりすると、有頂天になりすぎて次回は怠けてしまう」といった錯覚が形成される。いっぽう、最低点をとった時に厳しく叱りつけると、(実際には叱る効果が無かったとしても)次回には点数が上がりやすい。結果として、「厳しく叱ると成績が上がる」という錯覚が形成されやすい【行動分析学的に言えば、「叱る」という行為に成績向上という結果が随伴する確率が高いことで、「叱る」行動は強化されやすい、ということになる。】 『嫌われる勇気』からすっかり脱線してしまったが、以上のような理由で、「悪い結果を出した時に叱る」という行動は強化されやすい宿命にある。 さらに脱線すれば、景気が最悪の事態にある時に実施される何らかの経済政策を実施すると、その後、景気がいくぶん持ち直すことがある。但し、これも、本当にその経済政策の効果があってそうなったのか、景気が最悪の時に偶然的に揃っていた「悪条件」の一部が時間経過によって消滅したために好転したのかを見極める必要がある、ということもできる。 不定期ながら次回に続く。 |