じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
岡山の最低気温は9月30日に14.1℃、10月3日に14.3℃というように、最低気温が15℃を下回るようになってきた。写真は岡大北福利施設(マスカットユニオン)近くのケヤキ。すでに紅葉が始まっている。 |
【思ったこと】 151002(金)悪臭を消臭ではなく香水に変えるという発想 10月1日のモーサテで、農家の婚活の話題に関連して、汚物臭を“良い香り”に変えるデオマジックが紹介されていた。モーサテでは、牛舎の悪臭が取り上げられていたが、実際には、おむつカバーなどの商品にも応用されているらしい。 リンク先の記事によれば、 「デオマジック」開発のきっかけは、西田敏行さんや桂小枝さん、間寛平さんらが出演する番組「探偵!ナイトスクープ」で、2010年7月9日に放送された「ウンコ臭い工具箱!?」だったそう。父親の工具箱の臭いに悩む女子小学生の依頼に応えるべく、山本香料の山本芳邦社長が同番組に出演したことから、シキボウとの共同開発が始まったとのことです。とのことだが、この開発で素晴らしいと思ったのは、悪臭をどうやって消すのかではなく、その存在を肯定したうえで良い香りに変えてしまおうという発想である。 こちらの記事に、 もともと香水の良い香りには、わずかに糞便臭のような一般的に不快に感じる成分が含まれており、その臭いが良い香りを引き立てているという。それ逆手に取り、不快な臭いが含まれていない香料を糞便臭に与え、それを取り込みより良い香りに変化させるというのが「デオマジック」の仕組みだ。と記されているように、もともと、香水というのは不快臭と混じり合って引き立つものらしい。人間につける香水の場合は、体臭の少ない人よりも多い人のほうがより強い香りを発するようである。 嗅覚のすぐれたイヌなどと違って、人間の嗅覚というのはかなりいい加減なものであり、視覚刺激や聴覚刺激ほどには、適応のための手がかりとしては利用されてこなかった。腐敗臭のようなものは、腐敗物自体の危険性と結びついたレスポンデント条件づけによって習得性嫌子になるとは思うが、くさやの干物、ドリアン、ベジマイト、西洋人にとっての日本の納豆のように、一般には悪臭を放つと言われながらも、好まれる食べ物もあり、絶対的に嫌われるわけではない。いっぽう、好まれる香りについては、フェロモン、美味しい食べ物の香り、花の香りなどがあるが、上述のように、たいがいは不快臭と混じり合って引き立つという特徴があるようだ。 少し脱線するが、不快な対象を無理に消そうとせず、その対象の存在を肯定した上で関係性を変えてしまおうという発想は心理療法にも応用できる。このWeb日記で何度か言及している関係性フレーム理論では、 言語内容(ルール)を修正していく方略ではなく、当該の言語的過程、つまり当該の文脈を変化させる方略が導き出される。一般的に言えば、認知的内容やその生起頻度を変化させるのではなく、特定の「認知−行動」の結びつきを変化させることになる。そのような方略を採用する理由は、言語内容を修正すればするほど、言語内容を拡大することを結果的に強めてしまうことになるからである。それは望ましい内容を拡大するが、同時に望ましくない内容をも拡大するからである。【武藤崇(編). (2006). アクセプタンス&コミットメント・セラピーの文脈.−臨床行動分析におけるマインドフルな展開−、73〜74頁】というように、問題となる対象それ自体を消去するのではなく、関係を変えていく(もしくは、関係を切り離す)ことに重点が置かれている。ハリス(2012)もまた、 ...セラピーモデルの大半は、症状の緩和に重点を置いている。その根幹にあるのは、クライエントの人生をより良くするには症状の緩和が必要であるという想定である。しかしACTの根本的なスタンスは異なり、(a)人生の質を決めるのは、価値に導かれたマインドフルな行動ができるかどうかである、(b)どれだけ多くの症状を抱えていても、それに対してマインドフルに対応している限り、そのような行動をとることは可能である、と考えている。と述べている。嫌な出来事やストレスとなる対象を消し去るということは容易にはできないが、関係を変えればうまく付き合っていくことも可能となる。 |