じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 文学部中庭の11月11日と11月27日の比較写真。
  • 右側にあるアメリカフウはほぼ落葉
  • 真ん中にあるメタセコイアもだいぶ葉が落ちた
  • 日中でも、中庭花壇には日が当たらなくなった。
  • 後ろの半田山でも黄葉が進み、まもなく「イエローバンド」が出現する見込み。もっとも、昨年【右の写真参照】に比べるとかなり遅い。

2015年11月27日(金)


【思ったこと】
151127(金)刑事コロンボ「殺しの序曲」の偽金貨クイズとその拡張(1)

 BS-TBSで放送されている「刑事コロンボ」をときどき録画再生で視ているが【11月6日の日記に関連記事あり】、11月24日の「殺しの序曲」の中で、面白いクイズが出題されていた。

 IQ上位2%の天才たちだけが入会できるという「シグマクラブ」の代表オリバー(この回の犯人)がコロンボに出題したものであり、日本語吹き替えでは以下のようになっていた。
  • オリバー:ここに金貨の入った袋が数個あります。袋の数はいくら多くてもよろしい。それぞれの袋に複数の金貨が入っているがこの金貨の数もいくらでもよろしい。しかし1つの袋だけは全部偽造の金貨が入っておりこれは重量が違っている。純金の金貨が、例えばそう、1個100gだとすれば、偽造のはともかくそれとは違う。
  • コロンボ:110gじゃどうでしょう?
  • オリバー:ええいいですよ、さて、ここに秤が一個置いてある。
  • コロンボ:なるほど、その秤を何回か使って偽の金貨を見つけ出せって言うんでしょ。
  • オリバー:いや違う。その秤は一度しか使えない。つまり、一度だけで偽造の袋を見分ける方法は?
というものであった。番組でのコロンボの解答は【要約】、
じゃあ袋は3つとします。ちょうどここに3つありますから。ホンモノの金貨の重さは100g、偽金貨の重みは110gとします。まず第一の袋から1個、第二の袋から2個、第三の袋から3個取り出してまとめて秤に乗せます。6個全部が本当の金貨なら600gになるはず。第一の袋が偽金貨なら610g、第二なら620g、第三なら630g、袋の数がいくらあっても同じ。
となっていた。

 なお、上記の「秤」というのは台秤(もしくは、ばねばかり)のことである。天秤ばかりを使った偽金貨問題については、このWeb日記を書き始めて間もない頃【こちら参照】に考察したことがあった。




 さて、このクイズの解法はまことに明快であるのだが、どこまでが前提で、どこまでが例示なのか曖昧であるという不満が残った。私は当初、
ここに金貨の入った袋が数個あります。袋の数はいくら多くてもよろしい。それぞれの袋に複数の金貨が入っているがこの金貨の数もいくらでもよろしい。しかし1つの袋だけは全部偽造の金貨が入っておりこれは重量が違っている。一度だけで偽造の袋を見分ける方法は?
であって、ホンモノが100g、ニセ金貨は110gというのはあくまで例示であると受け止めていた。しかし、上記の解答では、例示された数値がそっくり解法に利用されていたのである。

 では、ホンモノとニセ金貨の重さは分からない(但し、重さが違うことは分かっている)という前提ではどうすればいいのだろうか? この場合、1回の計量でニセ金貨の袋を見つけることはまず不可能。では2回なら可能か。3回ならどうだろう?と考えてみた。

 当初、この問題は線形方程式系の解空間に関係しているのであろうと考えたが、加齢による数学的思考力の衰えに逆らうことはできず、うまいアイデアは浮かばなかった。

 しかし、少なくとも4回の計量が許されるのであれば、ニセ金貨の袋は確実に見つけ出せることは分かった。すなわち、n個(n≧3)の袋に1、2、3、...nというように番号をつけた上で、
  • 【計量1回目】袋1から1個だけ取り出し計量
  • 【計量2回目】袋2と袋3から1個ずつ取り出して計量
とする。この2回の計量では次の2つの可能性が考えられる。
  • 【ケース1】2回目が1回目の2倍の重さになった
    • →ニセ金貨は袋4以降にある(袋が3つだけの時はこのケースはあり得ない)
    • →ホンモノの金貨1枚の重さが分かる。
  • 【ケース2】2回目が1回目の2倍よりも軽い、もしくは重い
    • →ニセ金貨は袋1、袋2、袋3のうちの1つにある
 このうち【ケース2】であるならば、【計量3回目】では、袋2から1枚の金貨を取り出して重さを測れば、どの袋がニセ金貨であるのか判明する。
  • 袋1の金貨と袋2の金貨が同じ重さ→袋3がニセ金貨
  • 袋1の金貨と袋2の金貨の重さが異なり、かつ、袋2の金貨の重さは【計量2回目】の半分】→袋1がニセ金貨
  • 袋1の金貨と袋2の金貨の重さが異なり、かつ、【計量2回目】から【計量3回目】の重さを引くことで得られる袋3の金貨の重さが、【計量1回目】から判明した袋1の金貨と同じである場合→袋2がニセ金貨
というような場合分けによりニセ金貨の袋を見つけ出すことができる。

 いっぽう【ケース1】の場合は、
【計量3】袋4以降、袋nまでから1枚ずつ金貨を取り出してまとめて計量。これによって、ニセ金貨の重さが判明。いっぽう、【計量1】によりホンモノの金貨の重さも分かっているので、4回目の計量では刑事コロンボの解法が利用できる。

 ということでとりあえず4回の計量が許されれば、ニセ金貨の入った袋を必ず見つけ出すことができる。

 さて以上は自力で考えた解法であるが、その後ネットで検索したところ、『にせ金を探せ Part5』というサイトがあり、ここでは、3回の計量だけでニセ金貨の袋を見つけ出せる方法が紹介されていた。

 その方法のうち、【計量1回目】は上記と同じ。【計量2回目】では、残りの袋から1個ずつ取り出してまとめて計量。【計量3回目】は、同じく残りの袋から刑事コロンボの解法と同様に袋番号と同じ個数を取り出すというやり方である。

 このやり方は私も考えたが、ホンモノとニセ金貨のそれぞれの重さが分からないのにどうして【計量3回目】で刑事コロンボの解法が使えるのかが思い浮かばなかった。しかし、よく考えてみれば、【計量2回目】では、残りの袋(計量1回目以外の袋)から1個ずつ取り出してまとめて計量した時の重さは、
  • 計量1回目の袋がニセ金貨であった場合→残りの袋はすべてホンモノなので、ホンモノの金貨1枚の重さが分かり、かつ1回目の計量がニセ金貨の重さが分かる。
  • 計量1回目の袋がホンモノであった場合→計量2回目の重さは、1回目の重さ×残りの袋の数より、多少重いか軽くなる。この差がニセ金貨との差になるのでニセ金貨の重さが分かる。
となるので、場合分けそれぞれにおいて、ホンモノとニセ金貨の重さが確定できることが分かる。

 もう一度まとめると、残りの袋から1個ずつ取り出した時の総重量【計量2回目】と、残りの袋から袋番号(n≧2)に対応した個数ずつ取り出した時の総重量【計量3回目】から金貨1枚あたりの重さの平均値をそれぞれ計算する。それが同じであれば、【計量1回目】で取り出した金貨の入っていた袋がニセ金貨となる。それが異なる場合、【計量1回目】で取り出した金貨はホンモノであることが確定するので、【計量2回目】の総重量とホンモノ金貨の枚数分の重さとの差からニセ金貨の重さも確定し、【計量3回目】の刑事コロンボ解法が適用できるという次第。

次回に続く。