じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 今回の積雪は数時間で消滅したが、翌21日朝も氷点下の寒さとなった。写真は文法経グラウンドの水たまりにできた氷。

2016年01月21日(木)


【思ったこと】
160121(木)「平均順位」が意味をもつ場合

 某所で、順序尺度(Ordinal scale、順位尺度)の平均ということが話題となった。

 ウィキペディアの当該項目に、
この水準では対象に割り振られた数字は測定する性質の順序を表す。数字は等しいかどうかに加え、順序(大きいか小さいか)による比較ができる。しかし加減などの演算には意味がない。
と記されているように、順序尺度の数値は平均しても意味をなさない。具体的には、国際原子力事象評価尺度、モース硬度、地震の震度、レースの着順などのほか、心理学や社会科学の測定のほとんどは順序尺度で行われるとされている。

 順序尺度は順位尺度とも呼ばれるが、順位の平均が全く意味をなさないというわけではない。このことについては10年ほど前に一度取り上げたことがある。要するに、順位そのものが平均できないのではなくて、
  • どういう測定値で順位が決められているのか、
  • あるいはその順位が何に利用されているのか
が平均できるかどうかの決め手になっているのである。

 例えば、競走馬の直近10レースの平均順位というのは、次のレースの順位予測には殆ど意味をなさない。レースによってコースの長さも違うし、出場する馬も異なっているからである。弱い相手ばかりと争って平均順位1.5位になった馬と、強い相手ばかりが多いレースで平均順位3.5位になった馬が同じレースに出れば、平均順位3.5位の馬のほうが勝つ可能性が高いかもしれない。

 いっぽう、朝9時から稼動するATMがA店舗とB店舗にそれぞれ1台ずつ設置されていたとする。そして朝9時ジャストにそれぞれの店舗に出かけてみると、いずれも行列ができており、A店舗では平均1.5人、B店舗では平均3.5人が並んでいたとしよう。この場合、朝9時に到着した人の平均順位は、それぞれ1.5位、3.5位と言い換えることができるが、この平均値には意味がある。ATM利用者1人あたりの利用時間がほぼ一定であるとすれば、平均順位が2倍になることは待ち時間が2倍になるということと同等。順位は、間隔尺度どころか比率尺度(比例尺度)としても意味をもつことになる。

 さて、そろそろ受験シーズンが本番となるが、模擬試験の順位はどうだろうか? 上述の競馬の例と同様であり、主催者や規模の異なる模擬試験の順位を平均しても殆ど意味はない。その一方、毎回同じレベルの人たちが受験する模擬試験において、特定大学・学部志望者の中での平均順位であれば合格可能性の目安にはなるであろう。例えば、志望先が募集定員100名となっていて、かつ同じ志望者のほぼ全員が受験する模試が何度か行われた場合、平均順位が50位となっていればほぼ確実、150位であれば絶望的と言えるかもしれない。実際の合格可能性は、当該志望先の得点分布、偏差値、当人の得点から推定されるが、順位で推定してもそれほど誤差はないように思う。但し、いっぱんに合格ラインすれすれのところでは、1点の違いの受験者が集中しわずか1問のケアレスミスが順位を大きく下げてしまう恐れがあるので、受験生各位はそのような失敗をしないように注意が必要である。