じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
2月23日朝7時半すぎのNHK-BS「キャッチ!世界の視点」で紹介された雪の結晶の形【写真上】。写真下はウィキペディアで紹介されていたマグヌスのスケッチ。本文には「1555年、オラウス・マグヌス、北方民族文化誌に最も古いとされる雪のスケッチを残す」と記されていた。↓の記事参照。 |
【思ったこと】 160223(火)「雪の結晶に同じものは2つとない」と言われるが... 2月23日朝7時半すぎのNHK-BS「キャッチ!世界の視点」のWorld Weatherのコーナーで雪の結晶の話題を取り上げていた。 1500年代に描かれた雪の絵にはいろいろな形があり、すでに500年前からいろいろな形の結晶があることが知られていた。このできかたに法則性を発見したのは天文学者のケプラーであり、彼は雪の結晶は六角形になることを検証した。なぜ六角形になるのかというと、もととなる雪の粒が六角形になるから。その6つの角に水蒸気がくっついてが成長するとお馴染みの雪のマークのような形になる。雪の結晶は1つとして同じ形にはならない。それは地上に落ちるさいに気温や湿度の変化によって成長に差違が出るからだ。というような内容であったが、いくつか疑問が出てきた。
このうち1.に関しては、あくまで私の推測だが、ウユニ塩湖の亀甲紋の写真に関連して引用した、 自然鉱物の法則に柱状節理という原理もあるように、3本の亀裂が出会う形が最も小さいのです。そしてそれらが120°という同じ角度を取らないと,どれかのブロックがより沢山縮まなくてはならなくなってしまいます。(対称性=上面の全ての点は全て等しく縮みたがる。)この、3本の亀裂が120°の角度で平均して出会う最小負荷の形状が六角形です。という説明があてはまりそうだ。なお別のサイトには、「雪の結晶の分子構造は酸素1対水素3で、酸素を中心に等間隔に水素が囲むように結合し、水素と水素が120°の角度で三方に離れていて、それがつながって六角形となるらしい。」とあったが、雪の成分はH2Oであるからして、「酸素1対水素3」というのは妙であるし、また、分子構造で形が決まるのならみんな同じ結晶になるはずなので、たぶん俗説に過ぎないのではないかと思われた。 残る疑問は、雪の結晶がなぜ平板状に成長するのかということ。空中を舞いながら落ちていく以上、いろいろな方向に120°の角ができても不思議ではないと思うのだが...。 次に2.と3.に関連して、こちらに美しい結晶の写真が紹介されていた。それらを見る限りはどれも微妙に違った形をしているように見える。もっとも、「雪の結晶は1つとして同じ形にはならない」とか、よく似た「万華鏡に現れる模様は1つとして同じ形にはならない」というのは、「すべての人は必ず死ぬ」というのと同様、経験科学では実証できない命題と言えよう。「地上に落ちるさいに気温や湿度の変化によって成長に差違が出る」あるいは、万華鏡に関して「中に入っているビーズやガラス球などが全く同じように動く事はないので、同じ模様は見えない。」というのは、同一パターンが出現する確率はきわめて小さいと予想しているだけであって、同じモノは絶対に現れないことを保証するものではない。じっさい、人工的に環境条件を揃えれば、同じ形を創り出すことも可能であるようだ。【こちらに動画あり。】 ここからは少々脱線するが、この世の中、2つの物体が100%同一ということはありえない。10円玉だって、製造段階での微妙なバラツキに加えて、摩耗、汚れ、などを考慮すれば、「1つとして同じ形の10円玉は存在しない」といっても間違いではなかろうと思う。しかし、自販機で飲料水を購入する時には、歪んだり破損していない限りは、どの10円玉も同じモノとして扱われる。「同じ」かどうかという比較判断基準は、比較をする人あるいはその社会のニーズに依存していると言える。 但し、そうは言っても、よく似たものばかりが揃う現象と、どれ1つとして同じものはないという現象があることは事実。例えば、「同じ指紋を持った人はいない。また、手足20本の指の指紋はすべて異なる」という事実に対して、指紋の違いは社会的に構成されたものだと主張しても(不可能ではないが)屁理屈のように受け止められてしまうだろう。自然現象の中には、同じパターンになりやすいものと、ちょっとした初期条件の違いや外部要因の変動を繊細に受けやすいものがあることは確かである。 であるからして、「雪の結晶は1つとして同じ形にはならない」というのも、命題として真か偽かを議論するよりも、雪の結晶はなぜ多様な形に生成されやすいのかという観点から、バラツキをもたらす変動要因を解き明かしていくことのほうが建設的な議論になると思われる。 |