じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
8月14日(日)の文学部前と一般教育C棟・D棟前。なお岡大は8月16日(火)まで一斉休業日が続く。 |
【思ったこと】 160814(日)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(91)アナロジー、メタファー、そして自己の体験(27)「般化オペラント」についての復習(10)「関係づける」の意味(3) 8月10日の日記に引用したように、 Hayes, S. C., Barnes-Holmes, D., & Roche, B. (Eds.). (2001). Relational Frame Theory: A Post-Skinnerian account of human language and cognition. New York: Plenum Press の25頁では、「関係づけるとは、ある事象に対して、他の事象の観点から反応するということである。」と定義されている。また長谷川(2015)では、「(関係反応とは)単一の刺激の絶対的な特性に対応した反応ではなく、複数の刺激間の相対的な特徴に対応して生じる反応。」と定義した。ここで留意すべき点は、2つの刺激間の関係のなかには非恣意的な関係もあること、非恣意的な関係に反応すること自体は必ずしも派生的関係反応とは言えないということである。 Responding to nonarbitrary stimulus relations is not itself derived relational responding, because it is entirely bound by the formal properties of the related events. ここで、非恣意的関係と恣意的関係について、いくつか例を考えてみよう。例えば、「大」と「小」という2つのボタンがあり、円、三角形、四角形といった幾何学的図形刺激Aが1秒、続いて刺激Bが1秒提示され、刺激Bのほうが大きい場合には「大」のボタンを押すと正解、刺激Bのほうが小さい場合は「小」のボタンを押すと正解になったとする。この実験条件のもとでは、刺激の大きさという物理的特性が手がかりとなっているので非恣意的な関係に反応していると言えよう。但し、「大」とか「小」というのは漢字を知らない人たちにとっては単なる模様であり、「大」と「小」の正解を逆にしても(刺激Bのほうが小さい時に「大」、大きいときに「小」を押せば正解)、課題の難易度は変わらない。つまり、ボタンにどういう模様を使用するのかという部分については非恣意的と言うことができる。 上記の実験で、幾何学的図形刺激の代わりに「ゾウ」、「ライオン」、「ネコ」、「ネズミ」の写真が使用されたとする。この場合の大小関係は2通りありうる。1つは、それらの動物の絶対的な大小関係であり、成体であれば、ゾウ>ライオン>ネコ>ネズミという非恣意的な関係が物理的に固定されている。もう1つは、写真自体の大きさである。縦横10cmのカードに貼り付けられたネズミの写真と、縦横3cmのカードに貼り付けられたゾウの写真では前者のほうが大きい。ちなみに、前者のケースでは、あらかじめ「ゾウ」、「ライオン」、「ネコ」、「ネズミ」の実際の大きさの違いを、動物園やテレビ映像などで学習しておかないと正解は出せない。後者のケースは、動物の種類ではなく写真のサイズに反応するだけなので、その写真が何という種類の動物なのかを知っておく必要はない。 恣意的な関係は文字通り恣意的に設定可能であるが、推移律や、刺激機能の変換などが生じるためには、比較を可能にするための比較軸はやはり必要であろう。どのような比較軸を選ぶのかは恣意的に可能であるが、通常は日常生活で有用な比較軸(長さ、広さ、大きさ、重さ、明るさなど)が用いられる。人間の場合、これらの比較軸は幼少時からの多様な訓練により当たり前の存在であるかのように確立している。また当然のことながら、それらの比較を可能にするような感覚受容器が揃っている必要がある。 次回に続く。 |