じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 11月28日(日)に訪れた成羽美術館は、成羽陣屋跡の石垣の上に建てられていた。昨日の日記で穴太衆(あのうしゅう)による伝統の石積みの話題を取り上げたところでもあり、興味深く石積みを拝見した。
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2016年11月27日(日)



【思ったこと】
161127(日)関係反応についての講義メモ(19)刺激弁別と分化強化(1)

 11月24日の続き。

 今回はまず、以下の2つの例について考えてみる。
  1. 2つのキーが並んでいる。キーは赤または青色に照射可能であり、赤と青の左右の位置はランダムに変化する。また、赤、青いずれかに点灯するランプがキーの上に取り付けられている。ハトは、赤いランプが点灯した時には赤いキーを、青いランプが点灯した時には青いキーをつつけば餌が貰える。
  2. スキナーボックスの中にレバーがある。ネズミは、レバーを20グラム重以上【正式にはNニュートンの単位で記述する】の力でマイクロスイッチがonになるまで押し下げ、レバーに触れるのを止めてレバーが元の位置に戻った時に餌が貰える。
 1.の例は、同時弁別課題の1つであり、キーの色は弁別刺激であると考えられている。赤いランプが点灯した時は赤がS、青はSΔとなる。そのさい、キーはオペランダムであり、キーの色は弁別刺激というように分離されている。
 いっぽう2.の例ではレバーはオペランダムである。「レバーを20グラム重以上の力でマイクロスイッチがonになるまで押し下げ」という時のレバーを押す力は、ネズミにとって一定の感覚刺激(重さの感覚)をもたらす。ネズミはその感覚刺激を手がかかりにしてレバーを離すかもしれないが、通常これは弁別刺激とは呼ばれない。そうではなく単に、「ネズミが一定以上の力でレバーを押す行動」というように行動レベルで記述され、弁別学習という言葉は使われない。

 弁別刺激は「オペラント行動において手がかりとして利用される刺激」として定義されることもあるが、実際は、外部から観察可能で、(実験場面であれば)実験的に操作できる刺激のみに言及されることが多い。スポーツにおける高度なスキル習得の場合などを除けば、行動に伴う自己受容刺激は通常は弁別刺激として扱われていないように思われる。

 このことは分化強化、分化弱化をどう考えるのかにも関係してくる。杉山ほか(1998)では、178頁以下に、分化強化手続と刺激弁別手続について、比較・対照が行われている。それによれば、上記のレバー押しの例では、「20グラム以上でレバーを押す」という行動と「20グラム未満でレバーを押す」という行動は別々の反応クラスに属する行動であると見なされる。反応クラスが2つで、スキナーボックス内で当該行動の手がかりとなる刺激が特に存在しない場合(刺激は1つ)、これは分化強化であると見なされる。

 ここでいう「反応クラス」というのは、ネズミにもともと備わっている分類基準ではなく、あくまで、強化するかしないかに対応して恣意的に決定された基準であるとも言える。

 次回に続く。