じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
12月3日は、月と金星の接近を眺めることができた【今回は21時34分に5°48′まで接近】。次回以降の接近は、2017年1月2日(1°54′)、1月31日(4°04′)、3月1日(10°15′)などとなっている。金星は2017年1月12日に東方最大離角となるため、空の高い位置で輝いていて街中でも見えやすくなっている。楽天版(12/3付け)と↓の記事参照。 |
【思ったこと】 161203(土)金星の見え方 上の写真にも見られるように、この時期の夕方、空の高い位置で金星が輝いている。このことでふと思ったが、金星が宵の明星として西空に現れる日数と、明けの明星として東空に現れる日数はなぜ等しくなるのだろうか。このことを直観的に理解する方法について考えてみた。 まず、本当に同じ日数になるのか、数値を確認してみた。金星は太陽の周り、地球の内側の軌道を回っており、その周期は、224.701日(0.615207年)。内合から外合を経て再び内合に至るまでの日数(会合周期)は583.92日となっている。このうち、内合から外合までが明けの明星、外合から次の内合までが宵の明星となる。実際には外合付近で観察が困難となる日数が約56日、内合付近で観測困難となる日数が約8日あり、会合周期約584日から62日分を差し引くと520日が金星の見える日数となる。その半分の260日が宵の明星、残りの半分が明けの明星ということになる。 ではなぜ宵の明星と明けの明星の見える日数は同じになるのだろうか? 直観的理解を助けるには、円形のトラックを2人のランナーが走るという喩えを使う方法がある【但し、厳密には、地球と金星の軌道が完全に円であり、軌道の傾斜角が同じであると仮定した上での話】。地球というランナーが365.256363004日(太陽年は歳差の影響があるので365.2422日になる)で走っており、いっぽう金星というランナーは224.701日で地球を追い抜いていく。そのさい、地球のほうが、追い抜かれた瞬間から半周遅れの瞬間になるまでが明けの明星となり、半周差がついてから再び追い抜かれるまでが宵の明星となる。追い抜かれてから半周の差がつくまでと、半周の差がついてから再び追い抜かれるまでの日数は、2人のランナーのスピードの差で決まってくる。スピードの差は常に一定なので、期間は等しいということが直観的に分かる。 もっとも、宵の明星と明けの明星の見える日数が同じとはいっても、見える位置や日々の移動の大きさはかなり異なっている。まず、内合に近い時期のほうが、外合よりは地球に近いところを金星が追い抜くので移動が激しい。(それゆえ、内合の前後で観測困難となる日数は外合の前後のそれよりも遙かに短い。) また、これは、地球側の季節の変化などにも影響されるため、年によっては高度があまり上がらないこともある。 なお、各種サイトでも紹介されているように、金星と地球は、8年周期で同じような周り方をする。じっさい、地球の公転周期を8倍すると2922.050904032日、金星の公転周期を13倍すると2921.113日となって殆ど変わらない。(日付自体は、グレゴリオ暦のうるう年の設定によって1〜2日ずれるかもしれないが、会合のパターンは同じ。) であるからして、夕方の空に宵の明星が高く輝く季節、あるいは金星が見えにくい時期というのも、けっこう片寄りがあるようだ。 ちなみに8年前の金星の東方最大離角は、2009年1月15日で、離角は47°07′となっている。真冬の夕空の高いところに宵の明星が輝くという思い出は8年ごとに作られるようである。 | tr>