じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡北中との境界(おそらく岡北中の敷地内)にそびえ立つポプラ。このところの寒さで落葉が進んでいる。北大構内が思い出される風景。

2016年12月11日(日)




【思ったこと】
161211(金)関係反応についての講義メモ(27)長谷川の考え(1)

 12月8日の続き。

 今回からは私なりの独自の考えを述べていくことにしたい。これらは、関係フレーム理論の主張内容と一致しない部分があることを予めお断りしておく。

 まず、関係反応の定義については、11月6日に述べた通りで、以下の2点を強調しておきたい。
  1. 単一の刺激の絶対的な特性に対応した反応ではなく、複数の刺激間の相対的な特徴に対応して生じる反応
  2. 単一の刺激が複合した場合にも複合刺激特有の機能を有する場合があるが、これは必ずしも関係反応とは言えない。
 このうち2.については、
  • 「青信号の時に横断歩道を渡る」という場合は青信号は、じつは「自分が横断する方向に取り付けられている」という文脈のもとでの、「歩行者用信号機」と「青いライト」の複合刺激となっている。自動車用の信号機が青に点灯していても渡ることはないし、歩行者用信号機が赤や黄色の時に渡ることもないので、「単一の刺激の絶対的特性に対応した反応ではない」という点では関係反応の基準を部分的に満たしているようにも見える。しかし、信号機や青いライトは依然として横断行動の弁別刺激として機能しており、その意味では「複数の刺激間の相対的な特徴に対応して」という基準は満たしておらず、横断行動を関係反応に含めることはできない。
  • サカナ偏の漢字、例えば、鯵、鯖、鯛、鰯、鰆といった漢字では、「つくり」の部分の「参」、「」、「周」、「弱」、「春」はそれぞれ、対応する魚とは全く無関係の意味をもつ漢字であり、この意味では「単一の刺激の絶対的特性に対応した反応ではない」という基準を満たしているように見える。しかし、「魚」という偏のほうは「つくり」と複合されても依然として「魚の一種である」という意味を保有しているし、どっちにしても「複数の刺激間の相対的な特徴に対応して」という基準は満たしていない。
という例を挙げて、関係反応と異なる点を強調した。そのいっぽう、関係反応の例としては、
  • 2つのうち、より大きいものを選ぶ
  • 2つのうち、先に出現したほうを選ぶ
  • 当該の目印より左側にあるものを選ぶ
といった例を挙げた。これらはいずれも、個々の刺激の絶対的な特性ではなく、2つの刺激の相対的な関係を手がかりにしないと正しく反応することができないという点で、関係反応の条件を満たしていると言える。

 では、漢字の熟語はどうだろうか。上掲では、「岡大」という言葉の「岡」と「大」という文字から構成されているが、「岡」は「土地の小高くなった所。低い山。台地になったところ。丘と同義」、「大」は「大きい」という意味であり、どちらの漢字の中にも「岡山大学」という意味は含まれていない。この点では、上記の関係反応の条件を満たしていると言える。しかし、この例では「複数の刺激間の相対的な特徴に対応して生じる」といった特定の比較関係には基づいていない。

 上記の例が、横に並んだ2つの漢字の画数の多い方を選ぶという、文字の画数を比較するクイズとして出題された場合であれば関係反応の条件を満たすこともありうる。つまり「岡大」という問題に対しては「岡」のほうが「大」よりも画数が多いので左を選ぶが、「岡鯨」という問題に対しては「鯨」を選ぶ。いずれの場合も、「岡」、「大」、「鯨」という漢字の固有の特性ではなく、両者の比較によって初めて正解が決まる関係反応となっている。

 上記の画数問題よりもっと単純な、「同じ」、「違う」といった比較反応も関係反応の基準を満たしている。上記の例で言えば「岡岡」は「同じ」、「岡大」や「大岡」は「違う」という関係反応を引き出す。

次回に続く。