じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 こちらの方の日記で、自撮り写真で年齢を判定してもらうアプリがあることを知った。最近撮った写真で判定してもらったところ、一番若い判定で「32歳」、いちばん高齢の判定で「65歳」となった。実年齢は64歳8ヶ月なので、私の場合、実年齢より若く判定されるようだ。もっとも、近いところから撮った写真ほど、実年齢に近い判定となっている。シワや老人性のシミなどが写り込んでいるためと思われる。

2017年6月5日(月)



【思ったこと】
170605(月)NHKこころの時代〜宗教・人生〜「“いま”を共に楽しむ」

 5月28日に放送された、

NHKこころの時代「“いま”を共に楽しむ」

を録画再生で視た。出演されたのは岡山県在住で介護福祉士・劇団主宰の菅原直樹さん。番組サイトに記されている通り、菅原さんは演劇を通して老いに向き合う活動に取り組んでおられる。認知症特有の間違った言動を正さず受け入れ、演じることによって、介護する側も介護される老人も“いま”を共に楽しむことができるようになった。

 備忘録を兼ねて、特に参考になった点をメモさせていただく。【いずれも長谷川の聞き取りによるため、不正確】
  • ぼけを受け入れることが大切。ぼけを正しても幸せにならない。
  • 介護職員として「俳優」になってもいいじゃないか。入居者から時計屋さんと言われた時には時計屋さんを演じればいい。
  • ぼけを受け入れることで、その人の見ている世界を知ることができる。
  • 論理や理屈ではなく、感情に寄り添うことが大切。
  • 行動にそのまま反応するのではなく、奥にある気持ちを察する。
    • 傘を持って掃き掃除をしているおばあさん→まず感謝した上で、新しい箒を使ってくださいと言って、本物の箒に取り替えてもらう。「それは箒ではなく傘ですよ」というような誤りを正すことはしない。
    • 足取りがおぼつかないおばあさんが別のおばあさんの介助をしようとする→(介護職員が)休憩してきたところなので、交代しましょうと言って代わってもらう。「危ないから止めてください」とは決して言わない。
  • 演技をすると人を騙す、嘘をつく、というように思われるが、演技を通じて人と人が心を通わすこともあるのではないか。
  • 認知症でも、いまこの瞬間を楽しむことはできる。
 番組の終わりのほうでは、以下のようなことも語っておられた。
  • いまの社会は進歩主義(きのうよりきょう、きょうよりあした)によって支えられている。できない人は、反省して、学習してできるようにならなければならない。
  • 高齢者は、だんだんできなくなっていく。何が正しくて何が間違っているのかはとうの昔に知っている。衰えていく者に対して、無理して成長させようとするのか?
  • 「成長する・成長しない」とは別の価値観で接する必要がある。
  • 高齢者は、いまこの瞬間がいちばんいい状態。明日はもっと悪くなっているかもしれない。いまこの瞬間を楽しまないでいつ楽しむのか?
 そう言えば、6月5日は、定年退職まで残り300日という節目の日にあたっていた。「じぶん更新日記」というこの日記のタイトルもそろそろ「いまのじぶん日記」というようにそろそろ改称する必要が出てくるかもしれない。

 なお、今年の行動分析学会年次大会の最終日には、学会企画シンポジウムがあり、登壇者を依頼されている。応用行動分析というと、自立的・適応的な行動を強化する技法がしばしば取り上げられる。もちろん、認知症高齢者に対しても、トイレとトイレでない場所を弁別してもらうためのサポート、現実世界の手がかりを適確に利用できるようになるためのサポートは有用かと思うが、誤りを正すとか、ネガティブな状態をゼロに戻すといった姿勢はとるべきではない。このあたりは、ACTで強調されている価値論、あるいは、ハリス(2012)の

ハリス著 岩下慶一訳(2015).『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない―マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門』

の視点に立つことが必要であろうと思っている。もっとも「いまを楽しむ」ことが大切だと言っても、どうすれば「いまを楽しめるのか」は別に検討しなければならない。高齢者個人個人に合わせた楽しみ方を尊重していく必要がある。シンポでも、今回の菅原さんの言葉を引用しつつ、ACTの価値論やハリスの主張、さらに個性重視の「楽しみから」という視点を取り入れた提案をさせていただこうと思っている。