じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 170703(月)藤井聡太四段、連勝29でストップ 各種報道によれば、昨年12月のデビュー以来、公式戦で一度も負けることなく連勝を続けていた中学生棋士の藤井聡太四段(14)段が、竜王戦挑戦者決定戦で佐々木勇気五段に敗れ、公式戦最多連勝記録は29でストップしたという。 連勝記録更新中は、NHK総合でもトップニュースなどでも取り上げられ、「フジイノミクス」などと言われて、将棋を殆ど知らない人たちからも注目されていたが、これでいくぶん沈静化し、藤井四段ご自身も、対局と勉学に専念できるようになるかもしれない。 ちなみに、将棋の世界での公式戦連勝記録というのは、大相撲の連勝記録とは異なった仕組みにより更新されていく。大相撲の場合は、番付がすべてであって、入門した力士は、アマ相撲優勝などの特例を除いて 序の口、序二段、三段目、幕下、十両、幕内というように順番に番付を上げていき、幕内に上がった時点で初めて横綱と対戦することになる。よって、幕下時代での連勝記録と横綱の連勝記録では重みが全く変わっている。要するに、対戦相手が(当該力士からみて)弱い力士ばかりであれば連勝しやすい一方、横綱に上がってからの連勝記録はそう簡単には更新できないということである。 いっぽう、将棋の場合は、竜王戦や名人戦など8つのタイトル棋戦のほか、トーナメント方式、NHK杯、新人王などの棋戦があり、参戦の条件がそれぞれ異なっている。今回の竜王戦の場合は、「全棋士と女流棋士4名・奨励会員1名・アマチュア5名で行われます。1組から6組に分けてトーナメント戦を行い、各組の上位者の計11名で挑戦者決定トーナメントを行い、竜王への挑戦者を決める」となっている。デビューしたばかりの藤井四段は、いちばん弱い6組で優勝したので、まずは5組優勝の増田四段と対局して勝利、しかし、続いて対戦した4組優勝の佐々木五段には負けてしまった次第。もし勝ち進んでいれば、次には1組5位の阿久津八段、さらに1組4位の久保王将、さらに1組優勝の松尾八段と対戦し、さらに、別に枝分かれしている2組、3組、1組2位などから構成されるトーナメントの勝者と決勝者決定三番勝負を行うことになる。原理的には、どの組に属していてもすべて勝ち上がれば挑戦者になれる資格があるが、下位の組から勝ち上がるためには驚異的な連勝が必要となる。ちなみに、2014年竜王の糸谷哲郎六段(当時の段位)は3組優勝からの勝ち上がり、2015年竜王の渡辺明棋王は2組2位からの勝ち上がり、2016年の挑戦者決定三番勝負は、しばしば話題になったように、1組3位の三浦弘行九段が勝利したが、スマホカンニング疑惑で出場停止となり、決定戦敗退の丸山忠久九段が挑戦者となった。いずれにせよ、竜王戦は、仕組み上は、その年の最強者が竜王になれる機会を与えていると言えよう。 いっぽう、名人戦・順位戦の場合は、「フリークラスを除いた棋士をA級からC級2組の5つの組に分けてリーグ戦を行います。」となっており、デビューした棋士がどんなに強くても、その年に名人になることはできない。C2→C1→B2→B1→Aというように昇級し、A級で首位にならなければ名人に挑戦することができない。当然、相撲の連勝記録と同様であり、上位の級になればなるほど強い相手との対戦になるので連勝は難しくなる。 ま、そういう意味では、連勝記録の数自体は、必ずしも棋士の強さの指標にはならないし、ここまでマスコミが騒がなくてもよかったようにも思える。 藤井聡太四段の将棋でとりあえず注目したいのは、まもなく行われるはずの、NHK杯戦での森内俊之九段との対局である。森内九段に勝てば、その後、佐藤天彦名人、渡辺明竜王、前期の名人戦挑戦者の稲葉陽八段などと対局する可能性があり大いに楽しみである。もちろんすべて勝てば、選手権者になれる。 |