じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 171227(水)関係、対応づけ、文脈をめぐる議論(7)文脈とは?(6) 昨日の続き。 トールネケ(2013、『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』、武藤・熊野監訳)の121頁以降では、文脈的手がかりに関して、「Crel」と「Cfunc」という2つの機能クラスについての説明がある。別の専門書のバッハ・モラン(2013)『ACTを実践する』では、これらはそれぞれ「関係的文脈、“Cリアル”」、「機能的文脈、“Cファンク”」という訳語と読み方が紹介されている。解説内容も『ACTを実践する』のほうが分かりやすいので、こちらから引用させていただこう。
...「実は,あの青い花瓶はボブおじさんからの誕生日プレゼントです」と言われるとしよう。そして解答者はボブおじさんを強烈に嫌っているとしよう。すると,いまや彼女はむかつきを覚え,顔をしかめ,ちょっと前には綺麗だと言っていたのに,「なんて醜い花瓶かしら!」と言うかもしれない。ボブおじさんが花瓶に関係づけられた文脈では,花瓶がボブおじさんの刺激機能の一部を獲得するのである。このような刺激機能は,その人のボブおじさんとの学習歴,すなわちボブおじさんとの彼女の実際の経験に基づいている。このように,関係的文脈刺激は,単に刺激間を関係づける刺激であるのに対し,機能的文脈刺激は,ある刺激に対する反応に別の刺激との実際の経験を関係づける刺激である。ただし,ボブおじさんのすべての機能が花瓶に変換されるわけではないことに注意してほしい。解答者は「その花瓶は私の母親の兄弟です」,あるいは,「その花瓶はあごひげを生やしている」とは言わないであろう。心理的に関連のある機能だけが変換されるのである。 この花瓶とボブおじさんの話は、臨床場面で重要になってくる。伝統的な条件づけの理論では、嫌悪的な反応はレスポンデント条件づけ、つまり刺激と刺激の接近の中で形成されるが、ここに挙げられた花瓶への嫌悪は、単に「あの青い花瓶はボブおじさんからの誕生日プレゼントです」だけで生じてしまうのだから恐ろしい。条件づけで形成されたのではない限り、消去という手続で解決していくことにも限界があるだろう。 |