じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 火山に登った時の一番の感動は、登頂の瞬間に初めて眺めることが可能となる火口の異様な風景である。もっとも、噴火の危険に伴う規制により、直接眺められなくなった火口もある。
 写真は、浅間山山頂火口(写真上。1972年夏に撮影。)とキリマンジャロ・キボ峰火口(写真下)。浅間山には高校時代と大学時代に合計2回登ったが、その後、噴火活動が活発化し火口周辺の立ち入りが規制されたままになっている。
 キリマンジャロには1979年8月にギルマンズポイント(頂上外輪山の縁)まで登ったことがあるが、写真下にある火口を覗いたことはない。最近注目されてきたマチャメルートから最高点ウフルーピークに登るルートでも、火口の中までは覗けないようである。日程上、ウフルーピーク登頂前後に中央の火口まで往復するのが困難であることと、高度障害の影響を最小限に抑えるため、登頂後は速やかに下山することが推奨されているためと思われる。

2018年7月3日(火)


【小さな話題】

「直接体験」、「直に見る」ことの価値

 6月30日に初回放送された、

NHKスーパープレミアム 「桐谷健太 熱帯の氷河 キリマンジャロに挑む」

を録画再生で視た。今回のルートは、最も容易とされ、私も登ったことのあるマラングルートではなく、マチャメルートからの登頂であった【こちらの説明参照。】

 マチャメルートは2010年11月17日放送の、

NHK グレートサミッツ 第11回

でも詳しく紹介されていた。

 キリマンジャロは、高山病に十分な注意を払えば特段の登山技術なしに登れる山であるため、番組として特色を出すことが難しくなっているようであった。グレートサミッツの番組では、まずは反時計回りに中腹を一周、さらに氷河の壁や、中央火口、噴気、空からの山頂付近の映像などがあった。今回は、桐谷健太さんの視点から、マサイ族の暮らし、頂上氷河の後退などに焦点を当てていたが、マチャメルートのコース自体は以前にテレビで見た風景と同じであり、新鮮味はなかった。

 マチャメルートは10年前の日記で当時の「次の登山目標」に設定していたほどであるが、最近は「登頂」にあまり興味がなくなったことに加えて、上掲写真にもある通り、マチャメルートからの登山ツアーに参加しても中央火口間近には行かれそうもないことなどから、最近では旅行先候補からも外してしまっている。今後数年も経てば加齢による体力の衰えで、登りたくても登れない状態に陥る可能性が大であるが別段、それでも構わないと思うようになってきた。

 もう少し一般化して言えば、テレビ番組でどこかの絶景が紹介されると、以前は、「ぜひその場に足を運んで自分の目で見たいものだ」と思ったが、最近は、映像だけでも充分満足してしまうようになってきた。

 こうした変化にはいくつかの原因があるように思う。
  1. 大サイズの薄型テレビで高画質の映像を見ることで、実際にその場に行った雰囲気が味わえる。
  2. すでにいろいろな場所を旅行した経験があるため、映像を見ただけで、どういう感覚が生じるのか、どのくらいくたびれるのかといった、擬似的な仮想体験をすることができるようになった。
  3. ドローンによる撮影など、当人の目線とは異なるアングルから風景を眺められるようになった。ドローンで撮影された映像は、操縦者が見ても、視聴者が見ても同じものであり、自分で操縦してもしなくても「眺めるという体験」の価値はそんなに変わらない。
  4. グーグルのストリートビューで、海外のいろいろな場所を自由に「歩き回れる」ようになった。
 上記のうち3.は最近よく感じることである。最近の登山番組では、登山者の目線とは別に、ドローンで撮影したものと見られる上空からの俯瞰映像が多用されている。このアングルはまことに新鮮であるが、仮にその場に足を運んだとしても自分自身で俯瞰することはできないゆえ、わざわざ出かけるよりも撮影された映像を楽しむだけで充分という気がしてきた。
 4.のストリートビューは、例えばロンドン中心部、韓国の全く知らない小さな町の中のほか、最近では、サハリンの主要道路も「歩ける」ようになってきた。ちなみに、サハリンは私にとって依然として優先順位の高い旅行先候補であるのだが、サハリン最北部に近い場所をストリートビューで眺めても古びたアパートや荒野が広がっているだけで、うーむ、わざわざ何十万も出して行ってみる価値があるのか、首をかしげているところでもある。

 と言いつつ、明日から2週間程度の旅行に出発するところである。今回の旅行先は、テレビではあまり紹介されておらず、おそらく日本人の99.9%が興味を示さない場所かと思う。まだまだ直接体験の価値がありそう。