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岡大構内の紅葉・黄葉の写真を楽天版に掲載してきたが、今年はアメリカフウ(モミジバフウ)の紅葉やケヤキの黄葉の鮮やかさが例年以上であった反面、時計台脇にある2本のカイノキの紅葉は最悪レベルとなった。いずれもメス樹であり、今年はたくさんの実をつけたのが鮮やかさを失った原因ではないかと思われる。なお、農学部正面にあるカイノキは、少し前にオス樹のみ鮮やかな紅葉を見せていた。 |
【小さな話題】 AIと創造性 11月20日朝のNHK「くらし☆解説」で、 「AIが描いた絵が4,800万円!創作ってなに?」 という話題を取り上げていた。 「AIが描く」というと、「実際の風景や静物を写真に取り込み、何らかの規則で変形した図版を大量に作成し、別途に作成した美的評価基準により最も高いスコアを得たものを作品として発表する」というようなプロセスが頭に浮かぶが、今回話題になっている作品はこれとは全く別物で、いまはやりのディープラーニングを応用したものであるようだ。 リンク先によると、 この作品は、パリに拠点を置く起業家や芸術家などのグループがAIを使って製作し、プリンターで出力したものです。「エドモンド・ベラミーの肖像」という作品名ですが、実在する男性ではなく14世紀から20世紀までに描かれた肖像画1万5千枚をAIに学習させ創作したそうです。ディープラーニングという最近よく話題になるAI技術がありますが、その中でも新しい「敵対的生成ネットワーク」と呼ばれる技術を使ったそうです。ちなみに、「敵対的生成ネットワーク」には、「本物の写真に見える画像を作る」という「創作AI」と、「本物の写真から作られた画像を見分ける」という「識別AI」という2つのタイプがあり、今回の作品は、これらを競い合わせて「創作」されたものであるという。 このうち「4800万円」というニュースに関しては、購入者は匿名ということもあり、制作プロジェクトの関係者が話題を盛り上げるために値段をつり上げたという可能性はある(出品者と購入者が裏で取引しているのであれば、いくら値段をつり上げても誰も損しない。税金は別だが。) AIが制作したのはあくまでデジタル画像であり、何枚でもプリントアウトできるはず。プリントすること自体が複製であって、オリジナルの作品なるものは存在しない(もしくは無数に存在する)と思われる。 ま、それはそれとして、「AIで絵を描く」という話題は、創作とは何か? さらに創造性とは何か?という議論のきっかけになりそうだ。番組で取り上げられていたように、ディープラーニングを活用した「創作活動」としては、他にも、囲碁や将棋、作曲、小説、広告コピー、映画の脚本などがある。番組では著作権の問題にも言及していたが、より本質的な問題は、「AIでもできることを敢えて人間がするにはどういう意義があるのか?」ということではないかと思う。 絵画や作曲の場合は、鑑賞者がより心地よい印象を受けるのであれば、制作者が芸術家であってもAIであっても「いいものはいい」と受け止めざるを得ないように思う。 もちろん創作の中には、制作者の置かれた文脈を理解した上で鑑賞することに重きを置くジャンルもある。例えば、AIで五七五の文字数を満たす単語をランダムに組み合わせ、その中から日本語として意味が通じる文字列を選び出せば、「俳句」まがいの作品を無数に作り出すことができる。しかし、制作者がどういう情景のもとでその作品を作り出したのかという文脈が分からなければ、その作品に感動することはあるまい。 このWeb日記、あるいは私自身の紀要論文などで何度か取り上げてきたが、行動分析学の立場から言えば、「独創的」と呼ばれる行動も、強化の随伴性の産物に過ぎない。「今までに一度も現れなかった行動(言語行動や思考活動を含む)」といえども、その人の過去の強化履歴や、その人が晒されている自然や社会の随伴性と密接に結びついている。以前にも書いたことがあるが、ディープラーニングのプロセスというのは、オペラント条件づけのプロセスとけっこう似ているところがある。強化スケジュールと言っても、学習者は別段、実験者が設定した細かいパラメータを熟知した上で行動しているのではなく、それぞれの場面場面で強化されたり消去されたりしながら学習を向上させていくのである。弁別学習も同様で、実験者が「十」と「三」の文字を弁別させようとしても、学習者はそれぞれの文字の下の部分、すなわち「|」と「―」という特徴を弁別しているだけなのかもしれない。オペラント条件づけというのは、あらかじめ用意された規則を学ぶ学習ではない。規則そのものはなんだか分からないが、結果として最適に近い形で反応するように学習、向上していくだけのことである。 なお、近年、関係フレーム理論の発展によって、単純な強化、弱化とは異なる創造(基本プロセスは「想像」やメタファー)のプロセスも明らかにされつつある。ディープラーニングにもその仕組みが取り込まれているはずである。 |